DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: August 2005 (page 2 of 2)

春の日は過ぎゆく / ホ・ジノ

 ホ・ジノ監督の八月のクリスマスに続く二作目。こちらはハッキリと恋愛物だが、やはり同じように所謂ハッピーエンディングにはならない。何となく、これはこれで良かったのかなあ、という感じで終わる。ま、それはいいとして。この映画で二つ好きな場面があって、一つは、主人公の二人が最初に出会う場面。未だ見ぬ二人が仕事の関係で駅で待ち合わせをする。録音技師の男は約束の時間に駅の待合室へ辿り着くも、相手の顔を知らないので戸惑う。しかしどうやらマフラーを顔に巻き付けてベンチに座って寝ているのが、待ち合わせの相手であるラジオのDJ兼プロデューサー当人であるようだ。男は敢えて肩などを叩いて起こそうとはせずに、隣で眠る女の携帯にそこから電話する。僕はこの場面が大好きである。
 もう一つは、二人が付き合うようになって、遠く離れて暮らしている為なかなか逢えず、酔った勢いでタクシー飛ばして男が女の住むマンションへ逢いに来る。予め電話を受けていた女は、マンションの外へ出て恋人が遠路遙々駆けつけるのを待っている。が、この人、道路に座り込んでグッタリとしながら待っているのである。まあ、待ちくたびれたのだろうけど、その姿がとても愛らしくて良い。
 あ、もう一つ在った。二人が番組の為に竹林が風にさざめく音を録る場面があるのだけれど、その竹のさざめく音がとても良いのである。其処に長年済んでいる老婆は「この音を聴いていると心が軽くなる。」と言が、まさにそんな音。

小舟のほとりで / J. D. サリンジャー

「ナイン・ストーリーズ」の中の一編。グラース・サーガの観点から言えば、グラース家の三人目の子供にして長女であるブーブーの話。幼い頃から小さな家出を繰り返す息子のライオネルとのやり取りが、とても良い。秋の頃、湖の近くの別荘にて再び家出をしたライオネルを、桟橋に繋いだディンギーの中に見つける。桟橋の上から息子を見下ろしブーブーはこう声をかける。「オーイ。相棒。海賊。悪党め。わしは戻ったぞ。」この部分を何度も読み返すが、その度に柔らかい気持ちになる。自分の息子との距離の取り方。言い換えるならば、自分にとっては不可解極まりなく、それでも尚愛しさを抑える事の出来ない対象への、不器用に差し出された手の平。不完全な者から不完全な者への、最大限に考慮された忠告である。私はこの部分を読み返す毎に、この台詞を誰かに言ってみたくなる。

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