ざりがにをバケツ一杯五拾円
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2009年12月、「外国人観光客の急増にともない、東京都の人気スポットとなっている高尾山(八王子市、標高599メートル)でトイレ不足が深刻化していることを受け、都はトイレの増設のため山頂まで下水道を延伸する方針を決めた。高尾山はミシュラン社の日本版の旅行ガイドで最高の三つ星の評価を受け、外国人観光客が急増、年間250万人が訪れる都内を代表する観光スポットとなった」(産経新聞 2009年12月10日)というニュースが流れた。
また、「岐阜県高山市に外国人観光客が続々と訪れている。江戸時代の面影を残す古い町並みや高山祭、温泉などの資源を生かし、官民一体となって外国人観光客の誘致に取り組んだ結果、2008年には10年前の約5倍、17万人の外国人観光客が高山を訪れた。特別なテーマパークがあるわけでもなく、世界遺産に登録されたわけでもないが、ミシュランの旅行ガイドで三つ星の最高評価を受けたことも外国人観光客急増の一因である」(J-CAST ニュース 2010年1月11日)という報道もあった。
高山市の場合、市のウェブサイトの十一カ国語対応など、官民一体となった徹底した受け入れ態勢が外国人客の増加を支えた一番の理由だと思われるが、それにしても、このミシュラン旅行ガイドの外国人観光客集客能力は相当なものだ。
山口裕美著『観光アート』光文社新書 2010年 pp.38-39
アートの見方のポイントは三つある。
まず一つめのポイントは「西洋絵画というものは、時間が左から右へ流れる」ということだ。日本国内にある現代アートの作品は、文章にたとえると縦書きではなく横書きなのである。つまり基本的には輸入されたスタイルを踏襲している。よって西洋絵画という言い方をしたが、だいたいの現代アート作品はその傾向にあるが、もちろん例外もあることは頭の隅においていただきたい。
山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.166
「もの派」は、作品を見ていると一見簡単そうに見える。ところがその背景たるアーティストの作品説明を読むと、難解で、理解するのに読解力、理解力と時間を要する。ちょっと引き抜こうとした野の花の根が意外に複雑で長く、力んでも抜けないような感じだ。
難しいから悪いとは言わないけれども、「もの派」の登場が一般的な「現代アートって難しい」のイメージを確立してしまったのではないかと思う。作品は非常に魅力的なのだが、解説とその作品のコンセプトに大量の意味を入れ込んだために、当たり前の作品の面白さが、観客の手から遠くに行ってしまったように感じる。
山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.95
十数年前、パリのジュドポーム美術館で小学校低学年の課外授業の一団と一緒になったことがある。お人形のように愛らしい子供達だったので、注目してしばらく見ていた。ジャン・デュビュッフェの作品の前に座って先生は話しだした。その時、以外だったことは、引率の先生はほとんど説明らしいことは言わなかったことだ。むしろ逆に質問を子供達に投げかけていた。そうすると子供達は勝手なことを口々に言う。その様子がまたかわいい。
「顔が恐い」とか「あの人は笑っている」だとか、騒ぐのではなく、感想を言い合うことを美術館を許していた。その光景を見ていて、私はつくづく日本の美術館もこういうことが出来ればどれだけ楽しい空間になるだろう、と思ったものだ。現代アート作品はコミュニケーションのための道具であると思う。だから意見や感想の違う人とディスカッションすることも現代アートの面白さの一つである。
山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.83
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