日本でも有数の個人コレクターは、医師の高橋龍太郎先生です。高橋先生は、若い日本人アーティストの作品を積極的にコレクションしています。神楽坂と白金台にビューイングルームを設けて、一般にも公開しています。
 宮津大輔さんは僕と同世代の方で、普段は IT 系の企業にお勤めの会社員です。コレクション自体とてもユニークですが、宮津さんの最大のコレクションと言うべきなのは、アート作品で家を建ててしまったことでしょう。
 設計、庭、家具、照明など、家全体をさまざまなアーティストに依頼して、コミッションワークで建てるというプロジェクト。つまり家そのものが現代アートの結集です。完成した家でも楽しんでいらっしゃると思いますが、宮津さんにとっては、アーティストと話し合って家を建てる過程、その時間と経験が、何より意味のあるコレクションだったと聞きます。
 アートをコレクションしている人たちは、まずその作品で自分が楽しめること、楽しむ力があることが、何よりも大事なのです。

小山登美夫著『現代アートビジネス』アスキー新書 2008年 p.172