私は必ずパーティー用にコムデギャルソン・オム・プリュスのジャケットと、日本の若手デザイナーによるシャツやズボン(予算の関係でユニクロの場合もあります)、そして黒のパテントやゴールドの派手なスニーカーをスーツケースに入れていきます。海外のパーティーで、東洋人の私が大胆なデザインのジャケットを着ていると、向こうから「素敵なジャケットね。それはコムデギャルソン?」と必ず数人は話しかけてくれます。
 最近は余裕があれば亡き父形見の和服を着ることもありますが、外国人から見たインパクトの強さと、固有の文化に対する憧れや尊敬といった意味では、コムデギャルソン・オム・プリュスの服は、和服と同様の効果を持っているといえます。サラリーマンの給与からすれば決して安い買い物ではありませんが、アート作品のようにオリジナリティに溢れ美しく、海外のパーティーで話のきっかけになることを考えれば、決して高くないと思っています。
 また肌寒い季節なら、マフラーの代わりに絞りの子供用帯揚げを首に巻いていきます。褒めてくれたギャラリー・オーナーや仲良くしたいアーティストには、帰国後鳩居堂や榛原で手に入れた千代紙の文箱に入れて、サンクス・レターと共に贈っています。
 ちょっとした心遣いや、自国の文化をさりげなく身に着けることは、知り合いがいない異国でのパーティーを楽しむコツです。是非試してみて下さい。

宮津大輔著『現代アートを買おう!』集英社新書 2010年 pp.82-83