夕刻。ビルの屋上から眺める雲には二つの種類が在って、一つは左から右へゆっくりと流れる、天上を覆い尽くすように広がる白い雲。僅かな隙間からは青い空が見え隠れする。もう一つはそれよりもっと低い位置を右から左へと、何処かへと急いでいるような風情で流れる、少し黄みがかった雲の塊が幾つか。高さが違う為に受ける光の種類が違うからなのだろうか。全く別物のように見える。行き先が真逆なのも面白い。
 夜。都心では夜でも雲は白い。地上の光を反射して闇に不気味に浮かんでいる。今度は流れる方向は一つだけで、右から左へと雲は流れて行く。量も僅かで、その他は黒々とした闇夜が広がっているだけだ。夜に眺める雲も悪くはない。というより結構好きだ。