ハイアートとは何か。歴史に残っているアートもしくはこのアートのコンテクストを分析して歴史に挑戦するようなものをハイアートといいましょう。ぼくもこのアートのことをずっと述べてきました。つまり、ルールがある。そのルールを覚えて、歴史の中にどうやって参入するか、そういう話をしてきたわけです。
 一方、ロウアートの「ロウ」というのは、どういうことなのでしょうか。これは、例えば、土着的なものであるとか、落書き、アウトサイダーアート。ようするに歴史に残っている天才と言われている人たちとは別の文脈で、日々世界中で生まれているアートですね。それをロウアートといいます。ハイブロウというのは文字通りには教養学識があるということです。
 では、マンガというのはハイアートだということになるのでしょうか。何ともいえませんね。その意味では、ハイアンドロウという区分が、すでに矛盾をはらむような世の中になってしまっている。つまり、こういう構造そのものが、崩れている。

村上隆著『芸術闘争論』幻冬舎 2010年 pp.192-193