韓国の対日感情を知るには、やはり博物館を訪ねるのがよいだろう。ソウルの中心部には広大な米軍基地があり、そのすぐ近くに戦争記念館がある。おもな展示兵器や記念品ともっとも詳しい展示は、朝鮮戦争にまつわるものだ。しかし、一〇〇〇年以上に及ぶ軍事の歴史の展示もあり、その大部分は日本との戦争の歴史のように見受けられる。この二カ国は隣合っているから、当然かも知れない。イギリスだって同じだ。ーードイツが登場してフランスにとってかわるまでは、フランスとの戦争に明け暮れていたーーと揶揄されてもおかしくない。ここで注目すべきなのは、最近の朝鮮と日本の紛争で、戦争記念館によれば、一八九五年、李氏朝鮮(この時期は大韓帝国)の第二六代王の妃である閔妃(明成皇后)が、日本の暗殺部隊によって殺害されたときに、この「義兵闘争」がはじまったという。

 (中略)

 義兵というのは、実質的に農民兵などからなる不正規部隊だった。最初は、一九三一年に日本が完全に支配する前の満州に拠点を築き、ついでロシア領内でも結集して、そこからゲリラ攻撃を行った。一九三七年以降、中国領内では抗日統一戦線の祖国光復会や中国人の指揮する東北抗日連軍が日本軍と戦い、敗走して極東ロシアに逃れた一部がソ連軍に吸収された。そのなかに、のちに北朝鮮の独裁者となる金日成がいた。

ビル・エモット著/伏見威蕃訳『アジア三国志〜中国・インド・日本の大戦略〜』日本経済新聞社 2008年 pp.269-270