我が家では未だに夏が来ると蚊取り線香を焚く。勿論あの鬱陶しい藪っ蚊吸血鬼の飛来を妨げる為なのであるが、その本来の機能以外にも、僕の場合はあの蚊取り線香の香りを嗅ぐと何だか気分が落ち着くので、今日は雨が降っているし気温が低いから必要ないかなあと思っていても焚く。香りを楽しむ為の物ではないので、人に快をもたらす匂いではないとは思うのだけれど、何だか良いのである。だから恐らく、夏の間の僕は蚊取り線香臭いと思う。

 因みに僕は、実家で使用していたという事もあって、昔っから大日本除虫菊株式会社の「金鳥」ブランドを使っている。これがアース製薬の物だと、何処かしらしっくりこないし、マット状の電気式の物なんて「こんな甘い匂いで蚊が撃退出来るのだろうか。」とその機能さえも疑ってしまうくらいである。
 どうも僕は味とか匂いというものに対しては非情に保守的で、原体験で受け容れたもの以外はなかなか受容出来ないようである。あいや、よくよく考えたら僕は色んな局面に対して保守的な気がする。未知の可能性を夢見るよりも、慣れ親しんだものを慈しむ方が性に合っているようだ。

 少し話はずれるが、蚊取り線香に限らず、窓を開け放たれた部屋に香の匂いが漂っているという状況が、僕は好きであるようだ。