いまさらオタクを擁護したり、コマーシャリズムを批判したりするつもりはない。ただし、オタク趣味が蔑まれてきたことには、商業資本の原理が強く介在していた。このことは、本書で見ていく都市風景の分化に大きく絡んでいるので、敢えて指摘しておきたい。
 後の章で詳述するが、大手商業資本による開発が街を海外指向に染めるのに対し、オタク趣味はメイド・イン・ジャパン指向に染める。このように対比させると、オタク趣味をナショナリスティックに持ち上げようとしているようにとられるかもしれない。しかし仮にオタクがプチナショナリストになりがちな傾向があったとしても、それはあくまで副次的なことである。愛国心からオタクになる人などいない。人格や趣味の方が、思想や主義などよりよほど根深い構造を成している。

森川嘉一郎著『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』幻冬舎 2003年 p.35