一組のゲイのカップルの間に「子供を作りたい」と言うヘテロの女が割り込んで来る話。誰かには誰かが必要だが、それが家族や恋人である必要はない。長く連れ添う事が稀なゲイ・カップル。将来を思ってみても、養子でも貰わなければ家族が増える事はない。片や女は、長らくの不摂生(不特定の男との性交)が祟り子宮に陽性の筋腫が見つかる。出産をする気がないのなら摘出してしまえば良いのでは?と医師に薦められる。
 この映画の中では、家族制は(核家族でさえ)否定されている。将来の孤独から自分を一生涯救ってくれるほどの確固としたものではないという理由で。であれば、利害(それだけではないが)の通じる相手を見つけ、一緒に生きていくのが進むべき道ではないか。
 印象に残った台詞。ゲイ・カップルが些細な喧嘩の後にベッドで強く抱き合う。片方が言う「苦しいよ。」そしてもう片方が答える「寂しいよりいいじゃん。」

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 とまあ、此処までは僕が2006年に書いた記事である。何故今更こんなものを引っ張り出してきたのかというと、橋口亮輔の今年の夏公開予定の最新作「ぐるりのこと。」が気になって仕方がないからである。
 主演のリリー・フランキーは勿論大好きだし、木村多江も好きである。だからそれだけでも観る気満々なのに、此処の橋口亮輔のインタビュー記事を読んだらもう居ても立ってもいられない気分になってきた。せっかくなので引用しておく。

 それまで、日本映画の中で真面目に扱われてこなかったゲイの登場人物たちを10年通して描いてきて、『ハッシュ!』(2001)で大きな評価をいただいたので、ひとつやり終えた感があったんです。じゃあ何を撮ろうって考えたときに、『ハッシュ!』以降の人間関係、それも“絶対に別れない夫 婦”をやろう!と思って。

 実は僕が「ハッシュ!」の後、鬱になったん ですね。「映画なんてできない、もう無理だ」って1年 くらい何もしない時期があって…。そんな時、2001年の 米テロ事件が起きたんです。実はテロと鬱ってす ごくよく似てて、くすぶっていた過去の問題が全部表面 化しちゃうという共通点があるんですね。そんな90年以降の犯罪史が、僕の鬱屈した想いとリンクして、 「どうやったら希望をもって人は生きられるんだろう?」と、祈りにも似た想いで考えていました。でも結局、希望なんて人と人 との間にしか生まれないですよね。面倒くさいし、やっか いだけど、人と人との繋がりしかないんだって。…だから 何が起きようとも“絶対に別れない”夫婦なんです。

 僕は未婚であるので夫婦の事についてはよく解らない。しかしこれまでの経験上、人と人は、出会えば何れは別れ別れになるものだと思っている。血縁関係にしたって、不仲であれば大仰な名目でもなければ顔を合わす事もない。まあ、これは僕個人に関しての事だが。ただ、前述の僕が書いた記事と、橋口亮輔のインタビュー記事との間の流れを考えれば「絶対に自分の目の前から居なくならない人がいる」事への羨望は、僕の裡にもその欲求は十分に備わっている。だから、そういう人と人との関係は一体どういう風に形作られているのか、その事に大変興味がある。公開まであと半年もあるが、きっと忘れた頃に突然思いだして慌てて劇場へ足を運ぶのだろう。

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 因みに、この映画の予告編を観ていると、リリー・フランキーという男に何というか、愛しさみたいなものを感じてくる。何処がどうとは説明出来ないのだけれど。