DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

絵画と気候

 歳をとってきたせいなのか、近頃興味を持つ絵画と言えば日本画ばかりである。昔、学生の頃には日本画には全く興味がなかった。僕が通っていた大学には存在しなかったが、日本画科に通う連中が居る事が不思議でならなかった。日本画を観て心地良いと思った事が一度もなかったからである。それがどうした事か、最近は日本画ばかりが気になっている。
 他人の事は解らないので自分の事に関して言えば、歳をとると生命体として弱くなるが故に、いやが上にも自身のおかれた環境に寄り添うものを好むようになるのではないだろうか。例えば特にこの時期、この高温多湿な環境のもとで油で溶いた絵の具をべったりと厚塗りした絵など観たいであろうか。僕は鬱陶しくて仕方がない。そういう絵は完全に空調管理した室内でのみ、というかそういう環境でしか観る気になれない。こうした環境下で不快をもたらさずにすんなりと入り込めるのは、やはり日本画である。美術とは博物館に閉じこめられたものを観るものではなく、もっと生活の中に散在するものを眺めるべきものであると僕は思う。

 学生の頃から日本画に興味を持ち、更にはそれを習得しようとする人達は、これと同じような事を思っているのだろうか。それとも別な入り口が在るのだろうか。今更戻れはしないが、少し興味がある。

 そう言えば何年か前に、年若い知人に同じ事を語って聞かせた覚えがある。彼女は東京を離れ、今では何処かで穏やかに暮らしているようだが、元気なのかなあ。

6 Comments

  1. 年中高温多湿の環境では日本画はちょっと観たくないっす。
    日本画ってやっぱり四季のある国で生まれたものですよ。

  2.  おや、そうですか。日本画とは湿気大国故の技法だと思っていたのですが、そうでもないんですね。ところで、そちらでの絵画ってどんなものなんでしょう。どうにも思いつかないんですよねえ。

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    赤枕十庵

    July 4, 2008 at 00:38

    こちらの絵画は暑苦しいものが多いかなぁ……色使いはやっぱり派手めですかね。涼しい色を使おうっていう感覚はあまりないですよ。
    インドにカレー、タイにトムヤムクンみたいに暑いからこそこそ辛いものっていう感覚に近いのかなぁ。理屈は分からないけど、体が求めますね。
    もちろん、ボクも日本に居たときは夏に汗かきながらカレーなんて食べたくなかったけど、恒常的に暑いと食べたくなりますね。不思議です。

  4.  うーん、そうですか。以前に渋谷というか代々木公園辺りで、各国の民族的パレードの寄せ集めみたいな催し物がありましたが、確かフィリピン(だったかな)のパレードが一番派手で、金属音もバリバリの暑苦しさでしたよ。
     今はやりませんが、随分前の或る年の夏は「カレー」「キムチ」「ピザ」「カレー」「キムチ」「ピザ」の繰り返しで乗り切ろうとした事があります。想像ですが、体温と気温の温度差を無くそうとしているのかも知れませんね。いやま、辛い物を食べたからといって体温が上がるのかどうかは知りませんけど。

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    赤枕十庵

    July 4, 2008 at 23:50

    やっぱり、「涼しさ」を知らないと「涼しさ」を演出できないんだと思います。そこへいくと日本人は寒さも暑さも知っているから。
    「カレー」「キムチ」「ピザ」「カレー」「キムチ」「ピザ」というのはスゴいですな。

  6.  なるほど。確かに、例えばカンディンスキーの絵は寒々しいものばかりな気がしますね。てえ事は絵画(に限らず)は限りなく環境に近づくんですかね。あ、そう考えると合点がいくなあ。
     若気の至りですよ。辛いもの大好きだったし。しかしよく腹を壊さなかったものです。今ではとても無理。

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