昨夜は午前零時近くになってから散歩に出かけました。夜の空気が気持ち良かったもので何となく自転車を漕ぎ出してしまいました。実は昨日は夕方から深夜まで仕事をしていたので、そのストレスでしょうか。無性に走りたくなったのです。そんな時間でも人通りは多少あるし車も走っています。店なんかは既に店仕舞いした後なので、いつもの夜の風景とは少し違います。そんな中を僕はてれてれと自転車を漕ぎながら徘徊しておりました。江戸川の堤で出て、対岸の住宅や街灯の灯りを見やりながら自転車を走らせます。遠くから微かに揺れる白い点がだんだん近づいて来て、やがてそれが自転車に乗った人だという事に気付く。妙に緊張してしまう。すれ違い様に光は最大になり人の姿を認めるとすぐにまた闇が覆い被さってきます。独りは独り、なのです。お互いに。

 そんな事を何度か繰り返しやがて飽きて来たので街中へ向かいました。居酒屋・パブ・キャバクラ・スナック・コンビニ。人々の欲望をかき立てるのは、その種類は様々であれ、闇に浮かぶ光であると思います。

 遠目に彼方此方を冷やかすのにも飽きたので部屋へ戻る事にしました。時計は午前2時を示しています。この時間では更に人は減り、車も減ります。たまに通る深夜割り増しのタクシーを除いては、動きのある物体がありません。とか思っていたら女の子が一人で歩いていました。普通に危ないと思うんですけど、どうなんでしょうかね。僕は歩道ではなく車道を走り、目一杯漕いで勢いをつけ、右へ左へと蛇行して遊びました。今、この道路は僕の物です。わはは。それから僕はふと思いつき、ハンドルから手を離してみました。少し不安定でしたがそれでも真っ直ぐに自転車は走って行きます。手放し運転なんて何年ぶりでしょうか。何の意もなく走り去る行為に、僕は半ば陶酔していました。波に乗るのも、確かこんな感じだったように思います。これがずっと続かないかなあ、とか思っていてもやがて自分の部屋に着いてしまうのは疑いありません。僕はハンドルに手を戻し、減速した後、車体を倒し左に曲がりました。