DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Tag: gallery (page 2 of 2)

 ところが、アジアの現代アートの歴史はまだ浅く、したがって、今のところギャラリーのシステムが確立されていません。そこで、プライマリーの作品を、アーティスト自身がやギャラリーが、いきなりセカンダリーのマーケット、つまりオークションに突っ込んでしまう事が起きています。一度も買われたことのない作品が、セカンダリー級の価格で落札されていくわけです。こうなると、確かにアーティストにとってもギャラリーにとっても、実入りはいいです。
 セカンダリー・マーケットでの差益は、その作品を出品した人のものです。村上隆さんの作品が一億円で落札されたところで、村上さんにも僕にも、一銭たりとも入りません。お金は出品者に入ります。ただ、セカンダリー・プライスが高くなれば、それにつられてプライマリー・プライスも値を上げるので、アーティストやギャラリーはそうした間接的な利益があるだけです。

小山登美夫著『現代アートビジネス』アスキー新書 2008年 pp.118-119

 ギャラリーでのプライマリー・プライスは、同じ種類であれば作品のサイズによります。ほかにも価格を左右する要素として「素材」と「数」があります。
 素材とは、ペインティング(油彩画、アクリル画)、ドローイング(線画、水彩画)、エディション(版画等)の違いです。制作に時間と労力を要し、よってアーティストのタブローとしての意味合いを持つペインティングは、価値がもっとも高くなります。ドローイングにも秀作は多くありますが、紙に描かれた線画や水彩画は、基本的にはペインティングより安価です。
 もっと安価なのが、複製可能なエディション作品です。アート作品は、世界にたった一つしか存在しないからこそ価値があるのが原則だからです。銅版画、リトグラフ、シルクスクリーンなど技法はさまざまです。最近では高画質デジタル印刷も版画に仲間入りし、複数製造が可能なフィギュア作品がエディションとなる場合もあります。ただし、複数とはいっても限定制作によって価値が管理されています。この限定番号のことをエディション番号と呼びます。(和田)

小山登美夫著『現代アートビジネス』アスキー新書 2008年 pp.110-111

 次に第二条件として、自分の描きたいものや表現したい世界を、客観的に見る事が必要です。自分が置かれている時代や社会、歴史や文化の背景と、自分が描きたいものをすり合わせ、自分自身を批評できる能力がなければ、残念ながら、本人にとってよい絵は、本人にとってだけよい絵で終わります。
 例えばいろいろとギャラリーを見て、このギャラリーだったら自分の作品を並べたい、見せたいと判断できることも大切です。
 僕のギャラリーに来たこともなければ、どういう人がやっているのかも知らないで、もちろん、作品が展示されている空間を知りもしないで、資料だけを送ってくるアーティスト志願者もいます。そういう人は、自分の位置が見えていないのだと思います。自分が制作することだけに没頭するのではなくて、一歩退いて見てみる。作品に対してある程度の距離感が持てないと、作品を社会化することはできません。

小山登美夫著『現代アートビジネス』アスキー新書 2008年 pp.86-87

 キャステリに限らず、ギャラリストにはアーティスト顔負けの個性派が揃っています。ギャラリー名のほとんどが、個人名を冠しているのも特徴です。ギャラリーとは単なるハコではなく、ギャラリストが全感覚を注いで発掘し、温めてきたアートを、アーティストと共演するライブステージです。ギャラリストは裏方でも黒子でもなく、現代アートのパフォーマーの一人なのです。(和田)

小山登美夫著『現代アートビジネス』アスキー新書 2008年 p.53

 とにかく驚いたのは、ギャラリーの数の多さと、その数に負けないほどの多様さです。アメリカのマーケットは、日本と比べものにならないほど層が厚いのです。
 犬の絵だけ、帆船の絵だけを扱うギャラリーもあれば、ワシントン大統領などの肖像画を扱う時代がかったフォークアート専門ギャラリーもあります。このようなギャラリーが存在しているということは、お客さんがいて、需要があるということです。「こんなものが売れるのか」と思うような作品が、目の前で売れていきました。
 考えてみれば、「よい作品」だけが売れるというのもおかしな話です。アート以外の分野の売買でも、よい品物だけが売れるわけではありません。安いものや粗悪ものだって買う人はいますし、売れるわけです。そう考えれば、どんな作品でも何らかの理由で売れるし、またそれが現実なのです。
 「よい作品なのに売れない」というアート関係者は多いですが、「よい/悪い」「好き/嫌い」と、「売れる/売れない」はまったく別の話なのです。つまり、どんな作品でも、交換が成り立てばマーケットができ、お金の流れが生まれる。この認識ができたことがアメリカ旅行での一番の収穫でした。

小山登美夫著『現代アートビジネス』アスキー新書 2008年 pp.35-36

Newer posts

© 2024 DOG ON THE BEACH

Theme by Anders NorenUp ↑