坂道
あれは確か早春の日曜日の朝。僕等は電車に乗って遠くに出かけようと、アパートから駅へと続く緩やかな坂道を歩いていた。風はまだまだ冷たくて、僕等は二人ともセーターとコートをしっかりと着込み、毛糸の帽子を目深に被っていた。けれども陽射しはとても明るくて、厳しく薄暗い季節が明けた事を僕等に教えてくれていた。
僕等は日差しの暖かさに頬を緩め、浮き立つ気持ちを抑えきれずにいた。そしてとうとう、遠くへ行きたいのなら早い時間に電車に乗ってしまわねばならない、という大前提の予定の事などすっかり忘れてしまい、誰かの家の玄関先に花を開こうとしている白い蕾や、後数年経てば朽ち果てる予定が立っていそうな家屋を古い写真機の中に収めたり、家々の隙間から隙間へと走り抜ける猫を追いかけたりして遊んでいた。
そんな僕等の眼球の裏側を目映く痛めるのは、坂道の真ん中に引かれた真っ白な線。暗いアスファルトの上に、まるで僕等を誘導するかのように引かれたセンターライン。駅へと続く道の上を、真っ直ぐに、時にカーブを描いて、街並みに隠れて見えなくなるまで走り抜けていた。
真新しい朝と、今日の為に新しく引かれた白線。行き先での心地良さを頭一杯に思い浮かべ、僕等は白線の上に立ち写真を撮った。墨色の影法師は、僅かに肩を寄せて立っていた。
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このエントリ内に書かれている事は大体に於いて事実と異なります。
僕等は日差しの暖かさに頬を緩め、浮き立つ気持ちを抑えきれずにいた。そしてとうとう、遠くへ行きたいのなら早い時間に電車に乗ってしまわねばならない、という大前提の予定の事などすっかり忘れてしまい、誰かの家の玄関先に花を開こうとしている白い蕾や、後数年経てば朽ち果てる予定が立っていそうな家屋を古い写真機の中に収めたり、家々の隙間から隙間へと走り抜ける猫を追いかけたりして遊んでいた。
そんな僕等の眼球の裏側を目映く痛めるのは、坂道の真ん中に引かれた真っ白な線。暗いアスファルトの上に、まるで僕等を誘導するかのように引かれたセンターライン。駅へと続く道の上を、真っ直ぐに、時にカーブを描いて、街並みに隠れて見えなくなるまで走り抜けていた。
真新しい朝と、今日の為に新しく引かれた白線。行き先での心地良さを頭一杯に思い浮かべ、僕等は白線の上に立ち写真を撮った。墨色の影法師は、僅かに肩を寄せて立っていた。
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- Last Modified : 2008-10-15
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