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March 2006

ふくよかに揺れる桜の色の香は

  • 2006-03-31 Friday
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過ぎし季節の予感を放つ

ナンバーガール映像集 / Number Girl

 2枚組DVD。Disk1 は福岡でのインディーズ時代からのライヴ映像やスタジオでの映像記録を時間軸で並べたもの。Disk 2は Video Clip 集と、京都大学西部講堂でのライヴ映像。僕はこれまで、このバンドの音源を長い事聴いてきたのだが、ライヴには行った事がないし、映像で観るのも初めて。予てから話は聞いていたが、リードギターの田渕ひさ子がすこぶる格好良い。

 以前から思っていた事で、女がギターを弾く(ストラップを肩にかけている)姿で格好良いのって観た事ないな、というのがある。ガールズバンドはどうしてもつまらなく感じるので聴かないし、女のギタリストを観る機会が極端に少ないというのもあるのだろう。しかしこの人は本当に格好良い。それは男のギタリストの格好良さとは何処か違う。ただ、それが何なのかは今のところ判らない。格好良いのは姿だけではない。音が良いのだ。あの煌めくガラス片のようなギターの音色はこの人が出していたのだ。彼女を観て、Fender Jazz Master というギターがまた好きになった。
 余談だが、このDVDのクレジットにもちゃんと三栖一明の名前が載っていて安心した。

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映像の解体

 近所のパン屋へ続く露地の途中に、初夏の頃になると庭一杯に紫陽花を咲かせる古い民家が在る。木造の小さな門と垣根から零れるように咲き誇る色違いのグラデーションを、毎夏眺めるのが数年来の僕の密かな楽しみである。

 先の土曜日。暫くの間行っていなかったパン屋へ行こうとその露地を歩いたら、紫陽花自慢の古い民家は取り壊され、新しく建てる家の為のコンクリート基礎が既に打ってあった。
 僕は唖然としながら、その更地となった空間を見つめていた。もう、あの優しげな色に彩られた庭を見る事が出来ないのだ。寂しいやら、悔しいやら、である。

 僕は部屋に戻り、これまでに撮ったフィルムをひっくり返し、あの民家の写真を探した。きっと残っているはずだと思ったのだ。しかしながら残ってはいなかった。よくよく思い出してみれば、その露地は狭く、どうしても庭全体を具合良く収める構図が見つからずに、毎年諦めて紫陽花に近寄って撮っていただけだったのだ。紫陽花の向こうには縁側が在り、人の気配がする時にはカメラを向ける事を躊躇する事も多かったので、十分に構図を探す事が出来なかったのだ。

 失われてしまった光景というのは、どうしてこうも後悔の念を植え付けるのだろうか。勿論記憶には残っているので、思い出す事は出来る。しかし記憶でしかないのなら、自分の都合の良い解釈で描き換えられ、不必要に甘美な色が加味されてしまう。現実に質量を持つ存在の確かさと、その存在の凛々しさというようなものは思い起こす事が出来ない。

雑感

  • 2006-03-20 月曜日
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理性なんて、どうやったって感情には追いつかない。

春の世は夢か現か微睡みの

  • 2006-03-17 金曜日
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縁をなぞりてゆらり舞う

痩身の老猿

 今朝、弟から携帯へ電話があり、母方の祖父が亡くなった事を知る。今現在、仕事に忙殺されいて、とても故郷へ帰る余裕がない。じいちゃん、ごめん。
 思えば、もう数年来祖父の姿を見てない。最後に会った時には、まだまだ元気であった。彼の事を思い出す時は、いつも子供の頃の記憶が蘇る。大の酒好きである祖父は、一風呂浴びた後には必ず晩酌をする。電気式のポットのような器具で、いつも燗をつけていた。勿論、隣に座ってる僕にもお猪口が回ってきて、一口は付き合わされた。祖父は、酒を呑んでいる時はいつも赤い顔をしていて、楽しそうだった。
 今、彼の事を必死に思い出そうとしているのだが、何かを話したという記憶がない。祖母や母、その兄弟達と話してるのを隣で聞いていたという事しか覚えていない。内容は全然覚えていなくて、祖父のしゃがれた声しか思い出せない。たぶん、孫の遊び相手になるような人ではなかったのだろう。寡黙という感じではなかったし。本当に、酒を呑んでいる姿しか思い浮かばない。

 年々、遠くに在る人を想うという事が出来なくなっている。長く生きていると、誰でもそうなっていくものなのだろうか。寂しいような気もするし、それはそれで良いような気もする。でも今夜は、色々な人達の事を思い出しながら眠る事にしようと思う。

憧憬

  • 2006-03-13 月曜日
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 時折思う。過ぎた飲酒癖は、甘やかさを織り交ぜた自傷行為か、若しくは緩やかな自殺行為であるような気がする。干涸らびた水槽の底で、石ころを食らい続けた亀のように。

春花爛漫

 春というのは、寒かったり暖かったりを交互に繰り返しながらも、確実に穏やかさを誂えていく。時折、つむじ風が吹くのも、もしかしたら膿んだ空気を一掃する為のものであるのかも知れない。寒暖の差は人を不安定にするかも知れないが、安定の無さは可能性の存在を現しているものと考えたい。季節が奥まって、陽の光が隅々に行き渡るに連れ、人々の顔が綻び、笑顔に近づいていくのが、僕はとても嬉しいのである。

春風は明日の予感孕みつつ

  • 2006-03-05 日曜日
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猫の鼻ひらくすぐり廻る

パウル・クレー展

 先日、東京大丸百貨店で開催されたパウル・クレー展に行って来た。結果、全体的な事を言えばいま一つ。気に入った物も数枚在ったのだが、それだけ。数年前に倉敷美術館で偶然にも見かけた一枚(記憶は曖昧。今調べても所蔵しているという記述は見つからない。記憶違いかも知れない。)には非常に感動したのだが、今回はクレーだけを集めた展覧会という事で、その数倍・数十倍のものを期待していたからなのか、感動は薄かった。展示されていた殆どの絵は観た事のない絵ばかりで、その点で言えば良かったのだろうけど、やはり期待していたものに比べると、流して観てしまうのである。

 思うに、良い絵は画集に載るものではないだろうか。何処ぞに所蔵されている絵を借り出す手間暇の問題もあるのだろうけど。クレーの画集は何冊も買ったが、どれもこれも同じ絵ばかりを載せてあって、しかも画集に拠って、同じ絵でも全然色合いが違うのにウンザリして、それ以上に他の画集を探さなくなった。しかし、もっとたくさん良いクレーの絵は在ると思う。是非とも、いつの日にか観たいものだ。やはりスイスまで行かねばならないのか。

日本パウル・クレー協会

追記 : 2006.03.05 上記のサイトの中で、クレーの全作品を載せた「カタログ・レゾネ」という画集(英・独)が何年も前に企画され発売されている事を知る。残念ながら第一巻は売り切れという事で、悔しいのでヤフオクで検索したところ、同じ「カタログ・レゾネ」で色んな画家の画集が発売されているようだ。とんでも無い水脈を見つけてしまった気がする。とんでも無いとは、高価だという意味で。

坂道

 あれは確か早春の日曜日の朝。僕等は電車に乗って遠くに出かけようと、アパートから駅へと続く緩やかな坂道を歩いていた。風はまだまだ冷たくて、僕等は二人ともセーターとコートをしっかりと着込み、毛糸の帽子を目深に被っていた。けれども陽射しはとても明るくて、厳しく薄暗い季節が明けた事を僕等に教えてくれていた。
 僕等は日差しの暖かさに頬を緩め、浮き立つ気持ちを抑えきれずにいた。そしてとうとう、遠くへ行きたいのなら早い時間に電車に乗ってしまわねばならない、という大前提の予定の事などすっかり忘れてしまい、誰かの家の玄関先に花を開こうとしている白い蕾や、後数年経てば朽ち果てる予定が立っていそうな家屋を古い写真機の中に収めたり、家々の隙間から隙間へと走り抜ける猫を追いかけたりして遊んでいた。

 そんな僕等の眼球の裏側を目映く痛めるのは、坂道の真ん中に引かれた真っ白な線。暗いアスファルトの上に、まるで僕等を誘導するかのように引かれたセンターライン。駅へと続く道の上を、真っ直ぐに、時にカーブを描いて、街並みに隠れて見えなくなるまで走り抜けていた。
 真新しい朝と、今日の為に新しく引かれた白線。行き先での心地良さを頭一杯に思い浮かべ、僕等は白線の上に立ち写真を撮った。墨色の影法師は、僅かに肩を寄せて立っていた。

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このエントリ内に書かれている事は大体に於いて事実と異なります。
  • 最終更新日時 : 2008-10-15 22:32:45

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