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April 2006

写欲

 なんて事について考えてみる。

 僕が写真を撮る事を日常の一部にした理由は此処で書いた通りだが、どうもそれだけでは説明になっていない部分もあるので追記したい。しかしそれほど正確に説明出来る自信もない。それは自分でもよく解らないからである。なので、この文章を書く事は私が自分の事を考える為の口実に過ぎない。と、こんな前置きを書いてしまうと、長々と書かねばならないような気にもなるが、簡単にしか書かない。

 思い出や関係性を可視化しないと気が済まない、不安に感じるというのは、自分の人生、それが大袈裟ならば生活に何からの希薄さを感じているからではないか。自分以外の人達の事に転じると、少し前のプリクラやSNSの可視化された交友関係などはその現れであるように思う。
 生活の希薄さが求めるものは他人との関係性に対するものだけではない。同じ様な事で、物欲・複数の資格取得・複数の語学の習得・食べ歩き、度重なる旅行など。これらをやる人が全てそうであるというのではない。中にはそんな人が居るという意味である。判断の基準としては、それをやる必要が客観的に見てあるのかどうか。適切であるか、過剰であるか。そう考えると、人々が余暇でやっている事はそんな事ばかりである。

 何となく偏った意見であるようにも思えるが、今はそんな風に考えている。

ハッシュ! / 橋口亮輔

 一組のゲイのカップルの間に「子供を作りたい」と言うヘテロの女が割り込んで来る話。全体的には「 About a boy 」と同じような感想を持った。誰かには誰かが必要だが、それが家族や恋人である必要はない、そういう話。
 長く連れ添う事が稀なゲイ・カップル。将来を思ってみても、養子でも貰わなければ家族が増える事はない。方や女は、長らくの不摂生(不特定の男との性交)が祟り子宮に陽性の筋腫が見つかる。出産をする気がないのなら摘出してしまえば良いのでは?と医師に薦められる。

 この映画の中では、家族制(核家族でさえ)は否定されている。将来の孤立(孤独)から生涯救ってくれるほど確固としたものではないという理由で。であれば、利害(それだけではないが)の通じる相手を見つけ、一緒に生きていくのが進むべき道ではないか。

 印象に残った台詞。ゲイ・カップルが些細な喧嘩の後にベッドで強く抱き合う。片方が言う「苦しいよ。」そしてもう片方が答える「寂しいよりいいじゃん。」

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人生トレース

 このところ、フィルムカメラでまともに撮り始めた1999年の秋からこっちの写真をスキャンしてみたりしている。風景ばかりで人が写っている事は少ないが、時期と場所が判れば、その時独りであったのか、それとも誰かと一緒だったのかだいたいは思い出せる。しかし中には、何時何処で撮った写真なのか全然判らないものもあったりして、それはそれで面白い。
 1999年〜2001年の春までの写真は、未だ全然ネガの整理をしようなどという考え(まさか写真をずっと撮り続けるとは思っていなかったので)はなく、袋の中に溜まりに溜まったネガを、適当に掴んだ先からフォルダに収めるような事をしているので、ネガに日付を写しこんでいる写真以外は、本当に大凡の時期しか判らない。しかもそれは日常ではない特別な場所が写っているとか、雪が積もっているとか桜が咲いているとか、誰と一緒に居たとか、そういう記号が無ければ判断がつかない。

 さて、こういう事をしているからといって特に懐かしいという感情は湧かない。色々な事を思い出しはするが、ただそれだけ。良い事もあれば嫌な事もある。嫌な思い出が写りこんでいるネガなどスキャンしない。更に風化するまで封印するのである。何となく自分の略歴を眺めるようなこの作業は、基本的に楽しい。昔読んだ本の頁を開いたり、昔聴いていたレコードに針を落としたりするのにも似ている。つまり目慣れた光景が再生されるのだ。違う点は、それが極個人的な光景でしかないという事。暫くは続けてみようと思う。現在の写真を撮る事より楽しい気がする。少なくとも今この瞬間は。

車窓から見える風景

  • 2006-04-09 日曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 陽の当たる駐車場に寝そべる犬、玄関脇に据えられたベンチで微睡む老人、桜の木の下を二人乗りの自転車で走り抜ける若いカップル、校庭を走り回る子供達、男子に混じってフットサルコートに汗を滲ませる女の子、公営団地のベランダには色とりどりの洗濯物、その脇ではためく気の早い鯉のぼり、団地は本当に多い、線路に近い位置から数百メートル先まで不規則に建ち並ぶ。
 最近は電車の中では本を読んでいる事が多いせいか、これらの景色に気付かなかった。危うく見逃すところだった。僕に取っては、これらは或る意味絶景である。ターミナル駅に着くまで、僕は飽きる事なくこの晴れやかな風景を眺めていた。

四月の馬鹿

  • 2006-04-01 土曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 さて、この季節、一時期に二つのベクトルが働きがちです。別離と融合。決別と受容。上昇と下降。前進と後退。温暖化と寒冷化。つまりは逆方向の二つの力が人々を惑わすのです。これは何故でしょうか。4月開始の年度末制のせいでしょうか。それとも人間の身体に及ぼす気候の影響のせいでしょうか。考えてもよく判りませんが、兎に角、この季節は不安定を常とした時期であるようです。

 ところで、上で「一時期」という風に書きましたが、稀にですが、これが「一瞬間」というか「同時に」に働く場合が在ります。ま、その場合は何も気候がどうとか、そういう理由でそうなる訳ではなく、会話の中で突然行われます。
 その唇から放たれる言葉は、僕の想像を絶し、一瞬のうちに混乱を呼び起こし、そうなれば僕はただ呆然とするだけで為す術も在りません。在るとすれば、図らずも間の抜けた相づちを打ってしまい、後になって後悔するくらいのものです。

 此処まで書いて気付いたのですが、前フリの話とは似ているようで全然関係の無い話になっていますね。でもせっかくですから、このまま続けましょう。

 こういう類の言葉(事実)を投げかけられた場合、僕は昔っから自分の感情の赴くままに(無理矢理)話を自分に引き寄せようとする事が多いのですが(それはいくら考えたって何も答えが出ないから)、それらは一様に失敗を招いてしまうので、今回は黙りました。というのは嘘で、何も思いつかなかったから黙っていただけです。それでどうなるかなんて、もう考える余裕すらなかったのです。
 そうそう。今日という日を考えれば、全てが壮大な嘘であるのかも知れないと思わなくもないのですが、確かめる気力も無いし、恐らく気分としては、どちらにしてもそう大差ないのだろうと思い諦めています。何を諦めているのかって、この流れに逆らい覆す事をです。この二週間というもの、諸事情を含め色々な事が有り過ぎます。恐らくこれで終わりではないのだろうし、今後に備えてひたすらに休息する事が先決です。何がどう動いているのかさっぱり解らないのですから、それ意外に賢明な行動を思いつけません。

 JR山手線の沿線を取り囲む桜の木々は、切り立った土手の上に根を下ろしているせいか、陽の光を求め、枝を足元に下ろしています。その様は、溢れ出づる幸福の重さに耐えかねて、頽れる賢者のようにも見えます。

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