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September 2006

輝ける空

 空が輝く、という表現はこの季節の空の事ではないだろうか。冬は勿論の事、春でも夏でもこういう印象を受けない。光量の問題なのだろうか、冬は朧気だし、春は頼りなさげで、夏は熱に光が歪められているように感じる。秋はやけに「光」を感じるのだ。目で探す事もなく、両手に掻き集める事もなく、逆に暴力的に射抜かれる事もない光が、其処彼処に及んでいる。

伸びやかに巡る季節

 この二週間というもの、平日は治らない風邪を抗生物質で誤魔化しながらエンヤコラと働き、休日は仕事したり用事があって出かけなければならなかったりして養生する時間があまりないので、日曜の夕刻の頃には本当に倒れるように床に着く。床に着くとは言っても眠ってしまう訳ではなく、意地汚くだらだらと本を読んだりDVDを観たりしているのだが。
 しかしこの身体の感じ、とても嫌な感じだ。以前にもこういうのに悩まされた。部屋でじっとしている分にはさほどの事はないのだけれど、外へ出かけてしまうと時間が経つにつれて体調が悪化し、終いには歩き続ける事すら出来なくなる。それで予定を急遽中止して帰宅してしまった事がもある。面倒だな、この身体。でも僕の身体といえばコレしかないので、どうにかして上手く付き合っていくしかないのである。当分の間は摂生された生活を送るしかない。

 そんな私の個人的な事情と打って変われば、季節は十分に巡り、籠もった熱から解放された空は澄み渡っている。薄く千切れた細長い雲がぬーっと飛んで去る。一反木綿のように見えて楽しい。夜ともなれば涼しげな風が横町を走り抜ける。薬のせいでぼうっとした頭で、ぼんやりと月を眺めるのも悪くはない。

THE 有頂天ホテル / 三谷幸喜

  • 2006-09-19 火曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 登場人物達が皆可愛らしい。一体どんな魔法を使えばこんな世界が出来上がるのか。こんな風に、自分の生きている実人生を思えたらどんなに楽しく、肩の力を抜いて過ごしていけるだろうか。
 それはまあ、実人生とは違うからこその劇であり映画なのだから、比較しても仕方のない事かも知れない。ただ、何かしらのヒントにはなるような気がする。例えば自分が苦境に立たされた時、笑いながらそれを乗り越える自分自身をイメージし易くなるような。
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触手

  • 2006-09-18 月曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 夜、漆黒の帳に覆われた空に白い雲が浮かんでいる。世界に動きはない。僕は煙草に火を点け、星を探す。と、空の端っこに一点の光が明滅するのを見つけた。緩やかなスピードでこちら側に近づいてくるその光の正体は、果たしてヘリコプターであり、見上げるその姿は深海を遊泳する海老のようであった。光源は一つではなく、透き通るような赤と黄と青の光を、それぞれ違った間隔で明滅させている。
 触手を伸ばして何かを探しているようでもあり、寸断なく緊張を張り巡らし、単独飛行を楽しんでいるようでもある。彼はゆっくりと私の真上を通り過ぎた。

流れる雲に手を振りながら

  • 2006-09-15 金曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 夕刻。ビルの屋上から眺める雲には二つの種類が在って、一つは左から右へゆっくりと流れる、天上を覆い尽くすように広がる白い雲。僅かな隙間からは青い空が見え隠れする。もう一つはそれよりもっと低い位置を右から左へと、何処かへと急いでいるような風情で流れる、少し黄みがかった雲の塊が幾つか。高さが違う為に受ける光の種類が違うからなのだろうか。全く別物のように見える。行き先が真逆なのも面白い。
 夜。都心では夜でも雲は白い。地上の光を反射して闇に不気味に浮かんでいる。今度は流れる方向は一つだけで、右から左へと雲は流れて行く。量も僅かで、その他は黒々とした闇夜が広がっているだけだ。夜に眺める雲も悪くはない。というより結構好きだ。

ワンダフルライフ / 是枝裕和

 観始めは「あなたに取って、これまでの人生で一番大切な思い出は何ですか?」という、ハートフルナントカなどと銘打たれそうな映画なのかと思っていたのだが、さすがに「誰も知らない」を撮った是枝裕和である。そんなに甘い映画ではなかった。
 記憶とは、当人の都合に拠り、幾度と無く書き換えられるものである。しかしそれを誰が責められるだろうか。それが偽りであったとしても、幸せな記憶を懐に死ぬ事を夢見る事は悪い事ではないと僕は思う。「あなたは、自分自身がどういう人間であったと思いながら死にたいですか?」そういう映画であった。例え叶えられる事がなかったとしても、自身の望みをはっきりと持っている人間は終焉を迎える事が出来る。自分に嘘を吐く事が出来ず、尚かつ幸せに死にたいのであれば、せいぜい生前に幸せな記憶を増やす事に専念すべきである。

 余談だが、エンドロールのクレジットの中に懐かしい名前を見つけた。同姓同名の赤の他人なのかも知れないが、よくある名前ではないのできっとそうだろうと思っている。生きていてくれて、私は嬉しい。

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Sayuri / Rob Marshall

 公開前から、主役を日本人が演じない事など、色々な物議を醸し出していた映画。僕としては、その事については何ら問題視していなかったのだが、結局ロードショーには行けなかった。
 観た感想は、カメラワークにしても人の動きにしても、やはりハリウッドの映画だなあという事。日本文化の時間の感覚、つまりは「静」を随所に織り込む感覚は皆無である。それに、やたらと女性だけが格好良く、制作がスピルバーグだから仕方がないが、ある種サクセス・ストーリーに仕上がっている。どう見てもアメリカ映画である。要は日本の閉じられた文化を異文化の目で覗き込んだだけの物語だ。

 かと言って、僕はそういうのが嫌いではない。例えば、外国諸国で紹介されている浮世絵の冊子。繊細な線や穏やかな色彩の上に大きく太く黒いゴシック体で英文のタイトルが銘打ってある。些か暴力的なその理解の仕方に私は不快感どころか、好感を持っている。何故だかは解らない。何かしらの力を感じるのだ。

 映画とは関係ないが、アーサー・ゴールデンの原作本出版時に色々と騒動が起きていたようだ。それを知ったのは Wikipedia での記述。よく耳にする話と言えばそうなのだが、此処を読んでいると未読の原作を読む気が失せてきた。それならば、岩崎峰子の自伝を読んでみたい。

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ポケット

  • 2006-09-02 土曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 秋の陽射しは慎み深く、雲高く。肌を舐め流れゆく風は、己の発する熱と声とを運び去っていく。彼方に見えるは引き千切られた雲と、その前を横切るヘリコプター。最近空ばかりを眺めるようになった。行き場のなくなったこの感情を、一体何処へ向かわせればよいのかと思案するも、それさえも宙に浮いて流されてしまう。
 ポケットを増やそう。持て余した何かを取り敢えず仕舞っておけるようなポケットを。手に持ったまま、所在無くうろうろしていても仕方がない。いつかそれを取り出して、誰かに差し出す事がないとしても、取り敢えず今は仕舞っておこう。

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