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July 2009

父の肖像

  • 2009-07-31 Friday
  • Category - Days
  • Tag -
 トム・ウェイツの声を聴いていると、正確にはその姿を観ていると、時折父の事を思い出す。あんなに格好良くはないし顔が似ている訳でもない。酔っぱらいでもないし歌も歌わない。粗野な風貌は若干似ている気がしないでもないが、一体何処に共通した要素を認めているのか自分でもよく判らない。それでもとにかく、時折父の事を思い出す。

 父に関して思い出す事はたくさんあるが、あまり仲が良かった記憶がない。子供の頃ならいざ知らず、僕が思春期を迎えてからは大体どちらかが機嫌が悪い。一見して父は無口であるし大人しい性格のように見えるが、その実は頑固で偏屈で自分の思い通りに事が運ばないと酷く腹を立てる。そんな男と、とにかく何もかもが気に入らずに、鬱屈した鋭利な感情を盾にして生きていた僕が仲良く暮らせる訳がない。言ってしまえば大っ嫌いであった。
 人は余程のことがない限り、例えば死ぬような目に遭いでもしない限り、そうそう変わるものではないと思っている。そりゃあ何十年も経てば多少の変化はあるかもしれないが、それは生きていく上でのバランスを覚えていくようなもので、本質的なものは何も変わらずそのままだ。父にしても全くその通りで、昔に比べれば幾分かは態度が軟化したように見えるが、それはそう見えるだけで大して変わってはいない。相変わらず自分の思いを通そうとする。歳を取り、老境にも十分に進み入れば、いろいろな事を諦めていくのだろうと思っていたのだが、我を通す事だけは諦め切れないらしい。実に迷惑な人である。

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 父は内弁慶ではないと思うが、外面が良く、しかし社交的な人間でもない。基本的に殻に籠もっている人だ。そんな父の姿を見ていると、この人は遠い昔にたくさんの事を置き去りにしてきて、それを全て諦めた上で現在を生きているのではないだろうか、というような印象を持つ。喋らない人であるので、それが何であるかは僕は知らない。

 父の無念を晴らす。という言葉を目にした事はあるだろう。それは大概が時代劇の中で、理不尽な理由に因り失脚を余儀なくされたり、殺されたりした武家の父を持つ息子や娘が、怨敵を眼前に捉えて構えた時に吐く台詞であるが、僕も稀にこのような気分になる事がある。とはいえ父に明確な敵が存在している訳ではない。もし存在するとすれば、それは彼の人生であり彼自身である。随分と失礼な見方であるとは思う。後悔など何一つないなんて事はないと思うが、彼がひとつひとつ選び取ってきた結果としての人生である。僕なんぞにそんな事言われたくはないだろう。それでもやはり、彼の姿に無念さを感じずにはいられない。その根拠すら知らないのに。

 僕がどうすれば、彼を楽にしてあげられるだろう。時々そう考える。喜ばせたいのとは少し違う。彼に自分の人生を納得して欲しいのだ。良い事も悪い事も全て納得して欲しいのだ。僕は彼の息子であり、彼は僕より30年以上も長く生きている。おこがましいにも程があるし、現在も仲が悪い。幾ら考えてもその方法が思いつかないのだ。

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 今、いとうせいこう氏がWEB上に、複数の小説を同時進行で連載している。そしてその中の一本を、なんと氏の父が書いている。とても素晴らしい思いつきだと思った。それぞれの小説の内容よりも先に、そのアイデアが既に小説的だ。

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 保育園の時、授業で父の似顔絵を描いた事がある。クレヨンを使い、幼児にありがちな乱暴なタッチで、頭でっかちなフォルムで父を描いた。その絵は、煙草を吸っている父の横顔だった。当時の父はいつも煙草を吸っていたのだろう。実際には、父はいつも左手で煙草を摘んで吸っていたのに、僕は何故かしら絵の中の父には右手に煙草を持たせていた。その事をいつまでも気にしていた事を覚えている。

 僕が覚えている限りで最初の、父が吸う煙草の銘柄はハイライトであった。その後長い年月を経て父の吸う煙草は徐々に軽くなっていった。ハイライトからセブンスター、マイルドセブンから同じ銘柄のタールの含有量が少ないタイプへ。そして数年前に肺気腫を患ってからはそれさえも吸わなくなった。
 僕はもう随分と長い間、ハイライトを吸い続けている。一時期、約二年ほど煙草を止めていた時もあったけれど、再び吸い始めてからはまたハイライトを吸うようになった。かつての父と同じ銘柄の煙草を吸っている事を、どうやら僕はほんの少しだが誇らしく思っているようだ。そんな些末な事でも、父との繋がりを保っている事が嬉しいらしいのである。

あまい囁き

  • 2009-07-25 土曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 TR2 Tuesday を聴いていたところ、番組内でこの曲が紹介されていた。パローレ、パローレ、パローレというやつである。紹介されていたのは中村晃子と細川俊之のものだが、僕が昔子供の頃に最初にこの曲を聴いたのはイタリア語だったと記憶しているし、一番有名なのはダリダとアラン・ドロンのフランス語バージョンであるだろう。それらを順番に並べてみた。

ミーナ & アルベルト・ルーポ


ダリダ & アラン・ドロン


中村晃子 & 細川俊之


 イタリア語バージョンは格好良いな。男女の表情の落差、というか男女の間の溝の深さがよく現れていてとても良い。それに引き換え日本語バージョンは、どうしても笑ってしまう。みうらじゅんも恐らくそういうつもりで紹介していたし、何故なのだろうか。それはやはり生活習慣の違いなのだろうか。

 Parole, Parole, Paroles ! 言葉、言葉、言葉!

サラマンドラ

 子供の頃に見聞きしたもので、大人になった今でも記憶に残っていて、度々思い出しては当時と同じような強烈な気分に陥るというものが在る。子供というのは何ら防御する事なく、真っ正面から受け止めてしまうので、良くも悪くもその印象が心のど真ん中に刻印されてしまうものだ。NHK「みんなのうた」で流れていた「サラマンドラ」という歌は、僕にとってはそういうものの一つだ。



 歌っているのは尾藤イサオ。尾藤イサオと言えば「あしたのジョー」の主題歌だが、それと同じテンションで歌い上げる。そのはらわたを震わすような声におののいていたというのもあるが、歌詞の現すそれまでに感じた事のない淋しさに、小学校に上がったばかりの僕は打ちのめされてしまったのだった。この世に、そんなにも甚大で強烈な淋しさが存在するという事が信じられなかった。そう言えばその当時、この歌を好きだったのかどうかよく判らない。でも、とにかく、僕に重くのしかかってくるその歌に耳を塞ぐ事は出来なかった。
 大人になった現在、そのような淋しさが現実に存在する事は知っている。その存在を消す事の出来ぬ事実として受け容れる心構えも一応はある。それでも尚、この歌の歌詞を聴いていると、やりきれない気持ちで一杯になるのである。アニメーションの可愛らしさが唯のの救いであるが、NHKはどうして、このような歌を子供向けの番組で流そうと考えたのだろうか。それこそが教育だと思ったのだろうか。それはたぶん、正しいような気がする。

 余談:この映像、僕の記憶にあるものと少し違う気がする。僕の記憶では「こぼれる炎ぐちひとつ」のところで、サラマンドラが夜空に向けてポッと小さな炎を吐いていたと思う。別バージョンでもあるのかな。

真夏の夜の夢 in Cuba

 梅雨明けと同時に灼熱の夏の到来である。僕は下町に住んでおり、河の近くでもあるのでまだマシな方だと思うが、それでもこの急激な季節の変化について行けないでいる。植物と老人は萎れ、焼けたアスファルトの上では猫が踊っている。現在の室温は摂氏31度。自室ではエアコンを出来るだけ使いたくないので、もっぱら扇風機にしがみついて過ごしている訳だが、これがいつまで保つのか。これより三月はこんな気候が続く。生まれた季節が夏なので割合暑いのは平気なのだけれど、加齢と共に厚さが堪えるようになった気がする。世の老人達はどのようにして夏を生き抜いているのだろう。己の行く末が心配だ。

 キューバの音楽には「涼」が在る。打楽器・弦楽器・歌・管楽器。それぞれの楽器が紡ぐグルーヴは奔流のように暴れ回り、その中に何故か「涼」を感じる。これはもうその土地が生み出した快楽とでもいうしかないだろう。

  • Last modified : 2009-10-03 14:52

時は短し歩みは遅し

ほんにあなたは紅の 侍ジャップの成れの果て 浮き世の沙汰に朽ち果てぬ
思いつくまま不定形にて詠めり
  • Last modified : 2009-07-13 23:59

色即ぜねれいしょん〜黒猫チェルシー

 そう言えばそろそろ公開だったかなあと公式HP(注意:強制ウィンドウ・サイジング)を見てみれば、予告編等々がアップされており、YouTube にも公式の動画がアップロードされていたので、それらをぽちぽちと眺めていた。

制作発表


予告編


 んで、主人公役の渡辺大知。パンクバンドをやっているという事で、以前にその事を知った時は、あそう、ふーん、という感じで流していたのだけれど、今日改めてそのバンド " 黒猫チェルシー " の PV を観てみたら、予想以上に良くて、すっかり魅了されてしまった。

嘘とドイツ兵 / 黒猫チェルシー


 これはもう、制作発表の動画に見てとれる人物像とは全くの別人である。町田町蔵と大槻ケンヂを混ぜたような、動画内で岸田繁いうところのハラワタ系で、観ていてどことなく親しみを覚えるような、ある意味正統な日本の少年パンクであった。音的にはパンクとはいえ随分と洗練されているけど、渡辺大知はパンクス以外の何者でもない。近頃の、ただキレイなだけのバンドマンに比べて明らかに異質である。こんな男の子を主役に起用するとは、前作の " アイデン&ティティ " の主役に峯田和伸を起用するに続いて、田口トモロヲはさすがに目の付け所がばちかぶりである。

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