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November 2005

Nikki / くるり

 待ちに待った新譜。今日繰り返し聴いてみて思った事。岸田君は(僕は基本的にくるりは岸田繁のワンマンバンドだと思っている。本人は否定するだろうけど。)すっかり苛立ちが成りを潜め、皮肉が少なくなったなあ、と思う。岸田繁という名の一人の男の成長が、正確に伝わってくる。それが音楽の本質かどうかという議論は置いておく。僕はそういう人間の成長を見て取れるというのが好きなのだ。リアルタイムで聴いていた訳ではないが、The Beatles や The Rolling Stones を聴いていてもそれを感じ、あたかも冗談のように長い長編小説を読んでいるような感覚がある。椎名林檎も同じ。言ってみれば文学に近い。それに歌詞も随分変わって来た気がする。これまでは、演奏と歌詞は独立しているような印象であったが、このアルバムでは両方が同時に聴かれなければ、伝わって来ないような気がする。

 新譜が出る度に、その変化にすぐに馴れる事が出来ないが、後々、結局全てのアルバムを好きになってしまう。何時までも聴き続けていたいバンドである。

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Middle Tempo Magic / 安藤 裕子

「ドラマチックレコード」目当てで買って、その他の曲はすっかり聴き流していたのだが、11曲目の「隣人に光が差すとき」をラジオで聴いて、少し気になったので改めてCDを聴き直してみた。ら、予想を超えて「妬み」の歌だった。「アナタニナリタイ」と言わしめるその歌詞は、絶望的なまでの切実さで、戦慄すら覚える。繰り返し聴いたらマズイだろうなあ、と思いながら何度も聴いてしまう。本人の固い意志の元に設定した曲順らしいが、12曲目があって本当に良かった。
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イサム・ノグチ展 / 東京都現代美術館

 観に行った時の事を書くのを忘れていた。

 入口から入ってすぐ、2m級の提灯が展示してあるスペースで、音声サービスのイヤフォンに耳を傾けつつ、一心に見つめている女の子が居た。他にも閲覧者は何人も居たというのに、何故かその子だけが目に入った。たぶん20歳くらい。美大だとか美術系の学生なのだろう、今の僕が属する環境では考えられない服装をしていた。ま、そんな事はどうでも良い。

 それから後も、彼方此方の展示スペースで彼女を見かける。というか目に入ってくる。そうすると、イサム・ノグチの彫刻よりも彼女ばかりを目で追ってしまうのだ。何もその女の子が凄く好みであったとかそういう事ではない。それぞれの彫刻を取り憑かれたように見つめ、彫刻から彫刻へと小動物のように渡り歩くその姿から目を離せないのである。そんなにも熱狂的に彫刻を観る人は他には誰一人居なかった。自分の気に入った物だけを集中的に観る習慣の私とは違い、彼女は何一つ見逃そうとしない。何かしら切実さを感じしてしまう。僕はこういう人を見ているのが好きである。

 展示場から出て、関係する書籍やグッズの販売スペースを彷徨いていたのだが、其処でもその女の子を見る事になる。彼女の情熱は留まる事を覚えないようで、此処でも全ての商品を吟味していた。既に手に幾つもの商品の入った袋を下げ、それでも未だ何か探そうとしている。Tシャツを選ぶのには、30分ほどかけていた。最後に彼女が買った物は、イサム・ノグチとは全く関係のない「太陽の塔」のオブジェ。包装して貰っているところを見ると、友人へのお土産か何かにするのだろう。取り敢えずそれで満足したのか、彼女は意気揚々と美術館を後にした。

 イサム・ノグチの彫刻を観に行ったというより、その女の子を観に行ったようなものであった。

Isamu Noguchi

 東京都現代美術館のイサム・ノグチ展にて購入したDVDを観た。その中で、彼のデザインした提灯を模した照明「AKARI」についてこう語っている。
紙の提灯は壊れても、また新しいものに取り替えられる。私はこの概念を日本に教わった。過ぎゆくものを慈しむ心。いずれ人生は終わり、桜の花は散る。そこに残るのは芸術と命なのだ。
 これと似たような言葉を、昔テレビで見かけた事がある。確か北欧を紹介する番組で、国はスウェーデンかフィンランドだったと記憶する。我々が普段目にする欧州の教会は、通常は重圧で頑強な石を使って建てられる。しかしその国の教会は木造だった。教会などは何十年も何百年も壊れてしまわないように、石で建造するのが普通の考え方ではないかという問に、木造の教会で神に仕える牧師はこう答える。「形あるものは全て朽ち果て、壊れてしまうものだと私達は考えている。しかし、教会が朽ち果てても、そこに信仰は残るのだ。」僕には、その考えはとても東洋的なものに思えた。しかしその発想は、明らかに間違った認識であるようだ。

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