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花見、酩酊、そして記憶喪失。

  • 2010-04-06 Tuesday 22:38
  • Category - Days
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 先の日曜日の谷中墓地での花見。そういうのは本当に久しぶりで、若干の寒さはあったものの、昼から夕方まで十分に楽しんだ。参加者も一人を除いては初対面の方々ばかりであったが、そこはほれ、酒が入るので割と問題無く過ごせる。酒を呑み、旨い物を食べ、喋り、桜を愛でる。シンプルで静かな娯楽である。しかしこのエントリではその事を書きたいのではない。その後僕は奇異な体験をする事になり、その事を書きたいのだ。

 ★

 会場の撤去を終え、日暮里駅で参加者の方々とお別れした後に、同じく参加していた友人と「せっかくだから軽く呑んで行こう」(ついこの前も呑んだけど)という話になり、「気軽にそして適当に」がモットーの我々は華の舞に腰を据える。陽が落ちてから少し寒い目に遭っていたものだから熱燗を注文する。それと、腹は膨れていたので摘む程度の料理を。それから何を話したのだろうか。朧気に、最近気に入ってるブログサイトの話だとかをしたような気がする。そしてどういう訳か Perfume の話になり、「一番好きな曲は?」と尋ねられ「シークレット シークレットかな」と応じれば「オレはエレクトロ・ワールード」との返答。それを聞いた途端「しまった」と思った。考えるまでもなく自分もそうだった事を思い出したのだ。そしてやおらその曲の良さを語り始める僕。一体何をそんなに頑張らねばならないのか自分でも解らないが、一生懸命喋った気がする。

 そしてその時点からの記憶が無い。これが今回のメインの話だ。

 一体どの時点で切り上げ、支払いを済ませ、友人と別れ、電車に乗って自宅へ辿り着いたのかほぼ覚えていない。翌日友人に尋ねれば「ふらついてはいたけど、ちゃんと割り勘で支払って、高架上の改札で別れた」という事であった。全く記憶にないが、飲み代を踏み倒したり、吐瀉物をかけたりして迷惑をかけてはいないようなので安心した。僕はこれまで前後不覚になるまで泥酔した事は何度かあれども、記憶を無くした事は殆どない。だから今回そうなってみて思うのは、記憶を無くすと本当に不安になる。自分で自分を把握出来ていないというのは恐ろしい事である。

 その後再び記憶を取り戻すのは、自宅に戻った時点からである。ただ、途中うっすらとしたフラッシュバックのように思い出せる事もある。僕は地元の駅の改札を抜けた辺りを千鳥足で歩いていた。「シュコー、シュコー」とダースベイダーの真似をしながら。泥酔しながらも余裕があったのだろうか。
 そしてまた記憶は途切れ、今度は浴室でコンタクトレンズを外している自分の姿。なかなか外れなくて結局諦めた。シャワー浴びるのも面倒に思えて、少し横になろうとベッドに横たわった。

 そしてブラックアウト。目を覚ましたのは朝の5時だ。

 部屋中の、夜用の照明が全て灯され、暖房が効いた中、僕はジーンズとジャケットを脱いだ状態でブランケットにくるまって寝ていた。不思議な目覚めであった。何せその状況に覚えがないのである。自分が横になった事しか覚えていない。取りあえず歯を磨こうと浴室に入り、そう言えばコンタクトを外さねばと思い瞼をこじ開けると、眼球に張り付いているはずのレンズがない。そしてレンズケースを見ればそこにはレンズがきちんと収納されていた。レンズは外せなかったはずである。しかし現実には収納さされている。
 僕は混乱した頭を抱えつつシャワーを浴びた。少しだけすっきりした頭で改めて部屋を見廻す。まず玄関の扉が施錠されていない。不用心極まりないが、部屋に入った記憶がないからそんなもんだろうなと思った。そして作業場(個人的な認識)に入れば、アーム・ライトが灯され、パワーブックが立ち上げられており、そしてあろう事か誰かがこの部屋で煙草を吸ってる!って僕以外に居る訳ないのだが、煙草は花見の途中で切れたはずである。横を見遣るとハイライトのカートンボックスの封が切られていた。覚えはないがどうやら何処かで買って来たようである。恐らくいつものファミマだろうけど、何しろ記憶が一切無いので、その場で何をしでかしたか判ったものではない。次に行った際に何も言われない事を祈ろう。

  ★

 明け方の弱い朝日が差し込む部屋は他人の部屋に見えた。旅行などで数日部屋を空けると時折こんな感覚に陥るが、この違和感はこれまでの人生で最強だ。レコーディング機能を停止した僕が一体どのような心持ちで過ごしていたのか。まるで他人を思うように想像する。いつものように少しだけ出窓を開け、椅子に座り煙草をふかす僕。一体何を思っていたのだろうか。それとも何も考えていなかったのか。その後ろ姿は、間が抜けているようにも思えるし、儚いようにも思える。記憶を無くしている間の僕は、それはもう僕ではなく他人だ。そんな人間を思う機会を得る事が出来て、割と楽しい。酒に呑まれて前後不覚になるというみっともない事極まりない夜ではあったが、自分が自分に対して他人を目を持つ事が出来るというのは、なかなか得難い、良い経験であったように思う。

 とは言え、やはり怖いので余りやりたくはない。
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