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August 2004

迷う中野下り電車

 また電車内での話ですが、時折見かける吊革ダブルハンド。要は二人分の吊革を独り占めしている人の事です。僕が思うに、これをやる人間は30代以上の人々のような気がします。しかし例外が二つほどあります。女の子を座席に座らせ、自分は立ってデレデレと女の子に話しかけている男。こいつです。彼が吊革を二本掴む必要があるのは、声が巧く聞き取れない時に女の子の方に顔を寄せる為、バランスを取らねばなりません。その為に吊革が二本必要なのです。悪気はないのでしょうが(妬みも含め)邪魔です。もう一つは、吊革を使って懸垂しようとする小学生です。一瞬は微笑ましく思えるのですが、さすがにこれを真横でやられると腹が立ってきます。後ろにそうっと回って脇をくすぐってやればさぞ面白かろう、とか考えてしまいます。

 さて、それ以外の取り立てて理由が思いつかないが、何故か吊革を二本占有してしまっている人々ですが、僕はその理由をこう考えます。30歳も過ぎ、酷く疲れていたり酔っていたりすれば、筋力の低下に依り、重心を保つのが困難なのではないでしょうか。そうであるならば解る気もします。しかし、しかしです。中にはそういう性善説を覆してしまうような態度を取る人も居るのです。そういう人達はチラチラを周りに視線を投げかけ、自分が吊革を余分に使用している事を気にしているように見えます。しかしその表情には恥じらいとか申し訳なさのような色は全く見えません。どちらかと言えば自慢げです。どういうつもりなのでしょう。もしかすると、他人より少しでも多くのモノを所有している事が嬉しくて仕方がないのかも知れません。僕はこういう人を見かけると、その手を竹で出来た物差し(家庭科の先生がよく持ってたヤツ)で思い切りスナップを効かせてピシッ!と叩きたい衝動に駆られます。

 で、どうしてこんな事を書きたくなったのかというと、帰りの電車の中でそういうオッサンを見かけたからです。彼の目の前の座席には二人の女性が座っていました。彼は酔っているのでしょうか、重心が安定していません。暫くすると彼の身体が揺れ始めました。二人の女性は少し気になったようですが、直ぐに視線をハズし二人の会話に戻りました。オッサンは自分の身体の揺れに耐えようとしているのか、表情が険しいです。しかし悲しいかな、彼のその努力は報われていません。揺れはだんだんと大きくなり、とうとう身体全体がグラインドし始めました。二人の女性目掛けてダイヴしそうな勢いです。女性二人は訝しげに身体を反らせています。オッサンにも二人の女性にも私は何の義理もありませんが、僕はだんだん心苦しくなってきました。車内の雰囲気も明らかに寒々しくなっています。・・・そして、またタイミング良く私の降りる駅へ到着。その後どうなったかは判りません。

真夜中の下り電車

  • 2004-08-25 水曜日
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 相変わらず音楽を聴いたり本を読んだりしていますが、ここのところ、それ以外は仕事をしている記憶しかありません。昨日は23時過ぎの電車で帰宅。僕の隣で吊革に捕まるオッサンは赤ら顔して周りをキョロキョロを見回しています。酒臭いです。本来ならば直ぐにでも場所を移動して、その不快指数150%の状況から逃げ出すのですが、今回は思い留まりました。何故ならば、美しい女性が私の目の前の座席に座っていたからです。

 ブルージーンズに白いレザーのスニーカーを履いて、生成のショールを肩から首に至まで巻いていました。そんなラフな格好の割りには左手にやたらとアクセサリーをつけています。しかし今回の話の中心はそんな事ではありません。肝心なのは彼女がつけている香水です。初めて嗅ぐ匂い(もはや香りとは言えない)ですが、その匂いに包まれていると、もう何だか倒れそうになるのです。もうどうなってもいい、などと思ってしまうくらいに落ちそうになるのです。

 意識が遠のいていく中、僕はふと隣に立つ150%オッサンの存在が邪魔に思えて来ました。この匂いは俺のものだ。嗅ぐんじゃねえ。見るんじゃねえ。僕は乗客が乗り降りするタイミングを見計らい、鞄を押しつけてその150%オッサンを遠のけました。
 さて、どのタイミングでよろけた振りをしようか。そんな心の奥深い声に耳を傾けている内に、あえなく地元の駅に到着。吊革を握る手を緩めました。

色は匂えど散りぬるを

  • 2004-08-04 水曜日
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 僕の保育園からの知人(とは言っても10年くらい顔見てないけど)に S というのが居て、そこは姉・弟・弟の三人兄弟なのですが、三人が揃いも揃って美形なのです。知人は長男で、次男は私の弟と同級生。んで、長女は僕より二つ上で、もう信じられないくらいに美しい人でした。私達友人連中は「Sの姉ちゃん」と呼んで親しんでおりました。中には自分の姉でもないのに「姉ちゃん」と呼んで憚らないヤツもいました。僕を含めて。自分の弟達に対してはどうだったのか知りませんが、僕達には何時も笑顔で話しかけてくれて、大変優しい人でもあったのです。高校3年の頃、彼女は市内の画材屋で働いていまして、その当時デッサンを習いに街の中心へと、毎日放課後に通っていたのですが、まあ、その画材屋にも度々通っておりました。そんな時にも「あら♪いらっしゃい。」と暖かく迎えてくれ、たまに安くして貰った記憶があります。

 今思えば、僕達に接する時以外の、いわば実際の彼女を知らないので幻想に他ならないのでしょうが、当時は手放しで憧れていた訳です。その内に僕達が成長するに連れて彼女が話題に上る事もなくなり、今何処でどうしているのかさっぱり判らない。そんな彼女の事を久しぶりに思い出しました。

風前末尾

  • 2004-08-03 火曜日
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 既に習慣化している屋上での喫煙。日に2度3度。午後8時頃、煙草を片手に通りを見下ろしていると、近所で働く20代の若者達が家路へ着くのが見える。同じ職場なのかどうかは判らないが、3人ずつくらいグループ単位で歩いている。暫く眺めていると、だいたい半分くらいの人が携帯電話を手にしていて、隣を歩く同僚に目もくれずに画面を見つめている。液晶の画面が意外に明るい。屋上から見ていると、小さく不自然に明るい灯りが川に流されていくようだ。蛍みてえだな。蛍にしろ携帯の液晶にしろ、其処には何かしらの意志が存在する。ような気がする。

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