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April 2007

サイレン

  • 2007-04-23 Monday
  • Category - Days
  • Tag -
 一昨日の夜の事。部屋で寝転がって漫画を読んでいると、近所から男の子の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。どうやら駅の方角から近づいてきているようだ。暫く耳を澄ませていると、男の子の泣き声に混じって母親らしき女性の声と、姉らしき女の子の声が聞こえてくる。声を嗄らし、裏返った声で絶叫する男の子を二人で窘めているようだ。
 男の子の叫び声は尋常ではない。夜を切り裂くように絞り出される。母や姉が何か不条理な事を彼にしたのか、それとも彼自身が不条理たりえた結果なのか、それは判らない。理由は何にせよ、彼は彼自身の世界の崩壊を訴えているように思えた。実際のところ、その男の子が何を訴えていようと僕には関係のない事だし、そもそも理解の範疇を越えていると思うので不快ならば耳を塞いでいれば良いだけの話なのだが、響き渡るサイレンは僕にも少なくない影響を与えるのであった。
 男の子の叫び声は、100Mばかり先の四つ角辺りで建物に遮られて消えた。夜は再び静けさを取り戻した。

東京の桜

 思えば、子供の頃には桜なんかちっとも好きではなかった。どちらかと言えば花より、桜の木に棲息する毛虫の方が印象に残っている。そいつらに刺されると本当に痛い。そんな痛みの記憶ばかりが残っている。桜が好きになったのは歳を取ってからだと思う。それは何故だろうか。よく判らない。
 毎年観ていて思うのだけれど、桜の花は開花からほぼ一週間くらいで散る。待ちに待っての一週間である。更にはその時期には何故か必ず雨が降ったり風が吹き荒れたりする。切ない。そんな意地悪すんじゃねえよ、てな事を天に向かって嘆いたりしそうにもなる。それでも桜の花は淡い色彩を孕みつつ、豊満に咲き誇る。歳を取れば取るほどに梅の花が好きになっていくという説も在る。確かに梅の花は可愛いし可憐である。しかしながら色気という点で桜に適わない。桜には後も先も無い。溢れんばかりの過剰さで咲き乱れては、直ぐさま散って落ちる。かくも短い命の花だからこそ美しいのだと思う。

 この時期、電車に乗って東京の街を移動していると、こんな所にも桜の木が在ったのかと改めて認識するのであるが、それさえも二週間も経てば忘れ去ってしまいそうなのである。一年の間ひっそりと佇んでいた桜の木は、この一週間の間だけ、約束された光を浴びながら、狂おしいほどの熱情で天を仰いでいるのである。

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