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DOG ON THE BEACH

雨と冬の憂鬱

 ずっと以前、僕は雨の日が大嫌いだった。梅雨の時期と、11月を過ぎた辺りの長雨は気分が沈み、晩秋で迎えた下降線はそのまま冬を越え、春になるまでそれは続いた。しかし何故か数年前から、徐々にではあったがその状態を強く感じる事が少なくなった。今では長雨を幾らかは楽しめるようになったような気がする。
 そして、冬鬱というものが存在する事を最近になって知った。かつての僕は冬の間は生ける屍とでも呼べるような生活を送っていたのだけれど、それも最近では軽減してきた。雨期の不調もそれと似たようなものかも知れない。気温の下降変化や気圧が関係するのだろうか。それとも血流の勢いに関係があるとか。冬鬱の場合は日照時間に関係があるようで、その治療法として毎日二時間光(太陽光でなくても可)に身を晒す事であるらしい。そういう施設も存在するとの事。しかし日常生活を営みながら、毎日それだけの時間を割いて治療に当てるというのは無理な話である。でも中には酷い鬱状態に陥る人も居るようなので、その人々には有用だろう。どのみち日常生活を送る事すら困難になっているのだから。

 時折、それらの症状が軽減した理由を考えてみるのだが、何も思い当たらない。歳を取って体質が変化したのだと思う他はない気がする。

 軽い鬱状態にある時はとにかく何もしたくないし、無理矢理に何かしらを為したとしても効率が余りにも悪過ぎて、段々と自分が嫌になってくる。だから「何もしたくない病」に罹っている時は、自堕落に過ごすしかないような気がしている。しかし社会生活を営んでいれば、どうしてもやらなければならない事は多々ある訳で、どうにか最低限の事だけを歯を食いしばってこなし、それでどうにか勘弁して貰うのがやっとの生活を送る事になるのだが、それはやはり憂鬱でしかない。
 しかし考えてみれば、そういう話を余り耳にした事がないので、そんな状態に陥る人はきっと少ないのだろう。そう考えると、長雨や冬において鬱屈しない人間の状態が存在するという事になるが、一体どうすればそこに自分を持って行けるのだろうか。是非とも知りたいところである。これは僕の勝手な想像だけれど、日常生活の中で頻々に運動をしていればそうならずに済むような気がする。つまり血液の循環を良くして、身体を冷やす事を避け、新陳代謝を良くすれば軽減していくのではないだろうか。まあこれは本当に想像しているだけで、何も実践はしてないのだけれど。

 ところで、年寄りが天気の事ばかり話題にするのは、それだけ影響が大きいからなのだろうな、と思う。そう遠くない将来、僕らも洩れなくそうなるのだ。やり過ごす方法を学んでおいた方が良いと思う。
  • Last modified : 2010-05-31 23:29

中央線沿線を歩く(大久保〜東中野)





 大久保駅から大久保通りへ出たところ。ガードが覆い被さるような光景と壁の絵が、山手線の新大久保駅から出たところの光景とかなり似通っている。



 線路脇の道に入る。突然多国籍な雰囲気に変わる。大久保と言えば韓国人が多く住むと認識していたのだが、暫く前に観た「ブラタモリ」では、最近は本当に色々な国出身の人々が住み始めているらしい。住む人だけではなく、それらの人達が営む飲食店や食料品店などが多く軒を連ねているようだ。主にアジア諸国だという事であったが、コーカソイド系の人々も幾らかは住み着いているようだ。歩いている間何人か見かけた。



 建物の壁に文字通り取って付けたように、しかも無理から掲げた看板と、その下に放置されたの数台の自転車、そして何よりもY字路を若い女性が歩いているという絵。



 Y字路を見つけると必ず撮ってしまう。左側の狭い路地へと進む。



 人が擦れ違うのがやっとの路地は結構長く続き、トンネルを抜けるように大通りへ出る。



 大通りを渡り、線路脇の二車線もある道を進む。



 駅まではまだ少し歩かなければならない場所であるのに、何故か自転車が大量に駐めてあった。事情を知りたくて、注意書きを探してみたが見付からず。僕の前の歩いていた、小派手な容姿の女性が道沿いのヨハン東京キリスト教会に入って行った。入口にはたくさんの花が飾られ、オルガンの音が響いていた。何の催しなのか確認出来ず。



 突き当たったところを右に曲がると、神田川に架かる橋に出た。河岸の桜が満開であった。近所であろう人々が花見をしていた。



 大東橋というらしい。



 橋を渡り、パークタワー東中野・ユニゾンタワー東中野という高級マンション(車回しにはホテルマンのような整備係が立っていた)の横を通り過ぎると、駅への通路らしき階段が見えてくる。



 東中野駅。改札は高架上にあるのでとても地味な入口となっている。この周辺も色々な国の人々が歩いていた。国際的な町である。

この散歩は2010年4月14日に歩いたものです。

ある日ある朝

  • 2010-05-10 月曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 目を覚ましたら僕は空っぽだった。一年に何度か訪れるこの感覚、このまま捨て置くべきか、それともやっきになって手当たり次第に何ものかで埋めていくべきか。前回、前々回と、これまで一体どうやってやり過ごしていたのか、どうにも思い出せずに煩悶している。

中央線沿線を歩く(新宿〜大久保)

 何となくで始めるような事でもないのに、何となく始めてしまった中央線沿線(新宿以西)の旅。相も変わらず気紛れに歩き、気紛れに更新する所存である。

 ★





靖国通りを越え、中央線の線路との脇道へと進む。線路の向こう側にそそり立つのは新宿プリンスホテル。



車一台は通れそうな広さの道。その右側には中央線・山手線の電車が行き交う。



職安通りにぶつかる。通りを越えるには陸橋を渡るしかなさそうだ。東京の幹線道路沿いには時々こういうのが在る。



陸橋の上から北新宿方面を眺めたところ。テナントビルが多く閑散としている。



再び脇道へと進む。右側に並んでいるのは百人町区営アパート。人が住んでいる感じが余りしない。烏が多かった。



それを通り過ぎると、公地に散りかけの桜。



そしてさらに進んでいくと、大久保駅南口改札の入口が見えてくる。さすがに駅近辺は雑然としていて、東京都心部の駅前はこうでなくては、と思わせる雰囲気。



左:駅名表示。ちっちぇー。
右:大久保駅南口改札。質実剛健。無駄な造りが何処にもない。



左:圧迫感のある壁の上、頭上には中央線の電車が停まっていた。
右:北口改札の入口。表示は少し大きくなったが、やはり愛想がない。

この散歩は2010年4月14日に歩いたものです。

夢の残骸(後編)

 やはり昨夜の女からだった。僕は携帯の番号を彼女に教えた覚えは無かったのだが、そこはほれ、どれだけ矛盾があろうとも夢の中では当然のように処理される。

「一緒に出るから待ってて」

「え?」

「いいでしょ?」

「まあ・・・いいけど」

「じゃあ、10分後に」

「今どこ?」

 通話は切れた。僕は煙草に火を点けて、門に寄りかかって女を待つ事にした。

  --

 そして映像は飛んで、僕らは何処かの食堂に居た。いや、食堂と呼ぶにはかなり変わった店の作りをしていて、店の片側に厨房があり、それを囲むようにしてカウンター席がある。そしてその背後の壁は全て格子窓が覆っており、陽光が差し込んでいる。内装は殆どくすんだ木材で、背後の窓の向こうは線路であるらしい。光溢れる中を時折列車がガタゴトと通り過ぎる。
 僕らは会話もなく、目の前の定食を平らげる事に専念していた。二人とも生姜焼き定食。肉汁とタレが千切りのキャベツに滴っている。僕は豚肉でキャベツを巻くようにして箸で掴み、勢いをつけて頬張った。隣を窺うと、女も同じようにして食べていた。生姜焼きの量がとても多い。僕らは黙ったまま咀嚼を繰り返した。

 気付くと、女が誰かと喋っていた。僕は噛み砕いた肉を呑み込みながらそちらを見遣った。50過ぎくらいの男がニヤけながら女に話しかけており、女は食べるのを止めすっかり話し込んでいる。すぐ隣で喋っているのに、僕には内容がよく聞こえなかった。何故だろうか。夢だからとしか言いようがない。
 僕はもうそちらを見ない事にした。何だか腹に違和感を感じるのだ。それは勿論嫉妬と呼ばれるものである事は承知していたが、思い入れの無いはずの女の事で嫉妬する自分を受け入れたくなかったのかも知れない。僕は女が食べかけている定食に手を伸ばした。

 --

 僕らは列車のボックス席に向かい合わせで座っていた。明るい空の下、瞬く間に流れていく風景をぼんやりと眺めながら、お互いに全然別の事を考えているようだ。女が何を抱え、何を思いながら生きているのか。僕には見当もつかないが、その横顔が綺麗だと思った。

「ねえ」

「なに」

「これからどうするの?」

「・・・」

「どうすんの?」

「取りあえず行く当てはない」

「じゃあなんでこの列車に乗ったの?」

「わからない」

 列車はひた走り、やがて視界に海が広がった。

夢の残骸(前編)

 何だか夢をよく見るようになってしまった。と言っても印象的なものは1・2週間に一度くらいだけど、以前は殆ど見なかったのでそれと比べれば頻繁に見ているように感じる。原因は最近睡眠時間が安定していないからだろうか。それとも陽気のせいだろうか。
 今回は少し長いので二度に分ける。夢見ていた時間は短いし、相変わらずイメージが散漫なのだけれど、それを無理矢理繋げていたら長くなってしまった。取りあえず記しておく。

 ★

 目を覚ました時、僕は雑魚寝状態の和室の部屋で布団にくるまっていた。和室と言えども入口は一つで、8畳ほどの部屋の突き当たりから右に折れるようにまた8畳が在る、不思議な間取りの部屋であった。僕は丁度曲がり角に当たる部分に寝ており、近くにはブラウン管の小さなテレビが在った。外はまだ暗く真夜中であるようだ。僕は再び目を閉じる。

 半覚醒の僕の耳に、何人もの人が何度も部屋を出たり入ったりしている物音が聞こえた。

 くぐもった人の声が小さく聞こえる。薄目を開けると、人工的な光が目を打つ。誰かがテレビを観ているようだ。しかもその音声から察するにアダルトヴィデオのようである。迷惑に思いながら僕は被っていた布団を引き剥がした。意外な事にアダルトヴォデオを観ているのは女であった。

「あの・・・」

「なに?」

「なんでそんなの観てんの?」

「さあ」

 女は20歳を少し過ぎたくらいだろうか。短い髪の毛、額に垂れた前髪の奥の眼差しは半ば閉じていた。僕は画面に目を遣る。そこには隣にいる女と同じ顔の女が喘ぐ姿が映し出されていた。

「ねえ、これ君なの?」

「そう・・・去年のわたし」

「そう」

 僕はそこまで訊いたところで急に眠けを感じ、布団を被り再び目を閉じた。

 --

 再び目を覚ますと、女が同じ布団で寝ていた。僕は女の身体を引き寄せ、そのまま眠りに落ちた。

 --

 閉じた瞼の向こうに明るさを感じ、目を開ける。朝のようだ。傍らに女の姿はない。起き上がって部屋の中を見廻すと、布団に埋もれた人の身体が点在する。起きて身支度をしなければ。これから何処かへ行く当てがあるようには自分自身思えなかったが、とにかく此処を出なくてはならないようだ。僕は脱ぎ捨ててあったジーンズを穿きネルシャツを羽織って、デイパックに荷物を詰め始めた。
 すると、部屋の反対側で同じように荷造りをしていた男が声をかけてきた。

「なあ」

「なに」

「おまえと一緒に寝てた女、連れか?」

「いや、違う」

「じゃあ何だよ」

「知らないよ」

「何だそれ。ちぇ。まあいいや」

 僕が荷物を持ち立ち上がって部屋を出て行こうとすると、先ほどの男が再び話しかけてきた。

「あのさあ、あの女、俺前にも見た事あるぜ」

「この町で?」

「いや、此処じゃない。もっと西の方」

「何してた?」

「なんかなあ、繁華街だったんだけど、暴れてた」

「暴れてた?」

「そう。最初酔ってるのかと思ったけど、そうでもなさそうだった。とにかく絡んでくるおっさん達相手にまともに立ち回ってたよ。そこら辺にある物片っ端から投げつけたりしてさ、走り回ってた」

「ふうん、何だろな」

「何だろうなー。でも、もう関わらない方が良いかもよ? 何だかジャンキーっぽいし」

「そうかな?」

「ああ、そう思うね」

「詳しいね」

「似たようなの何人も知ってるからな」

「そうか」

「そうだよ」

「ありがと」

 僕は部屋を出て玄関まで歩いた。ひどく安普請な旅館で、何故こんな所に泊まろうと思ったのかまるで思い出せない。そして玄関を出て表の通りに差し掛かったところで携帯電話が鳴った。

夢の残骸

 昨日の朝はごく短い、全く違う夢を二つ見た。短いがとても印象的な映像だったので記しておく。

 ★

 僕は田園の緑がたゆたう風景を眺めながら、機関車に乗り、長い時間をかけてとある町へ向かっていた。夢の中の設定では僕の生まれ育った町であるらしい。その町は広大な平野部を走る国鉄線の行き止まりで、何故そんな開けた場所を終着駅にしたのかよく判らないが、とにかく線路は其処で終わっていた。果たして駅に着いてみると、そこには乗降の為のホームなど無く、ただ芝生の生い茂った地面が拡がっていた。出迎えらしき数十人の老若男女が線路を囲み、走り回る子供達の手には風船が握られていた。何か特別な日だったのだろうか。僕にはそんな覚えは全くないし出迎えに人が来る予定もなかったが、とにかく僕は他の乗客と共に列車を降りた。
 少し離れた場所に立ち、談笑している二人の女性に目を止めた。見覚えがあると思ったら一人はテレビ等でよく見かけていた女優で、一人は中学の同級生であった。二人はそれぞれ子供連れで、走り回る子供達に時折声をかけながらも話し続けていた。何故あの女優がこんな所に居るのだろうか。僕は不思議に思いながら駅舎へ向かう。駅舎は10メートルばかり離れた場所に在り、ペンキで白く塗られた木造の平屋であった。形ばかりの改札を抜け、駅前に拡がる街並みを見て僕は愕然とする。僕の記憶にあるのは古ぼけたそれであったが、今目の前に拡がっているのは店も住宅もどれも皆新品で、どこかオモチャっぽい雰囲気のものばかりであった。

 ★

 僕は夜の街に立っていた。周囲に灯りは無く真っ暗だ。ずっと向こうの地上の灯りが背景となり、目の前に黒々とした高架線路の影を浮かび上がらせていた。僕は不安で堪らなかったが、自分の足元すら見えないので動く事が出来ない。吹き抜ける冷たい風は体温を奪い、僕は堪えられずにうずくまる。すると、風の乗って笛の音が聞こえて来た。するすると流れるように音は僕の周りを駆け抜ける。そして突然鋭い音で笛が鳴ると、彼方此方に1メートルから2メートルくらいまでの、様々な大きさの縦長の赤提灯がぬっと現れた。提灯には、勘亭流の文字と梵字の間くらいの読めない文字が黒く描かれている。それらの灯りは朧気で僅かに揺れている。人間が掲げているのだろうか。そして相変わらず周囲は真っ暗なままだ。
 僕は暫くその光景を眺めていたが、堪えきれずに一番近い提灯へ向かって歩き出す。

 ★

 そこで目が覚めた。
  • Last modified : 2010-04-20 22:13
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