DOG ON THE BEACH
東京湾景 / 吉田 修一
花と甲羅
帰り道。線路沿いの屋台の赤提灯の下に、同じマンションに住む女が座って酒を飲んでいるのを見かけた。屋台のオヤジは嬉しそうに相手をしている。週に一度、この光景を目にする。時折、この屋台の常連らしき老いた男が同席している事もあるが、何れにしても彼女は何くれとなく男達の世話を焼いている。老男が帰ると言い出せば「そんな事言って、帰る家あんのー?」などと引き留めたり、屋台のオヤジにタオルや灰皿を手渡しながら話かけたりしている。そのうちに彼女が屋台を手伝ったりするのではないか、と内心思っている。そんな光景を見遣りながら、僕は横を通り過ぎているのだが、たまにふと、彼等の中に割り込んでみたくなる。しかし、だ。彼等の間には既に完成された何かがあるような気がしてならない。例えば赤と緑の補色の関係のような。僕がそこに割り込んでしまえば、補色でバランスを取った画面構成の中に不躾な色を混ぜるようなものだ。捨て色になるつもりもないし。僕は黙って通り過ぎるべきである。
長崎乱楽坂 / 吉田 修一
あれから " パーク・ライフ " をそれなりに読み、次に読んだのがコレ。長崎弁、というか九州全域で通じるであろう言葉で綴られている。そういう僕の身体にも染みついた言語で語られているせいか、描写が非常に生々しく感じる。例えば、下履き一枚姿の男達の酒宴の描写があるが、その場所ではどんな匂いがしてどんな音が聞こえてどんな温度を持っているのか、僕はまざまざと感じる事が出来る。子供の頃に見た、父や祖父や叔父やその友人達の姿が重なる。彼等の表情や肌の色、子供だった私には窺い知れない秘密めいた痴話。酒が飲めなければ一人前だと認めないと言っては、子供の僕に半ば強制的に酒を勧める大人達。挙げ句には煙草まで吸わされる。しかし僕はそれを喜んで受け入れていたような気がする。今でも嫌な思い出としては残っていない。僕はとうの昔に、今度はそれらを子供らに見せつける立場になっている訳だけれども、何だか遠い話のように感じている。僕は未だに彼等には追いついていない。それが少し悔しい。
Billy the bop smokers
ハロゲンのスポットなんか点けてると熱くて仕方がない。夜になって酒を呑み始めると元気になって来るというのは、よくない兆候のような気がする。そもそも殆ど何も食べずに酒と煙草だけで過ごしているのがマズい。蕎麦でも食べようかな。あ、でもさっき歯を磨いてしまったし。というか、さっきまで今日は27日だと思い込んでいた。・・・さて、これから何をしようか。扇風機の風に煽られ、煙草の煙は漂う暇も無く吹き消される。
負け犬のバラッド
相手の女性の事も、その女性の相手の事も今でもハッキリと覚えてはいるのですが、それ書くと悲壮感漂うテキストになってしまうので書きません。適当に誤魔化しつつ書く事にします。その時の僕はよほど切羽詰まった顔をしていたのでしょう。相手の女性は幾分怯えていたようです。それでも信じられないくらいに冷静な声と言葉で拒否された夜、僕は例の行動に出た訳であります。
その時何故 Doors を選んだのかは自分でもよく解りません。その当時(凡そ10年前)は、それまで英米のロック・ミュージックかブラジリアンかキューバンの音楽、若しくはクラシックしか聴かなかった僕が、仕事場の同僚の影響で邦楽を聴き始めた頃だったと思います。Doors を選んだのは一番馴染みがあったからでしょうかね。とにかく周囲を憚る事なくシャウトする必要が在ったので Doors はうってつけだったのです。
あれ。・・・考えてみれば僕は今でも The Doors のアルバムはアナログでしか持っていません。という事は・・・・半泣きのままで、ジャケットからビニール盤を指が盤面に触れないように取り出し、丁寧にブラシで盤面を拭い、ターンテーブルの上にそうっと置いてから、これまた細心の注意を払いながら針を落としていたのでしょうか。しかも 1st のA面が終わればB面へ、それが終われば 2nd のA面へと・・・そんな事をやっていたのでしょうか。おかしい。おかしいけど、どう考えてもそうしないと聴けないハズです。その姿を想像すると笑えます。何をやっているのでしょうか。
勿論その時の僕は素面ではありません。帰りに酒屋に寄っています。ビールやワインではお話にならないし、第一酒を味わいたい訳ではないのです。しかも Doors 聴くつもりなんですからウィスキーしかあり得ません。しかも米国製の。しかしジャック・ダニエルズやワイルド・ターキーは高いし、フォア・ローゼスは売り切れてました。残るは・・・残っていたのはジム・ビーム。洒落ではありませんよ。選択肢が少なかったのです。仕方ないじゃないですか。
そんな感じでジム・ビームをラッパ飲みしながら、Doors でシャウトしていた訳です。こんなにも悲しい酒を呑んでいるのですから、今夜は朝になるまで呑んでドロドロの体で死んだように眠るのだろうと思っていましたが、予想に反して午前1時になる前には急激な眠気に襲われ、慌ててビニール盤を元在った場所にキチンを仕舞い、ターンテーブルの電源を落としてから眠ったようです。実に健康的です。普段と何ら変わりはありません。それまで僕は、自分は結構感情を引きずるタイプだと思いこんでいたのですが、翌朝の私はスッキリと目が覚め、何事も無かったような顔で仕事に出かけました。ま、言ってみれば儀式みたいなもんですかね。この事にはこれ以上時間もエネルギーも費やしたりしませんよ、という。拍子抜けするほどに醒めてますね。
その時何故 Doors を選んだのかは自分でもよく解りません。その当時(凡そ10年前)は、それまで英米のロック・ミュージックかブラジリアンかキューバンの音楽、若しくはクラシックしか聴かなかった僕が、仕事場の同僚の影響で邦楽を聴き始めた頃だったと思います。Doors を選んだのは一番馴染みがあったからでしょうかね。とにかく周囲を憚る事なくシャウトする必要が在ったので Doors はうってつけだったのです。
あれ。・・・考えてみれば僕は今でも The Doors のアルバムはアナログでしか持っていません。という事は・・・・半泣きのままで、ジャケットからビニール盤を指が盤面に触れないように取り出し、丁寧にブラシで盤面を拭い、ターンテーブルの上にそうっと置いてから、これまた細心の注意を払いながら針を落としていたのでしょうか。しかも 1st のA面が終わればB面へ、それが終われば 2nd のA面へと・・・そんな事をやっていたのでしょうか。おかしい。おかしいけど、どう考えてもそうしないと聴けないハズです。その姿を想像すると笑えます。何をやっているのでしょうか。
勿論その時の僕は素面ではありません。帰りに酒屋に寄っています。ビールやワインではお話にならないし、第一酒を味わいたい訳ではないのです。しかも Doors 聴くつもりなんですからウィスキーしかあり得ません。しかも米国製の。しかしジャック・ダニエルズやワイルド・ターキーは高いし、フォア・ローゼスは売り切れてました。残るは・・・残っていたのはジム・ビーム。洒落ではありませんよ。選択肢が少なかったのです。仕方ないじゃないですか。
そんな感じでジム・ビームをラッパ飲みしながら、Doors でシャウトしていた訳です。こんなにも悲しい酒を呑んでいるのですから、今夜は朝になるまで呑んでドロドロの体で死んだように眠るのだろうと思っていましたが、予想に反して午前1時になる前には急激な眠気に襲われ、慌ててビニール盤を元在った場所にキチンを仕舞い、ターンテーブルの電源を落としてから眠ったようです。実に健康的です。普段と何ら変わりはありません。それまで僕は、自分は結構感情を引きずるタイプだと思いこんでいたのですが、翌朝の私はスッキリと目が覚め、何事も無かったような顔で仕事に出かけました。ま、言ってみれば儀式みたいなもんですかね。この事にはこれ以上時間もエネルギーも費やしたりしませんよ、という。拍子抜けするほどに醒めてますね。
In Concert / The Doors
The Doors の音って、基本的に自分が在る程度イッちゃってないと怖いと感じるんですが、このライヴアルバムなんて更に怖いです。4人のメンバーも観客も有り得ないくらいにテンションが高いです。どう考えてもこいつら、素面じゃありません。どうにかコンサートスタッフだけは冷静さを保っている訳です。「 アーユー フィール オーライ?」「イ”エ”ー!」たったそれだけの MC の後、淡々とライヴは始まりますが、演奏が半端ないです。ギターリフが脳味噌を掻き回してくれます。Jim の絶叫が夜を切り裂きます。何処かで読んだ記事には、The Doors のライヴはさながら宗教的体験だと。観てみたい気もしますが、観たくない気もします。因みにこのアルバムは一つのライヴを収録したものではなく、ブックレットを読む限りでは 1968〜1970年 に Los Angeles, New York, Boston, Philadelphia, Detroit, Copenhagen で収録した音源の寄せ集めみたいですね。そう言えば昔、女に振られた夜に、というか真夜中に The Doors の曲を爆音でかけながら、酔いつぶれるまで大声で歌っていた事がありましたっけ。もう引っ越して居ないけど、当時のお隣さんご免なさい。そして今日、陽が傾きかけた頃、久しぶりに聴いていたのですが、怖いと感じるどころかノリノリでした。
Can't take my eyes off you
しかしそこで問題になるのが邦訳です。" 君の瞳に恋してる " 。何だか平和過ぎて巧い意訳だとは思えません。全くニュアンスが違うではないですか。第一恥ずかしいです。I can't take my eyes off you. 僕はあなたから目を逸らす事が出来ない。この直接的なテンションが受け継がれていません。
追記
ご指摘を頂きました。オリジナルはこの人。レビューを読む限りでは、かなり良さそう。これは是非買わねば。いやしかし、最近の僕は CD 買い過ぎ。ストレス発散を理由に買い漁っているような気がする。あーでもでも、今タワーレコーズ安いし・・・・嗚呼。










