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DOG ON THE BEACH

山の郵便配達 / 霍 建起

  • 2004-10-15 Friday
  • Category - Art
  • Tag -
 前回紹介した「ションヤンの酒家」と同じ監督の作品。この映画の主人公も「ションヤン〜」と同じく、傍目から見れば貧しく困難の多い生活を選び取る。彼等は雲上に見える経済的な豊かさよりも、家族や周囲の慣れ親しんだ人達・場所を選び取る。不確かな階段を登るよりも、確かな思い出と戯れる事を選び取る。どちらの映画にしても、現在の中国の近代化から身を翻して生きて行こうとしている人間を描いている。勿論、それについてどうこう書くつもりはないが、皆疲れているのだな。と、そう思ったりする。
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ヘルタースケルター / 岡崎 京子

 誰か(それが特定であれ不特定であれ)の視界から外れる事、つまり忘れられる事への恐怖は、人に驚くほどの刹那的な行動をとらせてしまう。勿論個人差はあるし、それとは逆に視界から外れる事に安堵し、それを望む人も居る。これらを「欲望」という言葉で表すのは少々違和感があるのだが、本作に倣って「欲望」としておく。欲望に駆られた人間の姿は、グロテスクである。自分の欲望以外には何も見えなくなっているのだから当たり前だが、周囲に不安や不快感を呼び起こして、それでも闇雲に前へ進もうとする。「欲望」を止める事は出来ない。何しろ「欲望」という力に「人間」がドライヴされているのだから。周囲の人間はただ呆然とたちすくみ、眺めている他はない。その姿を見る事に耐えられない人間は、目を、耳を塞いで時が過ぎ去るのを待つのみだ。

 この本の最後。To be continued. になっているが、岡崎京子はこの後の構想があったのだろうか。あるのならば是非読みたい。この本は事故に遭う直前に執筆されていたものらしい。彼女の回復の吉報も耳にしているので、何年後になるのかは判らないが、首を長くして待つ事にしよう。因みに「欲望が人間をドライヴする」という行は、何処かの小説の一節からのパクりだ。

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Asexual

 最近知りました。Asexual に関連する Web サイトでは以下のような定義付けがされているようです。
男性および女性のどちらも性愛の対象としない人、もしくは性欲がない人。
 僕自身は、淡泊に見られがちですが、異性を性対象とするヘテロです。では何故 Asexual に興味を持つのかというと、Asexual の定義を知って、昔、近くに居た女性の事を思い出したからです。その人が性的な事柄に対して不快感を持っている事には気付いていました。レズビアンではなかったと思うし、男と付き合ったりはしていましたが、彼女の言動からは性的な言葉を聞いた事は殆どなく、たまにあっても吐き捨てるような感じでした。それに、相手に対する独占欲などは全くないようで、反対に相手から独占される事を酷く嫌っていました。好きという感情は持っていても、恋愛感情は持てなかったようです。本人はそれらが受け容れられない事を悩んでいましたし、当時の僕としては理解する事が全く出来なかったので、いつも話は平行線を辿るばかりでした。

 そんな事を思い出しながら、きっと彼女のセクシャリティはこういう事だったのだろうな、と思っていたのでした。何れにしても、僕が傍らから見ていてそう思っただけで、実際のところは彼女自身にしか判らないでしょう。疎遠になってしまったので、現在の彼女の事は知りませんが、その当時にこの定義を知っていれば、彼女はもっと楽に生きていられたのかも知れません。マイノリティの定義付けは、下手をすればマジョリティからの隔離に繋がり兼ねません。しかし、その定義の御陰で少しでも自分の性(または生)を認める事に役立てば、それは良い事なのではないだろうか、と思っています。

参考サイト:Asexual-Japan
余談ですが、上記のサイトで紹介されていたこのコラムが大変面白いです。馬場秀和という方のコラムなのですが、馬場氏ご夫婦は付き合い始めから、同姓・結婚と、その間に一度も性交渉がないそうで、その事に関して書かれています。しかしながらそんな切実な事柄について書いているのに、笑えます。腹が捩れるくらいに笑えます。そしてとどのつまりはノロケています。当人は相当悩んだハズですが、幸せそうです。

愛の生活 / 岡崎 京子

 せっかく一日部屋に籠もるのだから、この機会に諸々の音源を iTune に放り込んでおこうと棚を物色している時に、偶然目についたのがこの本。どんな内容だったのか思い出せないので何となく読み始めてみれば、それはもう嫌になるくらいにストライクな内容でした。ま、しかし此処では内容は割愛。薄暗いし、何となく恥ずかしいので。とか言って全然薦めていないので、僕のアフィリエイトは全く意味がない。

 誰かの声に耳を塞いだり、聞こえない振りをしたり、片手で受け止めてしまったり、両手を差し伸べたは良いが途中で引っ込めてしまったり、後悔する事なんて数限りなく在る。この本の最後のモノローグにあるように、二人同じ風景を見ながら毎日を過ごしていければ良いと思っているのだけれど、これまでの失敗を顧みると、それだけで良い訳ではないのかも知れない。よく分からない。しかし自分と同じ風景を見ている誰かが隣に居てくれるのは、とても幸せな事のように思える。

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Transformations / Kaori Muraji

  • 2004-10-06 水曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 名門デッカ・レーベル移籍の第一弾。しかしそれがどうしてこういう選曲になったのか・・・。とか言いながら、実はボーナス・トラックの「 Fragile 」目当てで買いました。FM で聴いてとても気に入ったのである。彼女のこれまでのアルバムは一応全部聴いていて、何れにしろ買うのだけれど。「 Fragile 」は言わずと知れた Sting の曲。それを聴いていて、この曲を誰かギターだけで演らないかなあ、とか以前から思っていたので思わず飛びついたという感じ。余韻たっぷりの原曲と比べれば随分とあっさりした感じ。

 彼女の奏でる音はとても優しく、その音を枕にいつまでもうたた寝したくなる。でも、そういう意味ではロドリーゴを演った「パストラル」とか、究極の午睡音楽の「オンブラ・マイ・フ」が収録された「シンフォニア」の方が個人的には好きである。

 しかし彼女も含め、最近のクラシック界はアイドル並みのルックスの人が多く出て来てますね。そうでないとやはり売れないからなのだろうか。

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ションヤンの酒家 / 霍 建起

  • 2004-10-03 日曜日
  • Category - Art
  • Tag -
「急激な都市開発が進む重慶の旧市街を舞台に、一軒の屋台を営む女主人・ションヤンが、明日の身に怯えながらも、身に降りかかる不幸にめげず懸命に生きる姿を描く。」以上は Amazon のエディター・レビューより。詳しいストーリーについてはカスタマー・レビューを読んで下さい。

 相手が一体何を大切に思いながら生きているのか。それは知ろうとしなければ到底解らないし、それをせずに一方的に何かを言っても、しても、それは(例えそこに好意という元手が在ったとしても)愚かな傲慢でしかないし、果ては精神的な暴力となるのだな。と、この映画を観ていてそんな事を思った。良い映画だった。また観よう。
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此処は既に彼方

 浅草線に乗ると、いつもの横並びのシートではなくボックス席だった。僕は進行方向に向かって座り、暗がりを見るともなしに見ていた。浅草駅からは乗客が増え、僕の向かいの席には韓国人の女性が二人座った。何も見た瞬間に彼女達が韓国人だと判った訳ではなく、韓国語を喋っていたからだ。二人揃ってハンドバッグを手に持ち、更に雷門の紙袋を持っていた。見たことのない機種のデジカメを取りだして何やら言い合っている。一瞬だけ東京案内のガイド役を買って出ようかと思ったが、実際に僕がやったのは死んだふりだった。いや、まあ、基本的に女性と同席すると緊張するので。
 僕は目を閉じ、最近聞き慣れてきた言葉の発する音を聴いていた。何となく安心する抑揚だ。これが日本語だと嫌でも意味が頭の中に入ってくるし、英語だと中途半端に意味が過ぎるので聞こうとしてしまう。全然解らない言語だと聞き流せるので楽だ。

 浅草橋で中央線に乗り換える。僕の隣に立っていた大学生風の男三人の会話が耳に入ってくる。その中の一人は昨日も今日も明日も外せない飲み会があって、昨日の時点でどうにも金が足りなくなってきたので、昨夜午前3時頃に西東京の実家に戻り、朝一でばあちゃんの家に出向いて小遣いを貰うだけ貰ってそのまま帰ってきたそうだ。その話を聞いていると何だかムカついて来て、その黒縁の眼鏡を叩き落としてやろうかと思ったが、自分には関係のない人々にまつわる戯れ言として忘れる事にした。

 水道橋で降り、目的の風景を探す。もっと一般人には入り難い場所から見た風景だとばかり思っていたのだが、予想に反してあっさりと見つかった。聖橋の上だ。秋葉原に向かって橋の上から見下ろすと、外堀と中央線と丸ノ内線と千代田線が立体的に交差している光景を見る事が出来る。僕はこれを見る為に来たのだった。此処に来る事が目的の場所なのではなく、擦れ違う事が目的である場所。通常ならば誰も振り返らない。そんなこの場所を私は見たかった。
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