July 2007
蛮行伝 その二
- 2007-07-25 Wednesday
- Category - People
- Tag - philosophy / psychology / sexuality
暫く前の話。恋人同士なのか夫婦なのか判らないが、見慣れない顔。上気したような表情で男が女の肩を抱く。肩を抱くとは言っても、例えば年老いた白人の夫婦が愛情と労りを持ってするような雰囲気ではない。飽くまで性的快楽を求めるような手や指の動きである。昨夜のセックスがそんなにも良かったのか。それとも玄関を出る寸前までヤっていたのだろうか。射精後の男がそういつまでもそんな状態でいられるとは思えないので、恐らく時間切れで中途で止めてきたのだろう。
女が許せば、きっとその場でヤり始めるのではないかと考えながら眺めていたら、女は肩に乗せられた男の手を払いのけた。惚けているのは男の方だけらしい。興奮で脳味噌が溶けているのだろう、男はその後もしつこく肩を抱こうとしたり腰に手を回したりしていた。
早朝の満員電車の中では、殆どの人々は内心イラつきながらも吊革に捕まっている。そんな中で欲望に顔を歪ませている人間が人目を憚らずに行為に及んでいれば、そりゃあもう不適切を遙かに超えて不快である。このまま男が諦めずに行為を続けた場合、女がキレるのが先か、それとも他の乗客がキレるのが先か一体どっちだろうな、などと考えている内に電車は僕が降りるべき駅に到着した。
因みに僕は、人目の在る場所で性的な行為をするのが嫌いである。手を握ったり腕を組んだりするのが限界だ。僕の方からはそれ以上は絶対にしないし、もし相手がそういう事をし始めたら怒りすら覚える。それとは逆に、二人きりの空間でなら何をしようが大抵の事は平気なのだが。
女が許せば、きっとその場でヤり始めるのではないかと考えながら眺めていたら、女は肩に乗せられた男の手を払いのけた。惚けているのは男の方だけらしい。興奮で脳味噌が溶けているのだろう、男はその後もしつこく肩を抱こうとしたり腰に手を回したりしていた。
早朝の満員電車の中では、殆どの人々は内心イラつきながらも吊革に捕まっている。そんな中で欲望に顔を歪ませている人間が人目を憚らずに行為に及んでいれば、そりゃあもう不適切を遙かに超えて不快である。このまま男が諦めずに行為を続けた場合、女がキレるのが先か、それとも他の乗客がキレるのが先か一体どっちだろうな、などと考えている内に電車は僕が降りるべき駅に到着した。
因みに僕は、人目の在る場所で性的な行為をするのが嫌いである。手を握ったり腕を組んだりするのが限界だ。僕の方からはそれ以上は絶対にしないし、もし相手がそういう事をし始めたら怒りすら覚える。それとは逆に、二人きりの空間でなら何をしようが大抵の事は平気なのだが。
業火
- 2007-07-17 火曜日
- Category - People
- Tag - philosophy / psychology
社会人となって十数年、職場で色々な人と接してきた。時々思うのは、同じ共同体内で上司や先輩の悪い部分を、それはもう見事に後輩が受け継いでいるのは何故だろうという事。自分が同じ事をされて嫌だったろうに、何故かしらそっくりそのままの事を目下の人間に対して遂行しているのである。不思議だ。その昔に何処かで読んだ軍隊を例に出した加虐のメカニズムを思い出す。
僕自身はそんな事をしているつもりはさらさらないのだが、気付いていないだけで実は同じような事をしているのかも知れない。そしてこれは何も仕事上の共同体だけの話ではなく、勿論家族という共同体の中でも見受けられると思う。現代の東京などでは有り得ない父権の強い家庭であるとか、男尊女卑の影が色濃く残っている家庭だとか、そんな家庭に育った人間は現代社会に於いてもその名残りを引きずっている。かく言う僕は明らかにそういう価値観の元に育っている。
思春期を迎えた頃から僕はそういう価値観が嫌いであったので、出来るだけそれに逆らうような形で生活してきた。でも実際のところ、他人の目に僕がどう映っているのかは判らない。たまに自分の行動した事を後から思い返せば、父のかつての行動が思い起こされたりするので、何かしらを引き継いでいるとは思う。業を引き継ぐ、もしくは継承するというのはこういう事だろうか。
少し話は逸れたが、こんな事を考えていると、人の世というものは日々ロクでもない方向に進んでいるような気がしてならないのだけれど、想像するよりも多少はまともな社会生活が営まれているように見えるという事は、業の継承とは別な流れが引き継がれているのだろうか。
僕自身はそんな事をしているつもりはさらさらないのだが、気付いていないだけで実は同じような事をしているのかも知れない。そしてこれは何も仕事上の共同体だけの話ではなく、勿論家族という共同体の中でも見受けられると思う。現代の東京などでは有り得ない父権の強い家庭であるとか、男尊女卑の影が色濃く残っている家庭だとか、そんな家庭に育った人間は現代社会に於いてもその名残りを引きずっている。かく言う僕は明らかにそういう価値観の元に育っている。
思春期を迎えた頃から僕はそういう価値観が嫌いであったので、出来るだけそれに逆らうような形で生活してきた。でも実際のところ、他人の目に僕がどう映っているのかは判らない。たまに自分の行動した事を後から思い返せば、父のかつての行動が思い起こされたりするので、何かしらを引き継いでいるとは思う。業を引き継ぐ、もしくは継承するというのはこういう事だろうか。
少し話は逸れたが、こんな事を考えていると、人の世というものは日々ロクでもない方向に進んでいるような気がしてならないのだけれど、想像するよりも多少はまともな社会生活が営まれているように見えるという事は、業の継承とは別な流れが引き継がれているのだろうか。
蛮行伝
僕は平日はいつも同じ時刻の電車に乗っている。通勤快速も止まる駅なのにわざわざ普通電車に乗っている。通勤快速は基本的に鮨詰めの状態なので乗りたくないし、普通電車であってもいつも僕が乗っている時刻の前後の電車は人が多い。なのでその時刻の電車に乗らなければどうあっても嫌な目に遭うのである。
そんな風にして何年もの間同じ電車に乗っていると、何年も前から見かける同じ顔というのも存在する。勿論人は動くものだし、何年かすればそこに居合わせる人々はすっかり入れ替わるのだけれど、1・2年は居たりするのだ。毎朝同じようなメンバーに囲まれて電車に揺られていれば、自然と「あ、この人は良い匂いがするからいつも隣に立とうかなー。」とか「あ、こいつは挙動不審だから嫌な目に遭わないように出来るだけ離れて立つ事にしよう。」などと思ってくるものである。
例えば、僕と同年代であろう女性というか女が次の駅でいつも同じ車両に乗ってくるのだが、数年前の事、揺れる車両によろめいてその女の足を踏んだ事があった。その女は非難がましい目で僕を睨み付けながら「いったーい!」と殊更にデカい声で叫びやがった、その余りの反応に僕は素でムカついて「すみません。」と小声で謝った後は無視していた。
その次の日から現在まで同じ車両に乗り合わせるのだが、時々見かける彼女は何というか自分の欲求のみに正直な人で、空いた座席やスペースを見つけるや否や、既に彼女の網膜にはそれしか写っていないらしく、他の乗客を蹴散らすような勢いで突進する。そして無事に領土を確保すると何事もなかったように鞄から本を取り出し読み始めるのである。しかしまあ、そんな事をするオバハンはよく居るので、大して気にしていなかった。
しかし彼女の場合はそれだけではなかった。普段は本を読んでいるがたまにイヤフォンで音楽を聴いているのを見かける。ジャカスカと音漏れしていなければ普通の行為だ。何ら問題はない。ただ彼女は違った。一体何の音楽を聴いているのかなんて知りたくもないが、なんと彼女はヘッドバンギングを始めたのである。ラッシュ時の電車内で。固く目を閉じ、唇は真一文字で、長い髪の毛を振り乱しながら一心不乱に、ガンッガンに首を縦に振っていた。もうそうなると迷惑だとかそういう問題ではない。怖いのだ、その存在が。何だか見てはいけないものを見たような気もしてくる。
明日も同じ車両に彼女が乗ってくるかと思うとドキドキする。何というか、彼女は余りにも不適切だ。
そんな風にして何年もの間同じ電車に乗っていると、何年も前から見かける同じ顔というのも存在する。勿論人は動くものだし、何年かすればそこに居合わせる人々はすっかり入れ替わるのだけれど、1・2年は居たりするのだ。毎朝同じようなメンバーに囲まれて電車に揺られていれば、自然と「あ、この人は良い匂いがするからいつも隣に立とうかなー。」とか「あ、こいつは挙動不審だから嫌な目に遭わないように出来るだけ離れて立つ事にしよう。」などと思ってくるものである。
例えば、僕と同年代であろう女性というか女が次の駅でいつも同じ車両に乗ってくるのだが、数年前の事、揺れる車両によろめいてその女の足を踏んだ事があった。その女は非難がましい目で僕を睨み付けながら「いったーい!」と殊更にデカい声で叫びやがった、その余りの反応に僕は素でムカついて「すみません。」と小声で謝った後は無視していた。
その次の日から現在まで同じ車両に乗り合わせるのだが、時々見かける彼女は何というか自分の欲求のみに正直な人で、空いた座席やスペースを見つけるや否や、既に彼女の網膜にはそれしか写っていないらしく、他の乗客を蹴散らすような勢いで突進する。そして無事に領土を確保すると何事もなかったように鞄から本を取り出し読み始めるのである。しかしまあ、そんな事をするオバハンはよく居るので、大して気にしていなかった。
しかし彼女の場合はそれだけではなかった。普段は本を読んでいるがたまにイヤフォンで音楽を聴いているのを見かける。ジャカスカと音漏れしていなければ普通の行為だ。何ら問題はない。ただ彼女は違った。一体何の音楽を聴いているのかなんて知りたくもないが、なんと彼女はヘッドバンギングを始めたのである。ラッシュ時の電車内で。固く目を閉じ、唇は真一文字で、長い髪の毛を振り乱しながら一心不乱に、ガンッガンに首を縦に振っていた。もうそうなると迷惑だとかそういう問題ではない。怖いのだ、その存在が。何だか見てはいけないものを見たような気もしてくる。
明日も同じ車両に彼女が乗ってくるかと思うとドキドキする。何というか、彼女は余りにも不適切だ。










