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DOG ON THE BEACH

待合室

  • 2012-02-04 Saturday
  • Category - Days
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 例年よりも随分と早く花粉の飛散を身体で確認したので、行きつけの耳鼻咽喉科に本日登院してきた。この近隣で耳鼻咽喉科はその医院しかなく、評判も良いので毎年この季節にはかなり混雑している。そして今日もその覚悟で参じてみれば、待合室の患者の数がやけに少ない。お、これはラッキー。まだ時期が早いから症状が出てる人も少ないんだろうな、と思いながら受付に診察券と保険証を差し出すと、カウンターの上に何やらモニタが鎮座している。画面を見ると「現在の呼び出し番号」「現在の待ち人数」「現在の待ち時間」等の項目が表示されている。それをじっと見ていると受付の女性がチラシを差し出した。どうやらインターネット経由で、モニタに映し出されたのと同じ情報をパソコンや携帯電話で閲覧する事が出来るらしい。
 これは便利である。これまでは一度受け付けを済ませて、一二時間後に、そろそろ順番かなーという時間に再び登院する。丁度良い時もあれば、更に数十分待つ事になる事もある。そんな具合に非常にアバウトな事をやっていたのだが、このサービスを使えばほぼジャストな時間に行く事が出来て、時間の無駄が省けるというものである。世の中便利になったものだ。

 しかしながら少し残念な部分も在る。このサービスのおかげで待ち時間はほぼ無い。待合室に居るのは一人二人くらいで閑散としている。なのですぐに順番が回ってくるのであるが、そこが問題なのだ。いや、問題というほどの事でもないのだけれど、僕はお年寄りや子供やその母親や中学生や高校生の雑多な人々に混じって、明るい陽差しの中で順番を待ちながら本を読むのが好きなのである。待ち時間がほぼ無いので、その楽しみも無くなった。いやまあ、それで別に困る事はないんだだけど、少し残念である。

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 よくよく思い出してみれば、これまで通った様々な診療科目の医院の待合室は、程度の差こそあれ、どれも採光を施した部屋が多かった気がする。そして隅に誂えられた小さな本棚には、医院長の趣味であろう雑誌や、古い絵本や、時代遅れの漫画が詰め込まれていたり、金魚や小さな熱帯魚が水槽に飼われていたり、鳥籠の中でメジロが可愛らしく鳴いていたりする事がよくあった。そんな穏やかで、明るく、静かな空間は読書をするのにうってつけだったのだ。此処なら住める、とよく思ったものだ。

 仕方の無い事とは言え、そういう機会を一つ失ってしまった。うっすらと寂しい土曜日である。

退屈に呑まれる季節(前向きに)

  • 2011-12-24 土曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 昨日のエントリを書いてから思ったのだけれど、もしかして僕は自分がそうしたいからボンヤリしているのじゃないだろうか。暖かい場所で日がな一日微睡んでいたい、とそういう事を望んでいるのではないだろうか。言ってみれば、冬眠欲みたいなものなのではないか。であるなら、それはもう仕方がない。いっその事、積極的にこの堕落を推進して行った方が良いのではないかとさえ思えてきた。

 因みに昨日のエントリに書いた、実家の縁側での過ごし方は結構理想的である。惜しむらくは炬燵でない方が好ましい。炬燵だとウトウトするには少々熱すぎて疲れてしまうのだ。使った事はないのだけれど火鉢はどうだろうか。寒いだろうか。毛布にくるまっていればそれなりに過ごせると思うのだが。それに外は雪が降り積もっていて欲しいし、身近には猫か犬が欲しい。そして、微睡むのに飽きた彼(猫か犬)がソワソワし始めるので障子を開けてやると、彼は勢い外に飛び出し、積もった雪にハマって右往左往する。そんな光景を眺めながらぬる燗の酒を啜りたい。
  • 最終更新日時 : 2011-12-25 22:49:49

退屈に呑まれる季節

  • 2011-12-23 金曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 やらなければならない事、やりたいと思っている事は山ほどあるのだが、何もする気になれないってほどではないにしろ、何だかぼんやりと過ごしてしまう時間が多い。おまけにいつも眠い。寝ても寝てもやはり眠い。鬱々とした気分という訳ではなく、ただ億劫で、いろいろな事が面倒に思えて来るのだ。こういうのが冬鬱というのだっけ。そう言えばこのところ休日も部屋に引き籠もっている事が多いから、日の光を浴びていないなぁ、とそんな事を考えながら寝転がっているのだ。

 ここ何年か暮れの帰省を止してしまっているが、帰った時に、茶の間で家族と喋ったりテレビを観たりするのに飽いてくると、大抵は縁側に何故か置かれている炬燵に深く潜り込んで、半ば横になったまま、雪見障子のガラス越しに見える冬枯れた庭をぼんやりと眺めて過ごしていた。冬は忙しいからそのせいなのか、寒さのせいで風邪が治りきっていないのか、いつもそうだった。
 家族がそんな状態の僕をどう思っていたのか、特に何か言われた事もないから解らないが、末の弟も帰省した時には寝てばかりいるから、同じように平生いつも疲れているからなのだろうと思っているようだ。しかし僕には特に疲れているという自覚はなく、強いて言えば、夏の暑さに疲れてしまうように、冬の寒さに疲れているというのはありそうな気がする。この頃では、暖かいものは全て正しく善きものであるような気さえしている。ただ、寒さはこれからなので、まださして飽いてはいないと思うのだが。

 それにしても、毎日寒くて眠い。

デトロイトのパン屋(再び)

  • 2011-12-17 土曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 以前に書いた近所のパン屋が10月一杯で一旦店を閉め、先週末に新しい店舗で開業した。しかも何と僕の部屋から歩いて30秒ほどの場所に。

 店を閉める前に、店の中でレジの女性と客が話しているのを立ち聞きしたところに拠ると、新店舗はオーナーの自宅の一階を改築して、もっと手狭にやるつもりだとの事であった。喋っていたその女性は昔から居るので、僕はその人がオーナーなんだとばかり思っていたが、どうやら違うようだ。それも今日解明し、オーナーは60代くらいの女性で、そう言えば前の店舗で時折見かけていた。
 そして手狭にするという新しい店舗は、店内の面積で言えば以前よりも若干広く、以前のようにフツーの町のパン屋然とした感じではなく、漆喰風の壁材と木材を多用した、欧州の何処かの町に在りそうな、今で言えば小洒落た内外装の店である。確かにパンの種類は少し減った気がするが、僕が想像していたよりもずっと充実した品揃えだった。商売を小さくするものだとばかり思っていたが、もっと前向きな判断に拠る移転であったようだ。

 因みに、あの白いCDプレイヤーはレジテーブル横の木製の台の上に居座っていて、レイ・チャールズのCDが立てかけてあった。

雑記

  • 2011-11-28 月曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 ここ数ヶ月で改めて感じたのは、人は、僕が想像するよりもずっと自分の欲求に忠実で、その場の感情に従って発言したり行動したりする。それはもう驚くほどに。そんなにあからさまに行動して大丈夫なのだろうか。冷静に物事を判断するとか、そういう事は考えないのだろうか。と心配をしてみるものの、意外や世間は大した問題も起きずに進んでいく。

 さすがにこの歳だから、人のそういう部分を知らなかった訳でもないのに、この驚きと新鮮さは何だろうか。これまで、そういう場面に遭遇する事が少なかったのかも知れない。考えてみれば、僕は他人のそういう部分を何となく避けて生きて来たような気がする。何故避けるのかと言えば、それは面倒で疲れるからである。自分のものだけでも面倒なのに、他人のそれを受け止めるなんて至難の業だ。

 しかしこの頃では、波風の立たない人生などあり得ないのではないかと思い始めている。これまではどうにか穏やかに暮らせていたのかも知れないが、今後はそうもいかないのではないか。もしかすると波風あってこその人生なのではないか。そんな風に感じている。でもそれは単に、退屈しているだからなのかも知れない。よく判らない。

 そしてその昔、僕は波風立てて人に迷惑をかける側の人間だった事を思い出した。
  • 最終更新日時 : 2011-12-05 00:01:24

中野駅で見かけた女

  • 2011-10-29 土曜日
  • Category - Days
  • Tag -
 8月くらいに、JR中央線に乗って吉祥寺から新宿へと向かっている途中、中野駅で停車した電車の窓から見覚えのある女を見かけた。線路脇の敷地を区切る擁壁の向こう側は緩やかな坂道で、その坂の途中で女は幼子を抱きかかえて立っていた。大きな布にくるんだ幼子の顔を覗き込み、あやすかのように顔をしかめてみたり、笑ったりしていた。僕はそれと気づいてからは、まじまじとその女の顔を見ていた。確かに見覚えはあるのだが、それが誰なのか全く思い出せなかった。
 少しすると、3歳くらいの男の子を連れた男が何処からか現れ、女に近づいて何やら話し始めた。恐らく、というか確実に夫なのだろう。同世代のように見えた。二人ともごく近所のコンビニにでも行くかのような気安い服装をしていて、買い物を済ませる為に駅の側まで歩いてきたという感じだった。

 間もなく電車は動き出してしまったので、僕が見たのはたったそれだけの光景だったのだが、もしかしたら僕が知ってるかも知れない人の、僕が全く知らない部分を偶然にも覗いてしまったという経験が、何やら行き場の無い、もやもやした感覚だけを僕に残す事となった。彼女は、かつて僕が電車でよく隣り合わせていたのかも知れないし、仕事で一時期同じ場所に居たのかも知れない。今をもって思い出せないところをみると、たぶんそんな感じですれ違っただけの人なのだろう。
 それでも、そんな彼女の姿を見て、僅かながらも嬉しく思う気持ちが沸いたのは一体どういう訳があるのか。関係を訪ねられればそれはもう全く関係なく、知っているかも知れないという恐ろしく曖昧な記憶しか存在しないのに。

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 と、此処まで書いて思い出した。似たような話をDVDで観た事がある。「週刊真木よう子」という番組の第4話、しかも話が出来すぎているがその回のタイトルは「中野の友人」である。内容を説明するのが面倒なので Wikipedia から引用すると。
 2度目の公務員試験に落ち、再びバイト生活に戻った岡田。バイト先ではつり銭泥棒に決め付けられ、役立たず扱いされる日々。そんな岡田は毎日バイト後に中野にあるゲームセンターのピンボールゲームでハイスコアを出すことに熱中していた。人気のないこのゲームだが、ある日一人の女がハイスコアを更新する。一方的にライバル心を燃やす岡田は、この女の忘れ物を拾い、親近感を覚えていく。
 こんな感じで進んでいく話だが、女はある日姿を消してしまう。そしてラストの場面で、その女がそれまでの姿からは想像し難い姿で主人公の前に現れ、そしてすれ違う。

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 そっくりである。エントリを此処まで書いて思い出すとは不覚。しかしせっかくなので載せておく。
  • 最終更新日時 : 2011-10-29 22:00:49

聖なる空き地

 小学生の頃、ある夏の早朝に、僕は近所に在る草ぼうぼうの空き地で孵化したばかりの蝉を見た。隣地の人家のブロック塀に沿って雑草が高く生い茂っていて、その雑草の一様に真っ白な蝉が止まっていた。そんなものを見たのは初めてだったので、僕はハッとして、畏れながらも目を離す事が出来なかった。見慣れた成虫のカラッとした焦げ茶の蝉とは違い、ふくよかで湿り気を帯びた白い体躯は、異様で、気味が悪く、そうでありながらも何処か神々しく僕の目に映し出された。触れてみたいという欲求は当然芽生えたが、冒しがたいその姿に僕は手を伸ばす事が出来なかった。もし手を伸ばして掴んでしまったら、握りつぶしてしまうのではないかと己を訝った。僕はそのまま其処にしゃがみ込み、小一時間その白い蝉を見つめ続けた。

 そんな事書いてるうちに一つ疑問に思ったのは、小学生の僕が何故早朝に空き地へなんか行ったのかという事。今も昔も、早起きなんて決して好きではないはずなのに、その点がどうしても解せない。

 そしてつられて思い出した事に、恐らく同じ時期に僕はその空き地に自分の宝箱を埋めていた事がある。何故そんな事をしていたのか。当時は狭い借家に家族五人で住んでいて、彼らの目に触れぬ何処かに自分の大事な物を隠す必要があったのだろうか。今となってはその宝が一体何だったのか全く思い出せないが、自分の性格を鑑みると何かしら秘密を持ちたかったのだと思われる。
 その事で記憶に残ってるのは、土砂降りの雨の日に、僕は何故かその空き地で宝箱を掘り返していた。自分の事ではあるが、何の為なのかは知らない。恐らく。自分の宝が其処に存在する事を確かめたかったのだろう。そして、それと同じ理由で、早朝を選んで宝箱の無事を確かめに行った際に白い蝉を見つけたのではないだろうか。ただの空き地に過ぎないが、自宅と小学校、そしてそれを結ぶ通学路のエリアが世界の全てであった僕にとっては、空き地は特別な場所であったのだろうと想像する。
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