DOG ON THE BEACH
手のひらの気配
いささか朦朧とした気分で帰宅。郵便受けに少し北の方に住む友人から封筒が届いていた。いつもならば表裏の表記は印字だが、今回は珍しく直筆だ。しかも彼の場合、同封されてくるのは言葉ではなく銀色のディスクであるのが殆どなのに、今回は何やらムックリと膨れている。訝しく思いながらも開封してみると、そこには別な友人の膨れた封筒が、メモと共にしっかりと折りたたまれて入れてあった。メモは僕に封筒を贈ってくれた友人の直筆(初めて目にする)で必要最小限の文章。内包されていた別な友人の封筒を開封して出てきたのは画像の阪神煙草。どういうつもりなのか、さっぱりと判らないが何となく笑えた。封筒の中を更に覗いてみると、ひん曲がった葉書と便箋が入っていた。便箋と書いたが実は病院のアンケート用紙だ。彼が入院していた事は知っている。そうか、その時に書いた手紙なんだな。そう考えるととても楽しい。その変わり種の便箋二枚に、見た事があるハズはないが何処か見覚えのあるような筆跡で言葉が綴られている。便箋の最後にはその友人の名が署名されていた。本名の読みは知っていたが、文字を見るのは初めてだ。良い名前だ。同じく同封されていた葉書は暑中見舞いであるらしい。そう手紙に書いてあった。クレヨン画だ。
僕は今、阪神煙草を前に腕組みしている。吸おうかどうしようか迷っているのだ。吸ってしまうのは勿体ない気もするが、僕はそれがどんな高価な物であっても、使わない物を置いておく事に苦痛を感じるタチだ。困った。取り敢えず保留にしておこう。その打ちに良い考えも浮かぶだろう。
便りの礼を伝えようと思っている。メールを書けば済む問題だが、でも止めた。電子メールはつまらない。タイピングされた言葉は文面以上の何かを伝える事は出来ない。言葉にならぬ何かを伝えたいと思っている場合、その選択はハッキリと役不足である。僕も手紙を書く事にしよう。若しくはそれに代わる何か、確かに気配を織り込める方法で。
男達の別れ / Fishmans
5年ほど前、それまでバンド名は聞いた事があったにしても、さして興味を持っていなかった Fishmans をハッキリと認識したのは、公式HP上の佐藤伸治の死亡告知だった。会社の後輩が魚男達が好きで、昼休みにたまたま開いたHPのトップページにその後輩は思わず声を上げ、それに驚いた僕がモニタを覗き込んだのがきっかけだった。それから更に2年後。同じく魚男達好きの友人の薦めで、ポリドール時代のベスト盤の " Aloha Polidor " 聴いてみた。それまで耳にした事のない種類の音に最初は戸惑ったが、すぐに毎晩聴くようにまでなった。誰かが書いていた。「地面にぽっかりと開いた穴を気紛れに除いてみたら、そこには宇宙が在った。」このアルバムは1998年の12月28日に赤坂 BLITZ で行われた、Fishmans 最後のライヴ音源である。佐藤伸治が亡くなったのは翌年の3月。勿論僕は行っていないが、前述の友人に依れば、絶叫と共に幕を開けたこのライヴは、爆音に空間が捩れ、異様なテンションの高さのまま進行して行ったそうだ。観客達はただ呆然と身を揺らしているのみで、さながら陽炎のようだったとも。途中で休憩を入れ、再度登場した魚男達はそれから50分間 " Long Season " 一曲を演奏し続けた。一切のアンコールも無しに終了したライヴの後、友人はグッタリと疲れ果て家路に着いたそうだ。その圧倒的な音の洪水を全身に浴びた彼等が一体其処で何を体験したのか、僕には知る術がない。
嗚呼、勘違い人生。
「死刑台のエレベーター」か「未来世紀ブラジル」を借りようと思って近所のレンタル屋に行った訳です。んで、無い。どっちも無い。「O嬢の物語」は在るのに「死刑台のエレベーター」は無い。「えびボクサー」は在るのに「未来世紀ブラジル」は無い。隣町の TSUTAYA に行くのも面倒なので、僕はそれらを諦めて別な何かを探し始めた。
そいう訳で店内をうろうろしていると、5歳くらいの女の子が踏み台に上ってアニメーション映画あたりを物色していた。何となく危なっかしいので、近くに親がいるのか見回す。母親が居た。娘に声をかけながら歩いて来る。よし。僕は本来の目的を果たそうと踵を返し・・・そうになったその瞬間、その母親は私を横目でぢっと見ているではないか。待ってくれ。色落ちしたカーゴパンツにくたびれたTシャツで、サンダル履きに無精髭とか伸ばしているが、子供には興味は無いぞ。私はいたたまれなくなり、逃げるようにその場を立ち去った。
それからは決して子供が近づかないであろうアクション系とかヨーロッパ系の棚にへばり付いていた。しかしである。先ほどの母親が僕の周りをうろうろするのである。挙げ句の果てには僕の横でヴィデオを物色し始めるのである。邪魔。邪魔だよ。居心地悪いだろ。僕は SF の棚へ移動する。また来やがる。娘の側についていなくて良いのだろうか。というか、そんなに僕をチラチラ見ないで欲しい。年の頃は、えーと・・・そうだな、僕と同い年かちょい下くらい。色落ちした細身のジーンズにシースルー気味の白いシャツを着ている。さほど美人だとは思えないが、わりかし整っているのではないだろうか。とか考えていると段々気になってきた。
それからも、僕が棚を移動する度にその母親は姿を現す。娘が家に帰ろうと言い出しても帰らない。僕の横に居る。えー、もしかして・・・。
僕が無駄に胸をときめかせていると、母娘はレジへ向かい、勘定を済ませて外へ出て行った。乗り切った。それから、結局私は以前にロードショウで観ようと思っていて結局見逃していた「ドラムライン」を借りて部屋に戻ったという訳です。
最近こんなのばかりである。もうちょっとこう・・・何というか、素直に突っ走れる状況にはならないのだろうか。贅沢は言わないから、彼氏付きとか子供付きとかではないヤツを希望したい。もしかして僕はそういうの向きだとでも言うのだろうか。世の中には女房向きの女性が居たり、愛人向きの女性が居たりするらしい(飽くまで憶測)が、もしや・・・。ああ、嫌だ嫌だ。段々嫌になってきた。出来る事なら京都の町屋の二階に、半年くらい隠遁したい。そいでもって毎日昼頃に布団から起きだして、狭くて暗くて急な階段を降りると、町屋の女将に「あら? おそようさん。何処まで行かはるの?」とか声をかけられて、そして僕は「ええ、外で飯食うついでに友禅でも眺めて来ようかと思いまして。」とか言いながら茶を呼ばれるのだ。そしてそして茶を飲み干すとにわかに立ち上がり「晩飯までには戻りますから。」と女将に言い残し下駄を履き鳴らして町屋を出る。「お早う、お帰りやす。」そんな女将の声を背中で聞き流し、僕は空を見上げる。「もう、秋だなあ。」
嗚呼、そんな暮らしがしてみたい。
そいう訳で店内をうろうろしていると、5歳くらいの女の子が踏み台に上ってアニメーション映画あたりを物色していた。何となく危なっかしいので、近くに親がいるのか見回す。母親が居た。娘に声をかけながら歩いて来る。よし。僕は本来の目的を果たそうと踵を返し・・・そうになったその瞬間、その母親は私を横目でぢっと見ているではないか。待ってくれ。色落ちしたカーゴパンツにくたびれたTシャツで、サンダル履きに無精髭とか伸ばしているが、子供には興味は無いぞ。私はいたたまれなくなり、逃げるようにその場を立ち去った。
それからは決して子供が近づかないであろうアクション系とかヨーロッパ系の棚にへばり付いていた。しかしである。先ほどの母親が僕の周りをうろうろするのである。挙げ句の果てには僕の横でヴィデオを物色し始めるのである。邪魔。邪魔だよ。居心地悪いだろ。僕は SF の棚へ移動する。また来やがる。娘の側についていなくて良いのだろうか。というか、そんなに僕をチラチラ見ないで欲しい。年の頃は、えーと・・・そうだな、僕と同い年かちょい下くらい。色落ちした細身のジーンズにシースルー気味の白いシャツを着ている。さほど美人だとは思えないが、わりかし整っているのではないだろうか。とか考えていると段々気になってきた。
それからも、僕が棚を移動する度にその母親は姿を現す。娘が家に帰ろうと言い出しても帰らない。僕の横に居る。えー、もしかして・・・。
僕が無駄に胸をときめかせていると、母娘はレジへ向かい、勘定を済ませて外へ出て行った。乗り切った。それから、結局私は以前にロードショウで観ようと思っていて結局見逃していた「ドラムライン」を借りて部屋に戻ったという訳です。
最近こんなのばかりである。もうちょっとこう・・・何というか、素直に突っ走れる状況にはならないのだろうか。贅沢は言わないから、彼氏付きとか子供付きとかではないヤツを希望したい。もしかして僕はそういうの向きだとでも言うのだろうか。世の中には女房向きの女性が居たり、愛人向きの女性が居たりするらしい(飽くまで憶測)が、もしや・・・。ああ、嫌だ嫌だ。段々嫌になってきた。出来る事なら京都の町屋の二階に、半年くらい隠遁したい。そいでもって毎日昼頃に布団から起きだして、狭くて暗くて急な階段を降りると、町屋の女将に「あら? おそようさん。何処まで行かはるの?」とか声をかけられて、そして僕は「ええ、外で飯食うついでに友禅でも眺めて来ようかと思いまして。」とか言いながら茶を呼ばれるのだ。そしてそして茶を飲み干すとにわかに立ち上がり「晩飯までには戻りますから。」と女将に言い残し下駄を履き鳴らして町屋を出る。「お早う、お帰りやす。」そんな女将の声を背中で聞き流し、僕は空を見上げる。「もう、秋だなあ。」
嗚呼、そんな暮らしがしてみたい。
家族という名の幻想
誰も知らない、を観ていて或る人の事を思い出しました。映画(当の事件)と同じく、兄弟姉妹が全員父親が違う人でした。彼女は僕と出会って二週間後にはこの事を、冗談交じりに自分から話始めました。彼女にとってはネタとして話したのでしょうが、僕はその話をネタとして受け止める事が出来ませんでした。悪い事をしたな、と今でも思っています。母親とは手紙だけのやりとり。妹達から「お姉ちゃんに会いたい。」と言って来ているようでしたが「母の彼氏の子供というだけで、何の感情も沸かない。」という理由で一切連絡していないようでした。僕はその言葉を信じていませんでした。父親に関しては、就職の際に戸籍抄本を見ると、今は大阪に住んでいる事が分かったようです。しかし彼女は「今更父親に会いたいとは思わない。」と言っていました。僕はその言葉も信じていませんでした。でもそれは僕の勝手な解釈に過ぎません。彼女が本当はどう感じていたのか、それは彼女以外は誰にも解りません。
彼女が或る時こんな事を言いました。「将来、二人の子供(出来れば双子)を産んで、両手に抱き抱えてみたい。」と。その時僕は、本当にそうなれば良いな、と思いました。その時彼女は、本当に嬉しそうに話していたからです。でも、一年後にその話を僕が持ち出しても、彼女はその話を自分がした事さえ忘れていました。「そんな時もあったかな。」と請け合ってくれませんでした。彼女の考えている事は、僕には全く解りませんでした。それでも、僕と彼女が出会った当日から、何の違和感も無く数時間を共にする事が出来たのは、僕と彼女が同じ表情をしていたからでしょう。甘んずれば、怖いものは何も無い。そんな顔して生きていました。
今現在、彼女が何処で何をしているのか、僕は知りません。
彼女が或る時こんな事を言いました。「将来、二人の子供(出来れば双子)を産んで、両手に抱き抱えてみたい。」と。その時僕は、本当にそうなれば良いな、と思いました。その時彼女は、本当に嬉しそうに話していたからです。でも、一年後にその話を僕が持ち出しても、彼女はその話を自分がした事さえ忘れていました。「そんな時もあったかな。」と請け合ってくれませんでした。彼女の考えている事は、僕には全く解りませんでした。それでも、僕と彼女が出会った当日から、何の違和感も無く数時間を共にする事が出来たのは、僕と彼女が同じ表情をしていたからでしょう。甘んずれば、怖いものは何も無い。そんな顔して生きていました。
今現在、彼女が何処で何をしているのか、僕は知りません。
Le petit prince / Antoine de Saint-Exupery's
余丁町の散人氏のエントリで紹介されていたのですが、この本の中の「薔薇 」は一体誰がモデルになっているのかが56年を経てようやく判明したそうです。それは妻の Consuelo だとか。詳しい経緯については氏のエントリを参照してください。個人的な意見を書かせて貰うならば、文中の「薔薇」はかなり一般化して書かれていると思うので、大した問題ではないのではないか、と。ならば何故わざわざエントリに書くのかというと、一つ思い出した事がありまして。それと言うのも、10年くらい前の或る日の事です。ポストに小包が届いていました。差出人は不明です。中を開けると、手製の布地のカバーで製本し直された岩波少年文庫の「星の王子さま」が入っていました。宛名はしっかりと僕の名前と住所になっているので間違いであるハズはないが、全然思い当たるフシがありません。その当時、郵便物のやりとりをしていた人と筆跡を見比べてみましたが、誰の筆跡とも合致しません。誰が送ってくれたモノなのか知りたいとは思いましたが、モノがモノだけに、送り方が送り方だけに問いただす事もなく現在に至ります。不思議な事もあるものです。その本を贈ってくれた誰かは、僕に一体何を伝えたかったのでしょうか。
此処で紹介しているのは岩波少年文庫版ではありません。サン=テグジュペリが生前に唯一ゲラを確認した挿絵(アメリカ版)を使用したオリジナル版です。僕は持ってませんが、ちょっと欲しい気もします。

迷う中野下り電車
また電車内での話ですが、時折見かける吊革ダブルハンド。要は二人分の吊革を独り占めしている人の事です。僕が思うに、これをやる人間は30代以上の人々のような気がします。しかし例外が二つほどあります。女の子を座席に座らせ、自分は立ってデレデレと女の子に話しかけている男。こいつです。彼が吊革を二本掴む必要があるのは、声が巧く聞き取れない時に女の子の方に顔を寄せる為、バランスを取らねばなりません。その為に吊革が二本必要なのです。悪気はないのでしょうが(妬みも含め)邪魔です。もう一つは、吊革を使って懸垂しようとする小学生です。一瞬は微笑ましく思えるのですが、さすがにこれを真横でやられると腹が立ってきます。後ろにそうっと回って脇をくすぐってやればさぞ面白かろう、とか考えてしまいます。
さて、それ以外の取り立てて理由が思いつかないが、何故か吊革を二本占有してしまっている人々ですが、僕はその理由をこう考えます。30歳も過ぎ、酷く疲れていたり酔っていたりすれば、筋力の低下に依り、重心を保つのが困難なのではないでしょうか。そうであるならば解る気もします。しかし、しかしです。中にはそういう性善説を覆してしまうような態度を取る人も居るのです。そういう人達はチラチラを周りに視線を投げかけ、自分が吊革を余分に使用している事を気にしているように見えます。しかしその表情には恥じらいとか申し訳なさのような色は全く見えません。どちらかと言えば自慢げです。どういうつもりなのでしょう。もしかすると、他人より少しでも多くのモノを所有している事が嬉しくて仕方がないのかも知れません。僕はこういう人を見かけると、その手を竹で出来た物差し(家庭科の先生がよく持ってたヤツ)で思い切りスナップを効かせてピシッ!と叩きたい衝動に駆られます。
で、どうしてこんな事を書きたくなったのかというと、帰りの電車の中でそういうオッサンを見かけたからです。彼の目の前の座席には二人の女性が座っていました。彼は酔っているのでしょうか、重心が安定していません。暫くすると彼の身体が揺れ始めました。二人の女性は少し気になったようですが、直ぐに視線をハズし二人の会話に戻りました。オッサンは自分の身体の揺れに耐えようとしているのか、表情が険しいです。しかし悲しいかな、彼のその努力は報われていません。揺れはだんだんと大きくなり、とうとう身体全体がグラインドし始めました。二人の女性目掛けてダイヴしそうな勢いです。女性二人は訝しげに身体を反らせています。オッサンにも二人の女性にも私は何の義理もありませんが、僕はだんだん心苦しくなってきました。車内の雰囲気も明らかに寒々しくなっています。・・・そして、またタイミング良く私の降りる駅へ到着。その後どうなったかは判りません。
さて、それ以外の取り立てて理由が思いつかないが、何故か吊革を二本占有してしまっている人々ですが、僕はその理由をこう考えます。30歳も過ぎ、酷く疲れていたり酔っていたりすれば、筋力の低下に依り、重心を保つのが困難なのではないでしょうか。そうであるならば解る気もします。しかし、しかしです。中にはそういう性善説を覆してしまうような態度を取る人も居るのです。そういう人達はチラチラを周りに視線を投げかけ、自分が吊革を余分に使用している事を気にしているように見えます。しかしその表情には恥じらいとか申し訳なさのような色は全く見えません。どちらかと言えば自慢げです。どういうつもりなのでしょう。もしかすると、他人より少しでも多くのモノを所有している事が嬉しくて仕方がないのかも知れません。僕はこういう人を見かけると、その手を竹で出来た物差し(家庭科の先生がよく持ってたヤツ)で思い切りスナップを効かせてピシッ!と叩きたい衝動に駆られます。
で、どうしてこんな事を書きたくなったのかというと、帰りの電車の中でそういうオッサンを見かけたからです。彼の目の前の座席には二人の女性が座っていました。彼は酔っているのでしょうか、重心が安定していません。暫くすると彼の身体が揺れ始めました。二人の女性は少し気になったようですが、直ぐに視線をハズし二人の会話に戻りました。オッサンは自分の身体の揺れに耐えようとしているのか、表情が険しいです。しかし悲しいかな、彼のその努力は報われていません。揺れはだんだんと大きくなり、とうとう身体全体がグラインドし始めました。二人の女性目掛けてダイヴしそうな勢いです。女性二人は訝しげに身体を反らせています。オッサンにも二人の女性にも私は何の義理もありませんが、僕はだんだん心苦しくなってきました。車内の雰囲気も明らかに寒々しくなっています。・・・そして、またタイミング良く私の降りる駅へ到着。その後どうなったかは判りません。
真夜中の下り電車
相変わらず音楽を聴いたり本を読んだりしていますが、ここのところ、それ以外は仕事をしている記憶しかありません。昨日は23時過ぎの電車で帰宅。僕の隣で吊革に捕まるオッサンは赤ら顔して周りをキョロキョロを見回しています。酒臭いです。本来ならば直ぐにでも場所を移動して、その不快指数150%の状況から逃げ出すのですが、今回は思い留まりました。何故ならば、美しい女性が私の目の前の座席に座っていたからです。
ブルージーンズに白いレザーのスニーカーを履いて、生成のショールを肩から首に至まで巻いていました。そんなラフな格好の割りには左手にやたらとアクセサリーをつけています。しかし今回の話の中心はそんな事ではありません。肝心なのは彼女がつけている香水です。初めて嗅ぐ匂い(もはや香りとは言えない)ですが、その匂いに包まれていると、もう何だか倒れそうになるのです。もうどうなってもいい、などと思ってしまうくらいに落ちそうになるのです。
意識が遠のいていく中、僕はふと隣に立つ150%オッサンの存在が邪魔に思えて来ました。この匂いは俺のものだ。嗅ぐんじゃねえ。見るんじゃねえ。僕は乗客が乗り降りするタイミングを見計らい、鞄を押しつけてその150%オッサンを遠のけました。
さて、どのタイミングでよろけた振りをしようか。そんな心の奥深い声に耳を傾けている内に、あえなく地元の駅に到着。吊革を握る手を緩めました。
ブルージーンズに白いレザーのスニーカーを履いて、生成のショールを肩から首に至まで巻いていました。そんなラフな格好の割りには左手にやたらとアクセサリーをつけています。しかし今回の話の中心はそんな事ではありません。肝心なのは彼女がつけている香水です。初めて嗅ぐ匂い(もはや香りとは言えない)ですが、その匂いに包まれていると、もう何だか倒れそうになるのです。もうどうなってもいい、などと思ってしまうくらいに落ちそうになるのです。
意識が遠のいていく中、僕はふと隣に立つ150%オッサンの存在が邪魔に思えて来ました。この匂いは俺のものだ。嗅ぐんじゃねえ。見るんじゃねえ。僕は乗客が乗り降りするタイミングを見計らい、鞄を押しつけてその150%オッサンを遠のけました。
さて、どのタイミングでよろけた振りをしようか。そんな心の奥深い声に耳を傾けている内に、あえなく地元の駅に到着。吊革を握る手を緩めました。






