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DOG ON THE BEACH

山手線沿線を歩く(鶯谷〜日暮里)





和風ラブホ: 相変わらずホテル街が続く。中には和風の外観を持つホテルも若干だが在る。僕は以前からこういったホテルに興味があって、いつの日にか利用してみたいと思っている。しかし思ってはいるけれども、なかなかそういう機会がないもので、そのまま今日に至っている訳だ。恐らく和洋折衷と呼ぶ以前のぐだぐだに中途半端な内装であるような気がしてならないのだけれど、それはそれで印象に残ってしまうものだ。何年か前に町田で、外観は洋風だが中は妙に簡素で中途半端なホテルを利用した事がある。調度品は場末的だが、部屋が無駄に広く清潔なので自分をその場所に馴染ませるのに苦労した覚えがある。



現代芸術家協会事務所: とある。現代芸術を志す人達が古い町に参入し、その土地を発信地として活動を続けていくのは大変素敵だと思うのだが、どうにもこの・・・えー、やや偏見を持って言えば、ホームセンターで買い揃えた材料を元に作られた miki house 的な看板を現代芸術家達が好むとは思えない。右上のパレットを模した造形は現代芸術というより絵画教室を想わせるし、そもそも「家」の字が欠落しているので、非常にアバウトな印象を見る者に与える。一体何をしている人達が集うのか、何となく気になる。



哀愁ビーバー: 線路沿いの住宅地の一角に、ひどく閉塞的な雰囲気を持つ小さな公園が在った。その公園内に設置された遊具であるこのビーバー、顔中に落書きされている。少し寂しげな表情がなんとも哀愁を感じさせる。落書きの内容はよく読み取れなかったのだが、遊具に跨り、可愛らしい顔に落書きするという心理が巧く想像出来ない。僕とて中学の時、机に彫刻刀で散々落書きした覚えはあるが、それとは少し違う気がする。



谷中墓地: 墓地から続く小径はそのまま線路を越える陸橋へと繋がる。走る電車と、それを眺める老人と子供、路肩に咲く花。素晴らしい光景だ。しかしながら陽射しが強すぎてろくな写真にならなかった。線路沿いをずっと歩いていると、意外にも電車を眺める人々が結構居る事に気付いた。大体が家族連れ、恐らく子供に見せてあげる為なのだろう。彼らの傍を通り過ぎる時、僕は少し幸せな気分になる。



日暮里駅: 北側の入口は改装中であった。東側にも主な入口があるのだけれど、そちらはロータリーに面していて、駅ビルの一角に入口が在る。そういうのはなー・・・、風情が無いから写真を撮る気にもなれないのだ。周囲も飲食店やパチンコ屋などが建ち並んでいて騒々しい。飲み屋街は好きなんだけれど、やはり人々が慌ただしく通り過ぎるだけの場所というのは気分が落ち着かない。

 思ったのだけれど、ホテル街というのは一体どういう経緯で出来上がったのだろうか。元が宿場町だったとかそういう事なのだろうか。近隣に住宅地が在るとしても、街そのものを造り替えるつもりでもなければ隠しきれない、何というか人々の無責任な欲望の残骸らしきものが目に留まる。だからこそ歩いていて面白いのだけれど。
  • Last modified : 2009-03-15 19:25

小菊

 暫く前に、ラジオに出ていた假屋崎省吾が「最近の菊はいろんな種類があって綺麗なんですよお。」と話していたので、先週末に近所の花屋でサービス品として売られていた淡い黄色の小菊を一束買った。正確な名前は知らない。それを部屋にあったフラスコに挿している。何故そんな物が在るのかというと・・・よく思い出せないが我が家には花瓶の他にも色々と瓶が在るのだ。コカコーラの瓶(200ml)とか、北欧製の液体石鹸の瓶とか。
 それでどの瓶に挿そうかと考えあぐねて、ふと「粗末な感じのする奴が良いのではないか。」と思いフラスコに挿した訳なのだが、割とそれが気に入ってテーブルの上、パワーブックの隣に飾ってある。

 そして今日、一日部屋に居たのでその菊を眺める時間が長かったのだが、飾ってから一週間経つというのに、買った時と変わりない淡く穏やかな黄色い花はこの季節に良く似合うような気がした。しかし何かこう、薄い印象が周りに在る物全てに浸透している感じで、静けさを創り出しているいるようにも思えるのであった。美しい。確かにそうだが、何処となく薄幸そうな印象を持ってしまうのは、やはりフラスコなんかに挿しているからなのだろうか。

 儚げな色彩を持ち、しなやかさと意外な強靱さを併せ持つ和花を最近になって気に入り始めた。

山手線沿線を歩く(上野〜鶯谷)





上野駅: まあ、取り敢えず上野駅である。思うのだけれど JR の駅舎に掲げられた緑色の駅名文字って、見ていると何処となく安心するなあ。特に不案内な土地なんかだと、駅が指標になりますもの。これはやはりがっしりとした太ゴシック体だから良いんだろうな。これが細明朝体なんかだったりしたら不安になりそうだ。それと、壁面に設置された時計が良い。この外観は今後も保って行ってもらいたいものだ。それにしても左側の懸垂幕が邪魔だなあ。ところで、数年前まではは駅周辺に大勢立っていた中東の男達は一体何処へ消えてしまったのだろう。帰国したのだろうか。日本の経済に対する興味が薄れたのか、それとも政治的な理由なのか。



上野恩賜公園を過ぎた辺りの陸橋より: このように、山手線の両側の土地が高台になっている所が多い。逆を言えば電車は谷底を走っているように見える。高台から見下ろす電車の走る姿も、電車の中から見上げる高台の景観も僕は好きだ。そう言えば、ずっと以前にテレビコマーシャル(恐らく JR 東日本の)で、引きの画面の中を山手線の電車がただ通過するだけの映像があった気がする。その光景がもう息を呑むほどに美しかったのだ。



スナック旅館: 線路沿いの住宅が建ち並ぶ道をよちよちと歩いていたら、軒下に浴衣をずらりと干した光景に出会した。よくよく見てみると「お酒とおしゃべりのお店」と看板が出ており、どうやらスナックの類の店であるらしいのだが、ならば浴衣がこんなにも何着も干してあるのは何故なのだろうか。道路側からは伺えないが、この建物は長屋のように奥へ長い構造になっており、そちらに宿泊施設が在るのだろうか。まさか店の主人の毎晩の寝間着だとは思えない。いやそういう人が居てもおかしくはないが、泊まれるスナックだと考えた方が楽しい。呑んで酔っ払ってしまったら、そのままそこに泊まれる。なんと素晴らしい。



線路脇の小径: 人が擦れ違うのがやっとの道幅。それでも結構人が歩いている。抜け道として便利なのだろう。しかし何となく、擦れ違う人々が伏し目がちな気がするのは気のせいか。この道を真っ直ぐ進めば鶯谷駅へ通じると思うのだけれど、ちょっと足を踏み入れにくい区域に入ってしまう。鶯谷駅の北東側にはラブホテル街が在り、知っている人は知っていると思うが、そのホテル街と線路の間の道々にアジア系(たぶん日本・中国・韓国以外)の女達が立っていて道行く男達に声をかけているのである。僕は何年か前に何も知らずにうっかりとその区域に足を踏み入れてしまい、散々声をかけられて困った事があったのだ。その時は夏で、身体の線を強調した衣服を身に纏った彼女達は、僕のむき出された腕に優しく触れてくるのだった。またそういう事になるのだろうから面倒だなあ、と思いつつもその区域に近付いた時、日傘を差した客引きらしき中年の女性と目ががっつりと合ってしまった。彼女の視線は僕にロックオン状態である。僕を客だと100%思っているに違いない。僕は線路沿いを歩く事を諦め、角を右に折れた。



鶯谷駅: これは南側の高台(上野桜木)に在る方の駅舎。北側(根岸)の大通りからは坂道を登った先に在る。普段、自分の肉眼で見るのと違って、瓦屋根と縦縞のテントが印象的な良い佇まいである。写真で見る限りでは峠の茶屋ように見えなくもない。北側の駅舎は、大通りから横道を入って行った突き当たりの更に左に折れた場所に在り、周囲の雰囲気と相まってうらぶれた感じが染みついたナイスな駅舎なのだ。

 さて、たった1駅の行程でこれだけ書いてしまうと、残り28駅分の作業を思って気が遠くなる。これでも結構端折ったのだけれど、これ以上減らすと何やってるか判らなくなってしまうからなあ。
  • Last modified : 2009-03-14 23:37

山手線沿線を歩く(前口上)

 何年も前から山手線沿線を歩いてみたいという欲求があった。僕は山手線の電車の車窓から見える風景が好きで、例え他のルートを辿った方が早く、しかも安価に目的地に着く事が判っていても山手線を利用する。なので、いつか車窓から見える風景の中を歩いてみたいと常々思っていたのである。ただ、そう思ってはいても諸事情その他の理由でなかなか実行には移せずに先延ばしにし続けていたのだが、いくら何でも好い加減に実行に移したらどうか、と自分に言い聞かせて先日敢行したのだった。

 さて「山手線一周」などと言う単語で検索してみれば、結構たくさんの人がそれを実行しているようで、しかしながら僕が考えている事に比べると若干主旨が違うようである。徒歩にしろ自転車にしろ、皆さん一気に山手線を周回しようとしていて、体力勝負というか感じは否めない。僕はそういったニュアンスの事には全く興味がなくて、沿線を歩いて廻りたいと思っているだけである。以下に僕が考える山手線一周に対する思いを記す。
  • 一気に一周する必要は何処にもない。どうやら徒歩で一周すると10〜15時間くらいかかるようだが、そんな長い時間歩きつめたいとは全く思わない。そもそも僕の体力では無理である。僕のこれまでの最長散歩時間は5時間だ。
  • という訳で、数日に分けて一周する事にする。適当な時間に歩き始め、若干の余裕を残しながら辿り着いた駅で止める。
  • 出発駅は上野駅とする。自宅から一番近い駅と言えば日暮里なのだが、どちらかと言えばしみったれた駅であるので、ゴール駅もこの駅だと思うと歩こうという気持ちが萎える。なので北からの東京の玄関口とも言える上野駅を出発駅、ゴール駅とする。
  • 進行方向は内回り(上野から見て御徒町方面)とする。何故ならば僕は山手線の北側の地域が好きであり、競技場でトラックを走るのと逆に廻るのは心臓に悪そうだからである。
  • 出来るだけ線路沿いの道を歩く。寄り道をしない。つまり路地に入り込まない。路地を迷った方が楽しいに決まっているのだが、今回の主旨に反するし、それやってるとキリがない。
  • 写真は撮る。それがメインではないが撮る。経験は優先させるが記録もしたい。道々で、ヘンな物は Ricoh GR-D (コンパクト・デジタルカメラ)で撮る。押さえで真面目に撮りたい場合は Olympus OM-4 (一眼レフ・フィルムカメラ)で撮る。
 さて、御託を並べるだけでエントリひとつ埋まってしまったが、後日、徐々に書いていこうと思う。

丹前

 今週に入ってから、陽が落ちてからの気温も下がってきた事だし、押し入れの中から丹前を引っ張り出してきた。少し早い気もしたが、丹前を羽織ったままごろごろしていると、柔らかな暖かさに包まれて幸せな気分になれるのだ。

 僕が所有している丹前は、実は友人の置き土産である。藍と青と灰色の縦縞で、あからさまに江戸前な代物だ。実家に住んでいる時はちゃんと僕専用の丹前(故郷では綿入れとも呼んだ)が用意されていたりしたものだが、いざ上京して独り暮らしを始めると、自分で丹前を買おうという気にはなかなかなれずに、そのまま月日は流れたのであった。それがある日、友人が地元に帰る(んだったか米国に行くんだったか記憶が曖昧だが)ので「お前にこれをやる」という事で譲り受けたのであった。今では毎年冬になると重宝している。

 さて、いつものように「丹前」の歴史でも知ろうかと Wikipedia で調べてみたら、意外や意外、吉原の遊女勝山の衣装が発祥で、彼女に気に入られたい旗本連中を元に広まったのであるという。不思議だ。丹前というと、そういう色っぽい事からは遙か遠く離れた実用一本槍の衣服であるとばかり思っていたのに。

浪曲

 昨日の午後、たまたまテレビを点けてみたら、NHKで「東西浪曲特選」という番組をやっていて、具合が良さそうなので寝転んで観ていた。これまでの人生で、僕は浪曲という芸能をまともに観た事も聴いた事もなかったのであるが、これがなかなか格好良い。まず舞台上に置かれた、布で覆われた三つの台の配置が美しく、弁士(というのかどうかは知らないのだが)は其処に絶妙に収まる感じで立つ。そしてその語り口たるや、己の口一つで時間をコントロールする事に長け、盛り上げ方が非常に巧い。僕が全く知らなかった世界であるが、これは知っておいた方が良いのではないだろうか。そう思う日曜の午後であった。

 浪曲に於いても、伴奏というか囃すのは三味線の音。僕はそちらにも耳を奪われていた。唄を伴わない三味線の楽曲はないのだろうか。かつて吉原遊郭で、郭の営業開始と共に掻き鳴らされたという「清掻」に非常に興味を覚える。何度となく、新宿紀伊国屋本店で「清掻」で探してみたが、それらしいCDは見つからなかった。あの手の音は一日中聴いていても飽きないような気がするのだけれど、さて、何処かに無いものだろうか。

さくらん / 蜷川 実花

 何だか勿体ない。蜷川実花と土屋アンナと椎名林檎を持ってきたのは良いと思うのだが、話の流れが淡々とし過ぎている、というより急ぎ足で原作をなぞっているだけという感じがして、物語を楽しめない。役者を揃えて、それを蜷川に撮らせたかっただけという印象ばかりが残る。美術や画自体は結構気に入ったのだけれど。
 そしてラストが本当にしょーもない。最後に光を求めるのならば、例えばもっと絶望的な世界観を持った女性の監督を据えた方が良かったのではないだろうか。全体が平坦過ぎて、希望を光として見つめる事が出来ないのである。
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