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DOG ON THE BEACH

皆月 / 望月 六郎

 花村萬月の原作には全く無かった「肩を噛む」という行為が気になる。それは何も原作と違う事を気に病んでいる訳ではなくて、それがどういう心情を現しているかについてだが。冒頭での徳雄と沙夜子との風呂場で交わる場面と、最後の沙夜子とアキラとの抱擁の場面に出てくる。原作の中に「人間の性は、性欲を発散するためでもなく、子孫を残すためのものでもない。性の根源にあるのは、孤独だ。この世界にたった独りでいることに対する不安だ。」という行が出てくる。だとすれば、その性行為の中に自ずと孤独感を拭い去ろうとする仕草が現れてくるのではないだろうか。勿論、望月監督がどういう意図で肩を噛むという行為を映像化したのかは私には解らない。ただ、相手の身体に自分の一部を沈め、食い込ませようとする行為は、相手を支配しようとしていて、反対にそれを相手に求めるのならば、相手に支配されようとしているとか、そういう希求に繋がるような気がしてならない。詰まりは、救われようとしているのかも知れない。

追記 : 2006.02.02 「支配」という言葉は強過ぎるし、少し違うような気がしてきた。何となく陳腐だし。不安を埋める為の行為だとすれば「同一化」というのが近い気がする。それか、受け手に限って言えば、痛みを伴わないと確認出来ない大事なモノがあるとか。

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ふたりの5つの分かれ路 / フランソワ・オゾン

  • 2005-09-01 木曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 封切られたばかりの映画。日比谷シャンテシネで観てきた。

 冒頭は、離婚調停の手続きの場面から。調停離婚した男女が同じ部屋に泊まるのか、そして直ぐさまそこで寝てしまうのか、と不思議に思いながら観ていたら、いきなり無理矢理事に及ぶセックスシーン。迂闊にも前後左右を女性に囲まれる(全席指定の為に自分で選べない)席に座ってしまった僕は死んだフリをしながら、少しだけ後悔していた。何故って落ち着いて観れないのだもの。

 此処で紹介されているように、オゾンは別れに至った経緯というかきっかけになった事柄に興味を持って撮ったと言及しているが、主人公の男がしでかす失態はありがちなエピソードだし(但し僕はその度に死んだフリをしなくてはならなかったが)、非常に淡々と物語が進んでいくので何だか釈然としない。しかし、よくよく考えてみると、確かにそうである。かつては浮き立つような喜びと興奮を共有していても、小さな違和感が重なり、それが堆く降り積もっていけば、かつての喜びの量を超えてしまい、ついには「これ以上一緒に居ても良い事など何も起こらないのではないか。」などと考え始める。そうなってしまうと、後はもうタイミングを計るだけの日々が続く事になる。

 話が逸れた。僕は未だこの作家の作品を二本しか観ていないので、浅はかな判断であるのかも知れないが、僕はフランソワ・オゾンという人は、映像の美しさと(得に女性の)感情の揺れを巧みに描く作家だと思っている。例えば、冒頭の強姦紛いのセックスシーンでも、主人公の男女の肉体の美しさが私の目を捉えて離さない。例え周りの女性達が自分の腕をさすったり、尻を動かしたりして、僕を無駄に緊張させ居たたまれない気分にさせたとしても、僕は隔離された世界の住人となり、その映像の美しさにひたすらに見入っていた。

妖怪大戦争

  • 2005-08-29 月曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 レビューではなく、続編若しくは番外編としてこういう物語で撮ってくれないかなあ、というの書いてみる。主人公は妖怪雑誌編集者の佐田で、彼の少年期から青年期までの物語。

 少年の頃、渓流で溺れていたところを川姫に助けられた佐田少年。彼は川姫に対して命を助けられた恩と共に、性的な対象としての興味を抱く。再び目を覚ました佐田少年は近隣の大人に発見され、再びいつもの日常に放り込まれる。その後何度かその渓流に足を運ぶが、川姫を見つける事が出来ない。

 佐田少年は親や教師に不当に叱られたり、苛めに遭ったり、繰り返し失恋したりするのだが、そんな悲しみの中、ふと心が軽くなるような出来事が少年の周りで起きたりする。それもそのはず。様々な妖怪達が、少年の気付かないところで彼の手助けをしていたのだ。
 それとは別に、佐田少年はひょんな事から川姫という妖怪の存在を知る。川姫を忘れられない少年は、それから日本中の妖怪に興味を持ち始め、手当たり次第に文献を漁り、日夜空想に耽るようになる。

 少年から青年に成長した佐田は、兼ねてから愛読していた妖怪雑誌の編集者になる。取材を通して日本各地の妖怪棲息地を渡り歩き、その地元の年寄り達に妖怪に纏わる伝説を聞いて廻るうちに、かつての自分の人生には、妖怪達と関わった事が数多くあるのではないかと気づき始める。

 と、こんな感じで撮ってくれないかなあ。

珈琲時光〜未公開夕張編 / 候 孝賢

  • 2005-08-04 木曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 最近になって知人に指摘を受けるまで、DVDに特典映像のディスクがもう一枚入っている事を完全に失念していた。改めて観てみると、そのディスクには未公開映像と、監督・一青窈・浅野忠信のインタビュー、予告編などが収録されている。本編を観ている時に、最後のクレジットロールに夕張の名前が出てくるが、何処に夕張なんか出てきたのだろうと思っていた。実は未公開映像とは夕張に一青と浅野が、一青の叔父に会いに行く旅を写した数十分の映像であった。

 本編よりも、この夕張編を観ていて強く思ったのは、一青窈と浅野忠信に限らず周りの役者達も、これってホントに演技しているんだよなあと思えるくらいに普通に喋っている。誰かの日常を勝手に撮っているような感じ。自分の観ている光景が限りなく自分に近づいてくる。

 夕張編の最後に(本来はこれが本編の最後になる予定だったのだろうか)一青窈の主題歌をバックに、車窓からの風景が延々と流れる。僕は「世界の車窓から」を好きで観ていたが、その番組だと列車に乗り合わせた乗客や、列車そのもの、駅などに焦点が合わせられている。しかしこの映像は、通常私達が列車に乗った時に観ている光景を写しているだけである。それがとても気に入った。もし、何処かの駅から何処かの駅までの車窓の光景のみを、淡々と写したDVDが売っていたなら、僕はきっと買うだろうな。眠れなさそうな夜に、そんな映像を観ながら眠りに就きたい。

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春の日は過ぎゆく / ホ・ジノ

  • 2005-08-02 火曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 ホ・ジノ監督の八月のクリスマスに続く二作目。こちらはハッキリと恋愛物だが、やはり同じように所謂ハッピーエンディングにはならない。何となく、これはこれで良かったのかなあ、という感じで終わる。ま、それはいいとして。この映画で二つ好きな場面があって、一つは、主人公の二人が最初に出会う場面。未だ見ぬ二人が仕事の関係で駅で待ち合わせをする。録音技師の男は約束の時間に駅の待合室へ辿り着くも、相手の顔を知らないので戸惑う。しかしどうやらマフラーを顔に巻き付けてベンチに座って寝ているのが、待ち合わせの相手であるラジオのDJ兼プロデューサー当人であるようだ。男は敢えて肩などを叩いて起こそうとはせずに、隣で眠る女の携帯にそこから電話する。僕はこの場面が大好きである。

 もう一つは、二人が付き合うようになって、遠く離れて暮らしている為なかなか逢えず、酔った勢いでタクシー飛ばして男が女の住むマンションへ逢いに来る。予め電話を受けていた女は、マンションの外へ出て恋人が遠路遙々駆けつけるのを待っている。が、この人、道路に座り込んでグッタリとしながら待っているのである。まあ、待ちくたびれたのだろうけど、その姿がとても愛らしくて良い。
 あ、もう一つ在った。二人が番組の為に竹林が風にさざめく音を録る場面があるのだけれど、その竹のさざめく音がとても良いのである。其処に長年済んでいる老婆は「この音を聴いていると心が軽くなる。」と言が、まさにそんな音。
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Tran Anh Hung

  • 2005-07-09 土曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 僕の愛する映像作家。ベトナムはホーチミン出身でパリ在住。相変わらずストーリー等はリンク先のアマゾンのレビューでご覧下さい。

青いパパイヤの香り: 1993年に公開されたデビュー作。でも僕は先日観た。上流階級(と思われる)一家の元で、使用人として住み込みで働く少女の物語。同じ使用人の婆や一家の夫人に可愛がられたり、息子達に悪戯されたり、不審な老人に懐かれたり、淡々とした日々が続く。劇中ではドビュッシーとショパンのピアノ曲が挿入され、静かで二つの意味で瑞々しい空気を感じさせる。後半、10年を経て美しく成長した少女は、その一家に暇を出され、長男の友人であり新進の作曲家である青年の家の使用人となる。まだ幼い頃からこの青年に恋い焦がれていた少女は、甲斐甲斐しく青年の身の回りの世話をし続ける。そして、やはり手を出されてしまう。この辺りの背徳性というかエロティシズムが非常にフランス的だなあと思ったりするのだが、フランスに住んでるからってどうしてこうなるのかがよく分からない。その方がフランス国内で受けるからかな。

シクロ: 1995年公開作品。最初に観たのがコレ。しかし観たのは随分前なのでストーリーを殆ど覚えていない。シクロを引いて働く主人公の少年が、何かのきっかけで社会の暗部に巻き込まれていくというような感じだったと思う。主人公の美しい姉は売春婦として働き、ヤクザの庇護を受けている。そのヤクザを指して「詩人と呼ばれたヤクザ」という言葉がチラシだかパッケージだかに書かれていて、僕はそのフレーズが気に入って借りた気がする。

夏至: 2000年公開作品。或る一家の三姉妹の物語。この映画で印象的なのは、一つ目は挿入されたルー・リードの曲。何処までも深く沈んで行きそうな音階は、劇中で降る雨に似ていてとても心地良い。二つ目は陽射しが強く明るい庭で、三姉妹が談笑しながら茹でた鶏の足の黄色い皮膚を手で剥いている光景。気味悪い感じもするが美しい画だった。三つ目は下から二番目に男の兄弟が居るのだが、その弟が雨の朝煙草を吸っていると、末の妹が真似して吸い始める。弟はそれを取り上げ雨の中へ投げ捨てる。そこで言う「雨だから吸うんだ。ホントは嫌いだ。」という台詞が何故だか記憶に残っている。

 どれも全体的に映像が美しい。そしてその美しさは幾方向にも触手を伸ばしている。マクロレンズで捉えた蟻や蛙のような小さな生物がよく登場するが、目を捉えて離さないものがある。これはたぶん美しいと感じているんだろうなあと思いながら見ている。こいういった生物が苦手な人には耐え難い映像だろうけど。それと、雨に打たれる人々や植物や家々の佇まいも美しい。雨に打たれる侘びしさみたいなものが感じられる。そして、女性が本当に美しい。雨や汗でいつも濡れている肌や髪の毛がより一層それを引き立たせているようだ。

 この三作品以後はなりを潜めているこの作家だが、この三作品に共通して出演している女優のトラン・ヌー・イェン・ケーはパートナー(妻とは書いてなかった)であるらしい。二人のイカシた写真を見つけたが、画像をそのまま持ってくると問題ありそうなのでリンクしておく。こんな感じ

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The Long Goodbye / Robert Altman

  • 2005-06-29 水曜日
  • Category - Art
  • Tag -
 随分昔に一度だけ観た事があって、偶然に Tsutaya で見つけたので観てみた。僕の儚い記憶の中にうっすらと残っていた場面が次々と映し出される。一番印象に残っていたのは、米国西海岸の湿り気を帯びた濃密な夜の光景だ。街の放つ光を色っぽく包んだ夜が主役のような映画だ。改めて観ると、フィリップ・マーロゥ役の Elliott Gould がとても愛らしくてカッコ良い。探偵物語の松田勇作を思い出す。この映画は1973年の作品だが、探偵物語は1979年の放映なので、もしかしたら案外元ネタだったりするのかも知れない。原作は勿論 Raymond Chandler の長いお別れ。その原作と大きく違うのはラスト。自分を利用し裏切った友を、自分の手で殺すのだ。あ、そうそう。この映画は未だDVD化されていなかったようで、現在予約受付中である。しかもやけに安い。更に(個人的に)繋がりを見いだしてしまったので、これも何かの縁(偶然とも言う)だろうと買う事にした。
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