DOG ON THE BEACH
Bad Guy / Kim Ki-Duk
これも娼婦絡みの映画。どうしてそんな映画ばかり観るのか、とか聞いてはいけない。僕だって高校球児の爽やかな涙を見遣りながらコレ書いていて、自分が少し心配になっていたりするのだから。・・・さてこの映画、前述の「歓楽通り」とは少し違う。いやだいぶ違う。主人公はヤクザの男。街で見かけた女子大生に一目惚れをしてしまうが、鼻も引っかけて貰えない。考えた男は女を罠にかけ、自分が面倒を見ている売春宿に身売りさせるのである。そうやって女を身近に置く事に成功する男だが、彼の苦悩はそこから始まる。初めて客を取らされ泣き叫ぶ女を目の当たりにして、居ても立っても居られずに客を叩き出したり、女に暴力を奮おうとする客を袋叩きにしたりするが、女を売春婦にしてしまったのは自分である。何れ女は客を取る事になる。客に買われ、子分にまで買われる女を男は見つめ続ける。たった一言の言葉も発せずに。実はこの主人公、全然喋らない。唯一、一場面だけ喋る。その台詞はこの映画の根底に流れる、男の思いを吐き出すものであるが、それさえギドク監督はもまともには喋らせない。簡単には感動なんかさせては貰えないのである。そんなところが私はいたく気に入りました。それと、ジャケット画像にもあるような売春宿の毒々しい原色の照明が美しく、さすが韓国人は原色の使い方が巧いなあ、とか思いました。これのポスターとか無いかな。劇中でエゴン・シーレの画集が突然登場するので何かと思えば、ギドク監督はパリで絵を描いて暮らしていた事があるそうな。
- SPO Entertainment によるキム・ギドク監督のサイト
- Seochon.net による主人公役のチョ・ジェヒョンのページ
Rue des plaisirs / Patrice Leconte
Amazon.com にも画像が無くて Amazon.fr で探したら見つかりました。しかしそこまでして書きたい事があったのかというとそんな事はないのですが、せっかくなので書いておきましょう。(ジャンプ先は Amazon.co.jp です)・・・戦時下のフランス。娼婦と客との間に一人の男の子が生まれる。彼は娼館の女達に実の息子のように可愛がられ「将来どんな人間になりたい?」との母からの質問に「女の人の世話をしたい。」と答える。後年、そのままその娼館で下働きとして女達の世話をしながら生活する男の前に、ある日、新入りの娼婦が現れる。彼はその娼婦に宣言する。「一生君の世話をする。」と。男はまさに女の為に生きる。いつも寂し気な彼女の運命の恋人を捜し、適当だと思われる男と彼女をくっける為に占い師を買収し、出会わせる。その後、その恋人が招く様々なアクシデントを献身的に払いのけ、彼女を人生に成功させる為にラジオ・オーディションに強引に応募し、合格させる。そしてラストはお決まりの唐突な悲劇で物語は終わる。
僕個人としては、いつも悲劇で終わらせるフランス映画の王道とも言うべき作法が気に入らない。まるで物語を終わらせる為には誰かを死なせなければならないかのようだ。全てとは勿論言わないが、観る映画がこればかりだと、段々観る気が失せてくる。物語=人生と考えるのならば、確かにそうなのだが。多くのフランス映画が何故そうなってしまうのか、その訳を知りたい。調べたりはしないけど。調べようがないし。誰から知らないかな。
余談ですが、私がルコント監督の作品を観るのはフェティッシュな映像を観たいからである。決して悲劇が好きな訳ではない。

Dinner Rush / Bob Giraldi
面白かった。NY トライベッカの人気イタリアンレストランでの一夜での出来事を緊張感溢れる映像でまとめてある。レストランのオーナー、シェフ、副シェフ、ウェイター・ウェイトレス、客、ギャラリーのオーナー、料理の批評家、ギャング、その他。それぞれの事情や思惑が同時に、しかも多方向から織り込まれていく。そして最後にはグレイッシュなハッッピーエンドとでも言いたくなるような終幕。夜が明け、退屈な日常をやり過ごし、そしてまた夜になる頃には再び宴が開かれる。そんなエネルギッシュな映画です。ついでに書くと、厨房で作られる料理がとても旨そうです。リストランテで思いっきりイタリアンを食べたくなりました。あ、でも独りだと厳しいかな。サイゼリアとかにしとくかな。
Lost in translation / Sophia Coppola
観て来ました。上映館がシネマライズだったので若いヤツらが多そうで嫌だなあ、とか思って少し迷っていたのですが、部屋に籠もっているのも嫌だったので結局出かけて来ました。主演のビル・マーレイが可笑しくて仕方がない。映画館であれほど笑ったのは久しぶりです。" Lost in Transration " というタイトルにコッポラ監督がどれほどの意味を込めたのかは解りませんが、案外そこら辺にありそうです。変わって主演女優のスカーレット・ヨハンソン。・・・好みです。系統で言えばソフィー・マルソーとかイザベル・アジャーニとかですか。その昔「アンニュイ」とかいう言葉が流行っていた時期がありましたが、そんな感じ。
因みにストーリーは・・・個人的にはどうでも良いです。アカデミーでオリジナル脚本賞とか取ってますが、どうでも良い感じ。どういう映画なのか簡単に述べようとすれば、HIROMIX の写真を映像化したような映画、ですかね。彼女の写真が作り出す雰囲気が好きな人にはお薦め。というか本人出演してるし、雑誌でのインタビューでコッポラ監督の発言の中に度々登場するし、少なくともコッポラ監督は HIROMIX の写真が好きなようです。ま、でもここら辺は情報不足。他にも気になる事があるので色々調べてみよう。
ところで・・・検索してて気付いたのですが、HIROMIX と名乗る人(男女とも)が数人いるみたいなのですけど、一体何なんだろコイツラ。
GO / 行定 勲
この映画に興味を初めて持ったのは、と或る日記サイトで触れられていたのがきっかけである。クラブで催された友人の誕生パーティーに呼ばれ、退屈さから逃れるように落語をイヤフォンで聞く窪塚洋介扮する杉原の目の前に、柴崎コウ扮する桜井が入口から続く階段をゆっくり降りて来る。イヤフォンに拠って遮断された耳には故三遊亭円生の " 紺屋高尾 " の一席が耳障りの良い音楽のように吸い込まれる。この一席は花魁の話で、その行を背景に階段を降りてくる姿があまりにも艶めかしく、何度も繰り返して観てしまうといった文章だった。僕はそれがどんなモノか確かめる為にこの映画をレンタルしたのでした。結果として僕はこの映画が大変気に入り、一晩で三回見直した。しかし一番気に入ったのは前述の場面ではなく、冒頭の " グレイト・チキン・レース " の場面である。矮小なプライドの為の愚かな行為として取られがちな事であって(もしかしたらそうであるがこそ)も、当事者に取っては真剣に、そして楽しんでいるのである。最高最高。両拳を突き上げ地下鉄構の闇に走り去っていく様は、強烈な喜びを観る者に巻き起こす。薄暗いベッドの上に躍り上がらんばかりである。
Monsieur Hire / Patrice Leconte
連休中は思いっきり散財してやろうと目論んでいた僕ですが、貯金を引き出すのを忘れていました。・・・いや、財布の中に在る程度は持ち合わせているのですが、羽目を外して遊べるほどは入っていません。散髪して(まだ行ってない)映画を数本観ればそれで底を尽きます。ああ。まあ、そういう訳で地味に過ごす事にした訳で、取り敢えずヴィデオでも借りて来ようとレンタル店に赴きました。そして何故か急にフランス映画を観たくなりまして物色してみましたが、棚の半分くらいは何やら観た事のあるモノばかり。そう言えば10年くらい前に僕の中でフランス映画ブームがありまして、その時に手当たり次第に観ていたのです。そんな中でパトリス・ルコント監督の「仕立て屋の恋」を未だに観ていない事を思い出し、それを選び取りました。
いやあ、予想はしてましたが、今結構陰鬱な気分になっています。でも不快な気分ではありません。このヴィデオを選び取った時点で僕自身はそれを受け入れているのですからね。映像はさすがに美しいです。「髪結いの亭主」の時にも思いましたが、被写界深度の浅い映像(ピントの合っていない部分のボケが強い)は対象への近さを感じ、映像の息使いを感じられるようです。物語の骨子がシンプルで、それだけに自分の感情を乗せやすい。人(男)に拠っては一度は夢想した事があるかも知れない、そんな(悲しい)物語です。
Gangs of New York / Martin Scorsese
結構好きなんですよ、ギャング物って。「ゴッド・ファザー」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」とか。この映画は前述の二作品に比べるとやや感傷的な感じ。ずっと以前に観た、同じくダニエル・デイ・ルイスが出てる「エイジ・オブ・イノセンス」もこんな感じでした。大がかりな映画を手がけると少々緊張感に欠ける気がします。「タクシー・ドライバー」はそんな事なかったんですが。都市の夜の濃密さ、深さが良く描かれていて、もう路地の匂いまで嗅げるくらいにリアルでした。話が逸れましたが、この映画も冒頭でいきなり集団での殺戮合戦が映し出されるものだから、観ていてどうしようかと思いました。ケチを付けてばかりでは話が面白くないですね。この映画の舞台は19世紀のニューヨーク。港には頻繁にアイルランドからの移民を乗せた船が着き、南北戦争で国は荒廃し、中国人のコミュニティーは既に各所に存在し、混沌と暴力が街や社会を形成する僕達には縁遠い世界の話です。こういうのはワクワクします。物語の主軸は父親の敵討ちなのですが、正直僕はそんなのはどうでも良くて、混沌の中の人間の正直さ・愚かさを観ていられればそれでOK。この映画の最大の収穫はそこでしょうか。






