DOG ON THE BEACH
Unplugged / Arrested Development
脳幹を巡る音楽
20年近く前の話。その年の夏、強大な台風18号・19号に襲われ当時家族と共に住んでいた古い借家が半壊してしまったので、近所に残っていたこれまた古い家を借り上げ住み替える事になった。家主が新築した家に引っ越した為に偶然空き家となっていたのだ。十分過ぎる程に古い家屋であったので、所々雨漏りがするような有様であったがとても広い家で、家族が住んで余った二階の二部屋には僕一人が居座れるような状況であった。
季節はよく覚えていない。寒い季節ではなかったはずなので恐らく秋だろう。その頃には畳敷きの部屋に布団をひいて、枕元に置いたポータブルラジオを聴きながら夜を過ごす習慣がついていた。その夜も同じ様に過ごしていた。うつらうつらとしているとラジオから小泉今日子の呟くように話す声が聞こえていて、声が途切れるとチープな感じのテクノ・ミュージックが流れてきた。
半覚醒の状態で聴くその音楽は分子レベルで僕の頭の中に入り込み、駆け巡った。これがテクノか。その時そう思った覚えがある。それまでテクノ・ミュージックに関して殆ど知識も興味もなかった僕に、その音楽は今までに味わった事のない快楽をもたらした。
その頃の僕は、個人的な精神史上最悪な日々を過ごしていた。何もしていないのに疲れ果て、心を亡くしていた。そんな僕には、情感を全て洗い流し、よろめくように転げ回る音階がとても心地良かったのだ。僕の頭の中で音が踊る。極小サイズの陶酔はやがて僕の全てに波及した。単音が連なるだけのその音楽は、何処までも登り詰めるようにうねった。この音楽がいつまでも続けば良いと思いながら、僕は眠りに落ちた。
季節はよく覚えていない。寒い季節ではなかったはずなので恐らく秋だろう。その頃には畳敷きの部屋に布団をひいて、枕元に置いたポータブルラジオを聴きながら夜を過ごす習慣がついていた。その夜も同じ様に過ごしていた。うつらうつらとしているとラジオから小泉今日子の呟くように話す声が聞こえていて、声が途切れるとチープな感じのテクノ・ミュージックが流れてきた。
半覚醒の状態で聴くその音楽は分子レベルで僕の頭の中に入り込み、駆け巡った。これがテクノか。その時そう思った覚えがある。それまでテクノ・ミュージックに関して殆ど知識も興味もなかった僕に、その音楽は今までに味わった事のない快楽をもたらした。
その頃の僕は、個人的な精神史上最悪な日々を過ごしていた。何もしていないのに疲れ果て、心を亡くしていた。そんな僕には、情感を全て洗い流し、よろめくように転げ回る音階がとても心地良かったのだ。僕の頭の中で音が踊る。極小サイズの陶酔はやがて僕の全てに波及した。単音が連なるだけのその音楽は、何処までも登り詰めるようにうねった。この音楽がいつまでも続けば良いと思いながら、僕は眠りに落ちた。
千の風になって
昨年末の事。恒例の紅白歌合戦で秋川雅史が歌う「千の風になって」を聴いた。僕は全然知らなかったのだけれど、世界中で知られる詩に新井満が曲と訳詞をつけた歌であるらしい。聴いていて、不覚にも家族の手前で涙を流しそうになった。映像の中でも紹介されているように、この詩の起源は作者不詳と認識されているようなのだが、色々と探してみると諸説あるようである。詩の内容を読んでいると、何となく神道に近いような気もする事から、個人的にはネイティヴ・アメリカンの民話から出たのではないだろうかと思っている。
「あなたがわたしを思うのならば、わたしはいつでもここにいます。」というような文を何処かで読んだ事があるような気がするのだけれど、あれは一体何の文章だったのだろうか。
「あなたがわたしを思うのならば、わたしはいつでもここにいます。」というような文を何処かで読んだ事があるような気がするのだけれど、あれは一体何の文章だったのだろうか。
- 千の風になって(新井満のHPより)
The tears of a clown
- 2006-07-13 木曜日
- Category - Art
- Tag - music / literature
忌野清志郎が喉頭癌で入院した。彼の歌声をもう一度聴く事は出来るのだろうか。
昔、中森明夫が書いた東京トンガリキッズという本を読んだ。アマゾンのレビューを読んでいたら、それはもう16年前の事らしい。ちょうどその頃「世の中というのは、思っていたより病んだ人間ばかりなんだな。」という事を思い始めた頃だ。
その中に、RCサクセションをモデルにしていると思われるバンドを愛して止まない高校生の少年の話(かなりうろ覚えだが)がある。僕はその短編が凄く好きだった。関東圏の地方に住むその少年は、毎日が退屈で面白くなく、そのバンドの曲をウォークマンで聴くのを楽しみに生きているような状態だった。そして待ちに待ったある日、その少年が長い時間電車に揺られ、東京へそのバンドのライヴを観に行くという話。
その話の中で、バンドは少年に取って余りに遠く、目映く光り輝く存在として描かれている。その存在にどうにかやって近づき、手を伸ばそうとする少年。その後ろ姿は直視するのが憚られる。
かつて同じ背中を持っていた少年達は、15年後の今どうしているだろうか。王様の放つ光は衰え、病に冒されている。
昔、中森明夫が書いた東京トンガリキッズという本を読んだ。アマゾンのレビューを読んでいたら、それはもう16年前の事らしい。ちょうどその頃「世の中というのは、思っていたより病んだ人間ばかりなんだな。」という事を思い始めた頃だ。
その中に、RCサクセションをモデルにしていると思われるバンドを愛して止まない高校生の少年の話(かなりうろ覚えだが)がある。僕はその短編が凄く好きだった。関東圏の地方に住むその少年は、毎日が退屈で面白くなく、そのバンドの曲をウォークマンで聴くのを楽しみに生きているような状態だった。そして待ちに待ったある日、その少年が長い時間電車に揺られ、東京へそのバンドのライヴを観に行くという話。
その話の中で、バンドは少年に取って余りに遠く、目映く光り輝く存在として描かれている。その存在にどうにかやって近づき、手を伸ばそうとする少年。その後ろ姿は直視するのが憚られる。
かつて同じ背中を持っていた少年達は、15年後の今どうしているだろうか。王様の放つ光は衰え、病に冒されている。
ナンバーガール映像集 / Number Girl
2枚組DVD。Disk1 は福岡でのインディーズ時代からのライヴ映像やスタジオでの映像記録を時間軸で並べたもの。Disk 2は Video Clip 集と、京都大学西部講堂でのライヴ映像。僕はこれまで、このバンドの音源を長い事聴いてきたのだが、ライヴには行った事がないし、映像で観るのも初めて。予てから話は聞いていたが、リードギターの田渕ひさ子がすこぶる格好良い。以前から思っていた事で、女がギターを弾く(ストラップを肩にかけている)姿で格好良いのって観た事ないな、というのがある。ガールズバンドはどうしてもつまらなく感じるので聴かないし、女のギタリストを観る機会が極端に少ないというのもあるのだろう。しかしこの人は本当に格好良い。それは男のギタリストの格好良さとは何処か違う。ただ、それが何なのかは今のところ判らない。格好良いのは姿だけではない。音が良いのだ。あの煌めくガラス片のようなギターの音色はこの人が出していたのだ。彼女を観て、Fender Jazz Master というギターがまた好きになった。
余談だが、このDVDのクレジットにもちゃんと三栖一明の名前が載っていて安心した。
Silent Snow Stream / Cornelius
- 2006-01-22 日曜日
- Category - Art
- Tag - music / philosophy
雪をモチーフにした曲と言えば、僕はこの曲を思い出す。Cornelius の1st アルバム「 The First Question Award 」に収められた「 Silent Snow Stream 」。小沢健二の書く詩はかなり好きだが、小山田圭吾の書く詩は余り好きではない。しかしこの曲の詩は好きである。楽曲で言うのなら小山田圭吾の作る曲の方が好きなのだが。
負の感情は、それを受けた者にも負の感情を芽生えさせ、やがては連鎖を生む。
雪の降る日は、出来れば微かに光を残す空であって欲しい。空を見上げ、その先に見届ける物が無いにしろ、その視線を吸い込めるだけの色は蓄えていて欲しいのである。
いつ頃までだろうか。昔は、全ての事を知らなければ気が済まなかった。今はもう、それはない。知ろうとすればする程、何処かで誰かの悪意らしきもの(若しくはそう思えてしまうもの)に突き当たる。とても嫌な気分になるし、暫くその事に捕らわれてしまう。つまりは、猜疑心の塊となり、何もかもから距離を置いてしまうようになるのだ。もうそんな事はしたくない。どうせ全てを知る事が出来ないのであれば、何も知らない方がマシだ。
昼過ぎに聞こえるヘリコプターの音を
僕は聞きながら悪い夢ばかり見てる
遠く吸い込まれるいらだちの声
きっと正しいのはこの世界だけだろう
真夜中にゆっくりと降り出した雪の中へ
僕達の声が消えてく
降りそそぐ 静かすぎる雪の中へ
負の感情は、それを受けた者にも負の感情を芽生えさせ、やがては連鎖を生む。
雪の降る日は、出来れば微かに光を残す空であって欲しい。空を見上げ、その先に見届ける物が無いにしろ、その視線を吸い込めるだけの色は蓄えていて欲しいのである。
はぐれメタル魔神斬り@日本武道館 / くるり
くるりのライヴは、2000年の 2nd アルバム「図鑑」のツアー「世田谷線旧型車輌を残そうキャンペーン」の一環で、渋谷公会堂で観た時以来だ。当時はツアーメンバーも三人きりで、ぎりぎり目一杯の演奏であったが、今回は5人。勿論曲目も違うが、以前とは違う落ち着きを感じた。演奏スタイルはさほど変わってはいなかったのだが、より流麗になった気がする。アルバム「NIKKI」について書いた時、僕はくるりは岸田繁のワンマンバンドだと書いたが、ライヴを観るとその考えが覆されるような思いだ。あの5人が揃わなければ、あの演奏は実現出来なかっただろう。5人きっちり揃った上でのロックンロール・バンドだった。ロックンロール・バンドだなんて書くと、酷く時代錯誤な印象も受けるが、本当にそんな感じだったのだ。
一応、何処からか拾ってきたセットリストを書いて置こう。まあ、誰かしら書いているものだ。
- お祭わっしょい( 6th Album -Nikki- )
- Ring Ring Ring !( 6th Album -Nikki- )
- Long tall sally( 6th Album -Nikki- )
- Superstar( 6th Album -Nikki- )
- Bus to Finsbury( 6th Album -Nikki- )
- Morning Paper( 5th Album -Antenna- )
- Baby, I Love You( 6th Album -Nikki-
- Army( 4th Album -The world is mine- )
- Tonight is the night( 6th Album -Nikki- )
- Birthday( 6th Album -Nikki- )
- ハイウェイ( Soundtrack -ジョゼと虎と魚達-)
- ばらの花( 3rd Album -Team Rock- )
- 虹( 1st Album -さよならストレンジャー- )
- 青い空( 2nd Album -図鑑- )
- 水中モーター( 4th Album -The world is mine- )
- ワンダーフォーゲル( 3rd Album -Team Rock- )
- ( It's Only ) R'n R Workshop !( 6th Album -Nikki- )
- 【 Encore 】
- 赤い電車( 6th Album -Nikki- )
- 尼崎の魚( 1st Single B-side )
- 東京( 1st Album -さよならストレンジャー- )
- 街( 2nd Album -図鑑- )
非常に個人的な事を書くと、僕は日本武道館で「東京」を聴くのを楽しみにしていたのだ。念願が叶って嬉しい。そして何より、ラストに「街」である。びっくりだ。ヴォーカルで始まる曲だが、岸田繁が歌い出した途端、不覚にも泣き出しそうになってしまった。声は裏返り、酷く掠れているにも関わらず、岸田繁は更に声を張り上げる。気が付けば僕も一緒に声を張り上げていた。何度目かのサビのフレーズで、掠れていた岸田繁の声がくぐもりを見せ、次の瞬間突き抜けた。
すっかり落ち着いたと思ってたら、今でもこんな曲が歌いたかったんだ。何だかとても嬉しい。












