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DOG ON THE BEACH

炉心融解 / 鏡音リン



 今更な事を書くけど、久しぶりに観たので。2008年末に発表され、恐らくニコニコ動画で二度のミリオン再生を稼いだ動画。まとめてるサイトも在るし面倒なので詳細は書かないけど、これを観てると、今後の音楽制作がどういう方向に進んでいくのか色々と(余計なお世話だが)考えてしまう。これは楽曲も、歌詞も、動画も出来が良いので人気を博すのはよく解る。でもそれ以上に僕が感心するのは、ヴォーカロイドだと歌い手の持つ音域や息継ぎなどを全く考慮せずに作曲出来るという事実である。特にこの曲だと、淀みなく何処までも伸びていくヴォーカルは最大の魅力だ。当たり前だけど、まさに超人的。作曲の自由度が人類史上希に見るほど高いのだ。
 どの楽曲か忘れたけど、モーツァルトが贔屓のソプラノ歌手に依頼され、そのソプラノ歌手の喉が追いつけないほどの複雑さと音域で(意地悪く)作曲して渡したら、見事歌いきられてしまったというエピソードが在ったように思うが、そんな遣り取りが発生する事も今後は無いのかも知れない。

 一方、生音を好み、歌い手の声質や抑揚など、生身の人間にしか出せないような要素を音楽の重要なものとして捉えているなら、幾ら音が自由でもフェイクにしか思えないかも知れない。ただ、現在ではエフェクトのかかったヴォーカルを好む流れもあり(ex. Perfume)、当座の流れとしては二分するのかも知れない。どちらがより優れているか、というのは既に土俵違いで、音楽の何を好むのかという事になりそうな気がする。それはたぶん生活のスタイルというか、より自分の好む質感であるのかどうかという事になりそうだ。

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 因みに上記のリンク先にこの動画のクレジットが記載されていて、各担当の自サイトへ繋がってるんだけど、誰も彼も凄そうだ。もしかすると、この国の才能はこの界隈に集約されつつあるのかも知れない。

 この曲もそうだけど、今を持って終末感漂う昨今の歌詞の世界観については、また別の機会に。この歌詞なんて、人を絞め殺す事を夢想(動画では、絞め殺す相手は幼い頃の自分にようだ)しておいて、挙げ句の果てには「自分が居ない世界の方が正しい」みたいな事言ってるし。一般に流通する J-POP ではまずお目にかかれない歌である。
  • Last Modified : 2012-03-25

冒険者たちのバラード

 ふいに思い出したガンバの冒険のエンディング・テーマ。このアニメーションは子供の頃によく観てたんだけど、イタチがとても怖くて震えながら観ていた気がする。

放映バージョン


フルコーラス


 昔のアニメーションのエンディング・テーマはどうしてああも暗い曲が多いのだろうか。例えばこの曲なんかはメロディの複雑さからしても、とても子供向けに作られたとは思えない。そういう時代だった、では片付けられないものがある。

田原坂

 およそ20年前の、確か夏。僕は福岡から民営化されたばかりのJR九州の列車に乗って、当時好きだった1歳年上の女の子に会う為に熊本へ行った。とこう書くと、当然僕は一人で列車の座席にぽつねんと座っている姿を想像するであろうが、実際には連れが居たのである。しかも女の子。彼女達は仕事場の同僚であり、僕の好きな女の子は社員で、連れの女の子はバイト。店が福岡から撤退し熊本に移ったので「半年ぶりに会いに行こうよ。」という誘いに迂闊に乗ってしまった訳である。
 そう。今思えば何と間の抜けた事をしたものだと思う。その二人連れで会いに行けばどう思われるか判りそうなものだが、当時の僕はそれが判らなかったのだ。童貞とは実に愚かな生き物である。いやまあ、そんな事はどうでも・・・良くはないが今回の話には余り関係がない。

 好きな女の子の顔を久しぶりに見て、その後熊本新市街で散々遊んだ挙げ句、終電ぎりぎりの福岡行きの列車に乗る。その復路での事。密度の高い肥後の夜を、線路を軋ませながら走る列車はやがて田原坂駅に停車した。無人駅のホームを照らす照明以外は全くの闇で、轟音にも近い虫の声が僕の鼓膜にまとわりついた。そこが西南戦争時の古戦場である事を僕は知っていたと記憶するのだが、歴史に疎い僕がそんな事に興味を持っていたとは思えないので、その場での連れの女の子が教えてくれたのだろうと思う。
 圧倒的な闇と虫の声に取り囲まれた無人駅。列車内の明かりの中とホームを照らす明かりの下は、どうにか許された人間のせめてもの居場所である。その光景は今でもたまに思い出す。都市部に住んでいると、人間以外のものに圧倒される事は殆ど無い。その時の状況が僕にとって「快」をもたらしていた訳ではない。連れの女の子の事は別に好きでも何でもなかったので、早く家に帰りたいなあと煩わしく思っていただけだし、一刻も早くその場所を去ってしまいたいとさえ思っていたはずである。しかしながらあの無数の虫の声の塊は、漠然とした恐れと共に僕の頭の中の一角を占めて消えてくれないのである。

京都市バス 京都駅~大原

 1月6日、前日に歩き過ぎて飽きていたのもあってか、バスにでも乗って少し遠出をしたくなった。目指すは三千院と宝泉院。庭園を眺める事を目的とした1時間ほどの旅である。勿論イヤフォンから流れるBGMはくるり。
 そして、この道程が思いの外楽しくて今となってはその映像ばかりが目に浮かぶ。座席は狭く、僕如きの脚の長さでも前の座席の背中部分に膝がつっかえてしまう。それでも車窓の外を眺めていれば心躍るのである。路線は京都駅から烏丸、四条を抜け鴨川そして白川沿いの道を上流へと上っていく。鴨川では水面を鴨がよちよちと泳ぎ、白川では浅瀬にすっくと白鷺が立っている。河の下流から上流へと巡るのは楽しそうだなと夢想した事はあったが、実際に行ってみるとこれほど楽しいものだとは思わなかった。
 街を離れ、民家や人の姿が減っていく代わりに木々が増え、山が迫り川幅が細くなっていく。バス停でぽつねんと待っている人々を見ると早くバスに乗せてあげなくてはいけないような気分になる。もしかしたら今回の京都の旅で一番楽しかったのはこれかも知れない。偶然に乗り合わせた路線だが、今住んでいる関東でも、同じように河を遡る路線がないか探してみようかと思っている。

故郷という幻想背景

 年末年始に故郷へ顔を出すのが習慣になっている。そうして自分が生まれ育った土地に帰る度にいつも、何とも言いようのない複雑な気分に苛まれるのもこれまた常である。

 僕が生まれたのは如何にも取り残されたような田舎町で、帰る度に年々寂れていく街並みに淋しさを覚える事は、年老いて小さくなっていく両親の姿を見るのと同様に非常なる無力感を感じる事である。それでも両親や兄弟はその場所でしっかりと生活を続けていて、相変わらずな部分は相変わらずで、その存在に代わらぬ重みを持たせている。恐らく、彼等がもし死んでしまったとしても、後に僕の中に残るのはそういう部分なのではないだろうかと思っている。正確なところは実際にそうなってみなければ判らないが、何となくそう思うのである。

 廃れ朽ちていく部分が増えるのと同時に、新しく生まれ出る部分も増えている事も確かである。それは家族の事であれ町の事であれ同じ事。家族の誰かが目新しい何かに興味を持ち始めていたり、新しい知り合いが増えていたり、新しい店が開店していたり、新しい誰かが近所に住み始めていたりとかそういう事が色々と目に付く。確実に失われてしまうのは、かつて僕が見知っていた何か。子供の頃遊んでいた用水路が地下に埋設されてしまっていたり、登って遊んでいた神社の大木が伐採されていたり、通っていた保育園が空き地に代わり果てていたり。
 故郷とは、いつの時でも変わらぬ視線で自分を受け止めてくれる場所では決してない。勿論そういう部分が在る事も否めはしないが、それはある種の内なる幻想でしかない。自分にとっては故郷でも、現在は過去を塗り替え、自分自身の存在とは全く無関係に絶え間なく変化し続けているのだ。僕等は安心を得る為に故郷へと帰る。しかしそれと同時に過去と決別する為に故郷へと旅しているのかも知れない。

砂漠の夢

 もうずっと以前に、深夜のテレビ番組で放映されていた(と思しき)アニメの話。その時僕は既に眠気で朦朧としていたのだが、何気なしに点けたテレビでアニメーションが流れていた。特に絵が気に入った訳でもなく、そのストーリーだけが記憶にいつまでも残っている。

 ★

 或る雄の子犬が主人公の話で、彼がいつもの散歩の途中でスケートボードを見つける。彼は興味津々で、恐る恐るそのボードに飛び乗る。ボードを坂道を下り始め、段々スピードを増していく。彼はそのスピード感に有頂天になった。こんなにも素晴らしい気分になれる事に喜びを感じていた。

 そこでとんでも無い事が起きる。彼が予てから思いを寄せていた雌犬が、横道から飛び出してきたのだ。坂道はまだまだ続き、このまま行けばスピードは更に上がって、大好きな彼女に衝突してしまう。しかし彼にはボードを止める方法が判らない。
 彼は必死で祈った。自分が消えてしまう事を。大好きな彼女に怪我をさせるくらいなら、いっその事消えてしまいたいと。
 ボードが更にスピードを上げ、彼女にもう少しでぶつかるというその瞬間、彼は怖くて目を閉じた。

 再び目を開けた彼は、熾烈な太陽の光が降り注ぐ砂漠に居た。そして自分が、亀の背中に乗っている事に気付いた。

 ★

 僕が覚えているのはここまで。恐らく眠ってしまったのだろう。後から幾ら考えても、それがどの放送局で、どの番組であったのか思い出せない。記憶も酷く曖昧だ。冒頭に「思しき」と書いたのは、もしかしたら自分が見た夢かも知れないと思っているからだ。
 あれは一体どういう話だったのだろう。大好きな雌犬を自分自身から守る為に、自分を消してしまった雄犬は、あれからどう生きたのだろう。今でも気になって仕方がない。

イルミナシオン

 12月の初めからクリスマス当日まで、部屋に電飾を施すようになって随分経つ。そんな事をやり始めたきっかけは何だったのかと思い出すと、なるほどちゃんと理由は在った。

 何年前なのか思い出せないくらい昔、12月にオアフ島に行った時の事。夜のダウタウンに繰り出して、ポルノショップを冷やかしたり、顎が外れそうなくらいにデカいハンバーガーを食べたり、ストリップバーに連れ込まれたり、実弾撃ったりして遊んだりした後、連れだった数人でほろ酔い加減でホテルまでの道を歩いて帰る途中だった。
 入り江の橋を渡ると、何棟ものコンドミニアムが夜の中にそびえ建っていた。その中の一つの部屋のベランダに、小さなイルミネーションが飾りつけてあり、砂粒のように小さな三原色の光が、何をも照らし出す事なく点滅していた。その姿が、ひっそりと何かを祝い、何かを祈っているようでとても良かった。僕は夜の中に立ったまま、暫くの間その点滅を見上げていた。

 そしてその次の年の冬。僕はその光景を思い出し、真似てみようと思ったのだった。あんな風に何かを、祝ったり、祈ったりしてみたかったのだ。その時の僕に、何かしらその対象となるものが存在していたのかどうかは全然思い出せない。もしかしたら、何でも良かったのかも知れない。ただ、そうしてみたかっただけなのかも知れない。
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