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DOG ON THE BEACH

健康優良不良少年

 AKIRA を久しぶりに読み返す。どれくらい振りだろうか。6巻を1993年3月に初版で発売していて、その発売を心待ちにしていた記憶がある。夜中までかかって一気読みして、その後も眠れなくなった。いつまで経っても刺激の多い漫画である。

 さて、バイクに跨り疾走する不良少年とは王道中の王道(解りやすいという意味で)であるが、何故にこうも憧れてしまうのだろうか。思えば優良少年にも不良少年にも成り損ねた僕は、中途半端なままで少年期を過ごした。友達の兄貴や小学校の頃に一緒に野球をして遊んでいた友人達は何故かしら半数以上が不良になってしまい、夜毎にバイクを乗り回していた。当時の僕は崩れ始めの時期で、不良品と言えばそうだったのだが彼等のような格好良さもなく、ただただ燻り続けていた。つまり外の世界へ出て行く事が出来なかったのである。今思えば不健康極まりない状態だ。バイクの疾走とはつまり行き場のない欲求を霧散する或る種の活路であったのだ。後年、中型の免許を取得し実際に自分で走ってみてよく解った。走っているだけで、自分の中に鬱積した実体の無い不快物質を遙か後方に置き去りにする事が出来るのである。

 近頃、何年も前にバイクを降りたはずの古い友人達が再びバイクを買ったと聞いた。息子が生まれたばかりなのに、中古で買った SR400 のマフラーを純正に換える事(正直この部分は理解しかねる)で頭が一杯のヤツとか。長女が幼稚園に上がったばかりなのに、愛車の交換部品を確保する為に同じ車種のジャンク品を買うヤツとか。
 僕もまたバイクに乗りたいなあ、と思う。何ならこの際大型の免許取ろうかな、とも思う。しかし今以上にやる事増やしても困るなあ、とも思うのである。

 すっかり AKIRA とは関係の無い話になって仕舞った。強引に纏めると、不良少年はずっと居なくならないだろうし、不良少年に憧れる少年(だった人も)も居なくならないのだろうな。

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夜の砂浜、横たわる夕顔。

 母から着電。自分の事は殆ど話さずに、母の周辺の話をあれこれと聞く。先日伴侶を亡くした祖母は、変わらずに同じ家に住み続けているという。子供らが「独りで大丈夫ね?」と尋ねても「大丈夫。」と答え、施設に入る事や、子供らの内の何処かに同居する事を静かに拒んでいるらしい。「自分の家ば離れたくないっちゃろね。」と僕。母もそれに同意する。
 それでも母は、齢90を越えた祖母の皺だらけの身体を見て、その老いの姿に少なくない衝撃を受け、祖母の行く末をひどく心配している。頃合いを見計らって話してみるという。

 先月、末の弟が祖父の墓参りの為に一時帰国した。祖母はとても喜んでいたようだ。僕は未だ祖父の墓に参っていない。それもそうだが、祖母の方が気に掛かる。長い年月連れ添った祖父を亡くした祖母は、今どんな気持ちでその家で過ごしているのだろうか。子供らは皆家を出、その内の何人かは病を患っている。日没を眺めるように、静かに自分の生を見つめているのだろうか。暫くの間、祖母の気持ちになって過ごしてみよう、などという馬鹿げた事を思いつく。そんな事が僕に解る訳がないのだ。

 緩やかな雨垂れの音の向こうから、微かに虫の音が聴こえる。

痩身の老猿

 今朝、弟から携帯へ電話があり、母方の祖父が亡くなった事を知る。今現在、仕事に忙殺されいて、とても故郷へ帰る余裕がない。じいちゃん、ごめん。
 思えば、もう数年来祖父の姿を見てない。最後に会った時には、まだまだ元気であった。彼の事を思い出す時は、いつも子供の頃の記憶が蘇る。大の酒好きである祖父は、一風呂浴びた後には必ず晩酌をする。電気式のポットのような器具で、いつも燗をつけていた。勿論、隣に座ってる僕にもお猪口が回ってきて、一口は付き合わされた。祖父は、酒を呑んでいる時はいつも赤い顔をしていて、楽しそうだった。
 今、彼の事を必死に思い出そうとしているのだが、何かを話したという記憶がない。祖母や母、その兄弟達と話してるのを隣で聞いていたという事しか覚えていない。内容は全然覚えていなくて、祖父のしゃがれた声しか思い出せない。たぶん、孫の遊び相手になるような人ではなかったのだろう。寡黙という感じではなかったし。本当に、酒を呑んでいる姿しか思い浮かばない。

 年々、遠くに在る人を想うという事が出来なくなっている。長く生きていると、誰でもそうなっていくものなのだろうか。寂しいような気もするし、それはそれで良いような気もする。でも今夜は、色々な人達の事を思い出しながら眠る事にしようと思う。

長いお別れ

 享年95歳。死因は腸梗塞。

 父の兄弟が11人居るのは知っていたが、孫(つまり僕の従兄弟)が28人も居る事を初めて知る。下は22歳から上は46歳。その内で僕が存在を知っていたのは半分くらい。何故そんな寂しい事になっているのかというと、1971年に既に他界した祖父の遺産相続の件で父の兄弟が揉めていたからである。その話は今回もあった。勿論、孫の立場で僕がその話し合いに参加する訳はないので、詳しくは知らないが、最後には談笑していたところをみると、ある程度の妥協は成立したのだろうか。そうであって欲しい。

 親族の人数が多すぎて、別れの膳は3交代で食べた。その周りを曾孫が嬌声をあげながら走り回る。

 祖母の安眠する棺桶に、親族が皆で花を添える。曾孫は孫に抱き上げられて花を添える。叔母や従姉妹達の泣き腫らした顔をずっと見ていた。百合の花を祖母の髪の毛へ差した。美しい顔をしていた。祖母の冷たい頬に触れた時初めて、もうこの人は目を覚ます事はないのだな、と思えた。

 葬儀は浄土真宗にて行われた。本家は宗教を持っていない。元々本家の家屋が在った場所の目の前に、浄土真宗の寺が在ったからに過ぎない。祖父の時からの流れだ。

 火葬場で、祖母の棺桶が窯に送られ、分厚い鉄の扉が閉まる時が一番辛かった。
 採骨室で、皆が交代で祖母の遺骨を、箸で渡して骨壺へ入れて行く。長い間不義理をしていた罪悪感があって、率先してその中へ入って行く気になれずに、入口の扉で自分が最後になるまで待っていた。しかしそれを従姉妹に見つけられ、先に入るように即される。
 採骨を終え、骨壺が運び出されても、父と数人の従兄弟は祖母の遺骨をじっと見つめていた。そして彼等が立ち去っても尚、僕は扉の前を離れる事が出来なかった。祖母が完全に視界から消えてしまうまで見ていたかったからである。後悔を伴わなければ、祖母を思う事が出来ないとは、その文字通りに、情けない。

 通夜の後、孫数人で寝ずの番をしている時、誰が言い出したのか、暇潰しに家系図を手書きで作り始めた。孫が不確かな記憶で作っていたので曖昧な部分が多かったが、葬儀の前後で親族みんなに確認し、加筆して貰ってかなり正確な家系図が描き上がった。叔父や叔母達は非常に喜んでいた。皆は口々に「これが最後の集まり」と言っていたが、たぶん、本当はバラバラにはなりたくないのかも知れない。若い従兄弟達がどう思っているのかは判らないが、僕はこれをデータ化し、清書して配ろうと思っている。何れの日にか、何かの気休めくらいにはなるだろう。
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