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DOG ON THE BEACH

大つごもり夜話

 スーパーの入口の横、壁に貼りだされたチラシを私は眺めている。仕事収めの帰り。ななめがけにした布製のバッグが肩からずり落ちそうになる。それを左手で受け止め、右手にさげたポリ袋を持ちなおす。食品売場は既におせちやその他お正月用のものばかりが並んでいて、否応も無くお祭り感がただよっている。日常で使う食材は野菜やレトルトなどのパッケージ商品があいかわらずの場所に陳列されているだけ。私はそちらの棚で買い物をすませた。

 私はどうしても、こういうお祭り的な雰囲気に入りこめない。騒がしくてイヤなのだ。もしかしてそれは私の育ちのせいかもしれない。騒がしい家庭だった。私はそれがとても嫌いで、いつも独りになりたいと思っていた。

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 父はこれまでに三度会社をおこし、三度とも倒産した。そして現在四度目に挑戦中だ。家族はもちろんその渦中で翻弄される。生活の不安もかえりみずに父は私財を投資し続けた。三度目の倒産の後、ちょうど専門学校を卒業出来た私は家を出た。父はものすごく反対したが、私は負けなかった。私が欲しかったのは安定した生活だ。地道に働いていればそれなりに暮らせる毎日だ。父の影響下にいる限りそれはないと思った。私には二人の兄がいる。彼らは父の仕事を手伝う形で家にずっといるが、大人になってからは余り話したこともない。彼らは父に似た性質を持っているのか、それとも父に合わせているだけなのか、何かしら反抗している姿を見たことがない。私にとっては同類の人間だ。母だけは違うだろうと思っているが、彼女は父に従うばかりで、何か相談をしても「それはお父さんに相談しなさい」と言ってしまうような何もない人だ。そんな人達の中で暮らしていると、いつのまにか私は家族の中で孤立し、結果として独りで過ごす時間が多かった。

 そんな彼らからは「おまえには表情がない」「何だか怖い」とよく言われた。そりゃそうだろう、と思う。家族の中でたった独りそこに居ることを拒否しているのだから当たり前だ。この人達はそんなこともわからないのかと、私はさらにくすぶった。でも困ったのは、私は家にいる時以外でも同じ表情をしているらしい。学校の友達にも言われたことがある。私が男の子にモテなかったのもそのせいかもしれない。学生の頃に一人だけ付き合ったことのある男の子からは、「何を考えているのか全然わからないから辛い」と言い残されてフラれた。あの時はすごく落ち込んだな。ただその場合は、付き合ってるうちに男の子の横暴な面を見てしまうと、父や兄達の事を思い出し、げんなりしてしまって私は反射的に閉じてしまうのだ。そんな時には私はきっと能面のような顔をしているのだろう。でもそれはしょうがない。しょうがないよ。だってイヤなのだ。その人から離れたくて仕方なくなってしまうのだ。

 そんなことがあってから、私はさらに独りで過ごすようになった。そしてそれがとても気に入っていた。文具メーカーにデザイナとして就職した私は、毎日決まった時間に出社し、遅くなることが多いけど、一日しっかり働いて、帰りに駅のそばのスーパーで買い物をして部屋に帰る。安売りしていたお総菜をそのまま食べたり、作り置きのものを温め直して食べたり、録画していたドラマを観たり、本を読んだり、ぼんやりしたり。誰も私の邪魔をしないし、とても幸せだと思った。
 固定電話は置いてないし、携帯の番号も家族には教えていない。友人や知人とはメールでのやりとりだけだから、非常識な時間に電話で起こされることもない。経済的に自立したことで、私は穏やかで理想的な生活を手にすることが出来た。私はそのことがとても誇らしい。ただほんのちょっと、これは生活が安定していて余裕があるからだと思うけど、誰かが私の生活圏内に入り込んできても、悪くはないなと思っている。それはまだ、ほんのちょっとという限定的なものだけれど。

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 レジで支払いをすませると、私はスーパーの外に出た。するとそのまわりで正月飾りを売っている人達がいた。吹いてくる風が冷たいので、マフラーをキツく巻き直しながらそれらの商品を眺めてみた。個人でやっている人がこの場所を借りて商売をしているのだろう、商品はどれも、どことなく質素な雰囲気があった。その中に、小ぶりで可愛らしいしめ飾りを見つけた。私は思わずそれを手に取り値段をたずねていた。「800円です」こんなに小さいのにそれはちょっと高いなーとは思ったのだけれど、ご祝儀のつもりで店の主人に1000円札を手渡した。

 部屋に戻った私は、机のひきだしの中から両面テープを探し出して、買ったしめ飾りを玄関の扉に貼り付けた。そして、そう言えばしめ飾りの意味について正確なところを知らないな、と思って私はインターネットで調べてみた。
本来の宗教的意味は、各家庭が、正月に迎える年神を祀る依り代である。
 ということらしい。年神様か。穏やかで優しそうだ。私の家にやってくるのがそんな人なら良いな。いや、人ではなくて神様か。私にうるさいことを言って煩わせることなく、穏やかな時間だけをもたらしてくれるのなら大歓迎だ。神様バンザイ。

 私は玄関の扉に貼り付けてあるしめ飾りを思い浮かべつつ、少しだけお酒をのむことにした。良い気分だった。

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このエントリ内に書かれている事は大体に於いて事実と異なります。

中央線沿線を歩く(西荻窪〜吉祥寺)





駅を通り過ぎて左側の商店街というか呑み屋街を抜ける。抜けるといきなり裏通り。



なだらかな下り坂の後に上り坂。延々と高架上線路の脇を歩く。



「生産緑地地区」なる立て札が掲げられているエリアが在った。



微妙に古い造りの建物が在ったりする。



敷地境界を物ともしない植物ども。



武蔵野市との境界。



シャッター降りてるけど、店舗面積広くて良さそうなパン屋。



少し線路から離れる。木々が増え、閑静な雰囲気になってくる。吉祥寺女子高校とか。高校生のカップルが校門の近くで逢瀬を楽しんでいた。人家も多く、二階の窓からピアノの練習する音が聞こえてきたりする。



道筋ではなかったけど、取りあえず鉄塔は撮る。昼間でも灯りの点く高架下の街灯。



夜を待つ屋台車。



十二分に整備された住宅地。



この建物は何だっけな。個人的にはやり過ぎだと思う。再び線路に近づき、高架下のスーパーを眺める。



その脇でうなだれる向日葵。



線路を挟んで右を歩いたり左を歩いたり。



そろそろ吉祥寺の街だ。



到着。この日まで、この街を訪れたのは三回くらいしかなかったんだけど、これを書いてる今ではしょっちゅう来てる気がする、というか実際来てる。なので感慨深さなど微塵もない。

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はてさて、中断時期も挟んで長々と続けた中央線沿線の旅は、取りあえずこれで終わり。偏見混じりだけど、これ以上は物質的に密度が薄くなりそうだし、先々の事を考えると止めるタイミングが掴み難いし、自宅から離れ過ぎてるし、色々とキリが無い。個人的にも整理する時期であるようなので、ここまで。

この散歩は2011年7月31日に歩いたものです。
  • Last Modified : 2011-10-17

中央線沿線を歩く(荻窪〜西荻窪)





線路沿いの歩道が続く。足を踏み入れてはいないが商店街の入り口のアーチ。



測量設計会社の古いビル。昭和の香りが色濃い。



これは何だっけな。骨董品屋かな。



右側の塀に囲まれた敷地、地図にも載ってないからよく判らないのだけれど、JRの敷地なのかな。




そのまま進んでもつまらなさそうなので、実は後戻りして線路の右側に出た。荻寺光明院の入り口。中に入れるようなので門を潜るとたくさんの地蔵像が。



境内と線路の間は近隣の人々の通行路になっているようだ。何人かとすれ違った。石像や小ぶりの石塔の半ばうち捨てられた感じが侘びしい。



境内を抜けて一般道に出る。そして紆余曲折していると、殺伐としていたり閑静だったり、色々な表情がある。



再び線路を越える。この辺りから樹木が巨大化してくる。



と思っていたら、駅が近いのだろう、人家ではなくビルが増えてきた。



西荻窪駅に到着。

この散歩は2011年7月31日に歩いたものです。
  • Last Modified : 2011-10-17

中央線沿線を歩く(阿佐ヶ谷〜荻窪)後編







今度は北へ進んで線路を越える。こちら側も大凡は住宅地で、良い感じに草臥れた人家が在ったり、ギンガムチェックの前掛けをした地蔵像が在ったり、不思議な体色をした象が居る公園が在ったりした。



線路に近づいて行く道。並んだ自販機の横にビール箱が重ねてあるのが良い風情。





一度近づいた道は再び線路から離れていく。線路から離れないように意識しつつ歩いていると、何だかクネクネしてしまって、気がつけば都道四号線に辿り着いた。




複雑なクランクを回り、都道を渡る。




今度は都道の裏道的な道を歩いた。すると左方に面白そうな建物が見えたので、軌道から逸れてそちらへ進んでみると、どうやらレトロなデザインを売りにしたホテル、というか旅館のようだ。



元の道に戻り、線路沿いの道を歩き、ようやく荻窪駅の到着。

この散歩は2010年8月14日に歩いたものです。
  • Last Modified : 2011-10-13

中央線沿線を歩く(阿佐ヶ谷〜荻窪)前編





駅を通り過ぎると、何となしに商店街が始まる。



T字路に突き当たったので、セオリー通りに線路側へ進もうかと迷ったが、右側の方が面白そうな雰囲気が在るので少しだけ進んでみる事にした。ら、一風変わった外観の建物が出現。後から調べると、これはザムザ阿佐ヶ谷という劇場であるらしい。何となく納得。



元の道へ戻って線路を越える(正確には線路の下を潜った)。少しすると再び緩やかな商店街が始まる。同じ「スターロード」という看板が在るので、一続きの商店街という解釈なのだろう。右の写真は、喫茶店のように見える店に貼ってあった。何故なのかは判らないけど、劇場も在る事からすると演劇好きな人が多く集まるのかも知れない。




更に続く緩くスターロード。垣根を覆い尽くすが如くモッサリと繁る雑草。



ま、まだまだ続くスターロード。ひっそりとしたオープンカフェ。一応ここでスターロードは終わりのようだ。



線路方向へと向かう。高架下には線路に沿って通路が設けられている。



線路を越えたところに在る人家。樹木が良い感じに威張っている。



のんびりとした道が続く。



住宅地に入った様子。えーと、稲荷神社だったかなこれ・・・。



古めの人家とマンションの間のを通り抜けると、何やら校門のような建物が見える。



果たして文化女子大付属の中・高等学校だった。

この散歩は2010年8月14日に歩いたものです。
  • Last Modified : 2011-10-13

中央線沿線を歩く(高円寺〜阿佐ヶ谷)後編





通路の抜け出たとこに在った、やたらと植物を茂らせた人家。







ここら辺りから僕は迷走し始める。走ってはいないけど。いつものように線路に出来るだけ近い道を選んで歩いているはずなのだが、何故かしら線路とは反対に行こうとする道ばかりで、段々とイライラしてきた。因みに下から二番目の写真はおいちゃんの記念写真を撮った訳ではない。後から場所を確認用の為にとプール施設を撮ろうとしていたのだが、おいちゃんがずっとこちらを見ているので、仕方なくそのまま撮っただけである。




やっと線路の傍まで戻ってきた。人通りなんて余り無いような気がするんだけど、洒落たブティックみたいな店が並んでいた。



かと思えば半ば廃墟と化した人家などが在ったりする。



ガード下なのに二階部分に在るドラッグストア。駐輪場があるから結構人通りはあるのかな。



フツーの寂れた商店街になってきた。



それを抜けると大通りに出て、駅舎が現れた。



到着。この後少しだけ駅の周りを歩いてみた。この駅は初めて降りたのだけれど、小洒落たものと生活感溢れるものが同居していて居心地良さそうだし、とても気に入った。スーパーも在るし商店街も在る。生活に必要なものは全て在りそうだ。たぶんこの街に住んでいたら、この街だけで生活してしまいそうである。

この散歩は8月14日に歩いたものです。

中央線沿線を歩く(高円寺〜阿佐ヶ谷)前編





高円寺駅北口の左側の隅、中通り商店街へと進む。



ご覧の通り、商店街の入口付近には古本屋や風俗店や居酒屋や古着屋など雑多な店が建ち並んでいる。今回は歩いていないが、この通りのずっと先の辺りに、昔友人が住んでいた。



ちょぃと横道を覗いてみる。狭い路地だが、盛っているからこそこの自販機の数である。



この光景はとても気に入っている。うらぶれた裏通りに若者向けの店がこっそり入り込んでいる。大袈裟かも知れないが、人間の生命力のようなものを感じる。



外壁が板張りの古い人家。二階の部屋に住みたい。




まあ、単に佇まいが気に入っただけ。



この街には小振りだが何本が鉄塔が建っている。街中で眺める鉄塔もなかなか良い。



古い医院。診療項目にしてもそうだが「皮膚」を「皮フ」とするところなんか、絶妙な感じ。



高架下を潜って出たところ。これも商店街なのだろうか。ごたごたした感じが素晴らしい。



そしてその商店街らしき通りはすぐに行き止まり、再び高架下を潜ろうとすると、線路の真下に通路を見つけた。人通りも結構ある。この辺りは道が縦横に入り組んでいてよく判らない。もしかすると近道的なものが公の道になってしまったのだろうか。僕はこの道を選んだ。

この散歩は8月14日に歩いたものです。
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