DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: June 2011

甘く危険な香り

 二週間くらい前だろうか。通勤電車の途中駅で乗り込んできた若い男女。入社したてであろう会社員。男の方は、まあ特に興味は持てない風貌で、片や女の方は大変な美人であった。薄いウォームグレイのスーツを着こなし、少し捲きの入ったセミロング、日夜身体を磨き上げている様子で、肌は白く輝いている。
 とまあ、そんな感じの女であったのだけれど、そんな事は本旨には関係ない。彼女は香水をつけていた。しかも強めに。思い起こせば20年前くらい前は結構多くの女性(に限らず男性も)が香水をつけていたような気がする。その頃の僕はまだ20代で、関わる人も同じくらいの年代だったからそうであったのかも知れないないけど。今でも、若い人達の方が香水をつめている確率が高い気がする。

 話が逸れた。この話の主題はその香りの事だ。香水に詳しくはないから名前なんて全然判らないが、とにかく、吸い込まれてしまいそうな香りだった。僕は昔っからその類の香りがとても好きだ。何年かに一度くらいの確率でしか出会わないから正確なところは判らないのだけれど、おそらく毎回違う香りだと思う。しかしその「吸い込まれそうな」という感覚はかなり近似している。もしかすると、香水自体(香水単体)の香りではなく、その人の体臭が混じった匂いであるのかも知れない。まあ、よく判らない。

 ともかくも、その日のその若い女から漂う匂いはそういう匂いであった。同行している男はどう見ても気がある素振りで、そりゃまあそうだろう。そして困ったのは、乗降の煽りで僕の隣まで移動してきたその女の肘が、僕にガシガシ当たって来る事である。よくある事だ。何故だか知らないけど、僕はよくそういう目に遭う。理由は知らない。未だによく解らない。解らないから放っておく。そのくり返し。

 その二人が僕が乗る車両に乗り込んで来たのはその日だけだった。たまたま乗り合わせただけだったのだろう。甘く、危険な香りの記憶だけが残った。

願わくば

 彼らの希なる繋がりと、それぞれに抱える未来が、費えることなく、ずっと続いて行きますように。

鮮烈で圧倒的な美しさ

 というのは、残酷さと同衾しているように思う。それを観る我々は、畏れ、平伏し、使役されるしかないのではないだろうか。

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