浅草オペラの熱狂的なファンは文なしの若者がほとんどだったが、彼らを指す特別の言葉が生まれた。「ペラゴロ」という呼び方である。語源については諸説あって、最初の「ペラ」が「オペラ」から来ている点では意見が一致しているものの、後半の「ゴロ」については、「ジゴロ」の略だという説もあれば、「ゴロツキ」の意味だという人もいる。いずれにしても、「ペラゴロ」連中は公園のあたりにたむろし、夜な夜な劇場に通いつめ、贔屓の歌手には金も貰わずにさくらの役をつとめて拍手喝采を送り、徒党を組んでは、単に歌い手を熱狂的に応援するばかりか、グループ同士で張り合い、時は喧嘩になることさえあったらしい。

エドワード・サイデンステッカー著『東京 下町山の手』ちくま学芸文庫 1992年 p.370