先日、岡村靖幸のライブをゼップ福岡で観た。友人に誘われて行ったのだが、実は20年ほど前にも、同じ友人と千葉のNKホールで岡村氏のライブを観ている。はっきりした年が思い出せないので検索してみると、1992年と2004年にNKホールで行った記事が出てくるが、2004年だと僕は30代になっているので明らかに違うし、1992年だと僕が上京した年なのでそれも違うような気がする。もう一二年後だったと思うのだけれど、気のせいかも知れない。いずれにせよ、約20年前の話だ。この施設は2005年に閉鎖されているが、たしかディズニーランドの近くに在ったと思う。不慣れな上に、そんな場所まで行くのが面倒だなと思っていたのを憶えている。ライブ自体は結構楽しんだと思う。アリーナ席に陣取るのは殆どが女性で、男共は遠巻きに眺めているような感じであった。そしてステージの上に、精子を模ったと思われる銀色のオブジェが吊り下げられていて、やっぱり変な人だなあと思っていた。

 さて、それから三度、覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されるなどという波瀾万丈の人生を経た岡村氏と再び遭遇する事になったのだが、果たして、全体の印象を述べるなら、氏は相変わらずだった。アルバムを出さないので、演奏する曲は近年に出したシングル数曲を除いては以前と変わりはないし、氏自身の見せ方も変わりはないし、時折差し入れてくる台詞もそのままであるように思う。ただ、やはり氏も歳を取った。もう49歳である。最近のスタイルである眼鏡を掛けたスーツ姿は以前に比べるとずっとまともに見えるし、身体を俊敏に動かせないのでダンスが緩慢で、以前は MC が多かったように思うが今回は殆ど喋らなかった。20年前に観た時の曲のアレンジがどうであったか憶えていないが、おそらくより複雑で多様になっているような気がする。しかしモニターの音がやけに大きくて、途中まで結構ツラかった。ライブなんてものに足を運ぶのが数年振りなので、大音量に慣れないだけだろうと思っていたが、後日同行した友人にその話をすると彼も同じように感じていたらしく、しかも彼曰く「いつもそう」だそうな。友人は20年振りの僕と違い、何度も岡村氏のライブに足を運んでいる。何故あんなに音を大きくするのだろう。不思議だ。世の中の人々はそんなにも強い刺激に飢えているのだろうか。僕は、自分が歳を取ったからそう感じるのかとも考えたが、演奏者が同年代だし、観客もそうだ。これはシネコンで映画を観る際にも同じような事を感じるのだが、詳しく述べると長くなるので他日に譲る。

 途中の MC(岡村氏は喋らない。喋るのはマニピュレーターの人)で年齢の話になって、「40代の人手を挙げて」という呼びかけに、1諧アリーナ席の大半の人が手を挙げた。僕の見る限りでは、その7割は女性で、僕が座っていた2階席にしても同じようなものだったと思う。恐らく20代の頃からずっと通ってる人達なのだろうな。中にはツアーを最初から追いかけている人も居るようだ。決まった振りがある訳ではなさそうだが、合いの手やコーラスなど一挙手一投足が全曲に於いて揃ってるし、お行儀が良い。客層がほぼ固定しているのかも知れない。嫌な言い方をするが、その光景の中に身を置いていると、どことなく閉鎖的な雰囲気を感じていささか居心地の悪さを感じた。まあ、気のせいかも知れない。キャリアの長いミュージシャン、しかも寡作とくれば、本当に好きな人しか観に行かないだろうし、同年代のファンならば共に成長してきたという気持ちもあるだろう。昔からのファンが、毎年(塀の中に入っていなければ)一度、頑張って生きてる岡村氏と相見える為にコンサートホールに足を運んでいる。たぶんそんな感じで、きっとそれで良いのだろう。

 以下に近年リリースされたシングル曲を並べる。結構良い曲出してるなあ。