DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: March 2014

ガラスの向こうに絶望が見える

 二週間くらい前(関東ではさらに一月前)に放映されたタモリ倶楽部の空耳アワーのコーナーで流れた曲を聴いて「これは聴いた事があるぞ!」と膝を打ち急いで書き留めた。それがこれ。

 Elsa Lunghini というフランスの歌手が歌った T’en va pas(邦題:哀しみのアダージョ)という曲で、じっくりと聴いてみれば実にふんわりと切ない佳い曲である。しかし僕はこの曲を何処で聴いたのだろうか。前述の Wikipedia にもあるように、1986年に公開された「悲しみのヴァイオリン」というフランス映画の主題歌(歌っているエリザも出演)だそうだが、僕は観た覚えがない。1987年に原田知世が大貫妙子の日本語詞により「彼と彼女のソネット」としてカバーしているが、どう考えても日本語ではなかったと思う。

 うん、やっぱり違う。他にも何人か日本でカバーしてるようだから、原曲は日本でも売れて何度もラジオから流れたのだろう。恐らくそれらを偶然耳にしていたのだ。一度聴いただけで記憶に残るとは余り思えないし。
 それにしてもこの曲のこの感じは一体何なのだろう。諦念というか、緩やかな絶望感というか。早く忘れてしまいたような、でもまだ身近に引き寄せていたいような、そんな感じ。そんな事を考えていると思い出されるのは中谷美紀が歌った「砂の果実」である。

 曲調は違うし売野雅勇が書いた歌詞のおかげで絶望感がかなり増しているが、質感が似ていると思う。これは1997年に坂本龍一と共に出したものだが、それより二ヶ月前に坂本美雨が歌う英語バージョンが先行している。

 そしてこちらは「砂の果実」の前年に出した「 Mind Circus 」という曲。

 これも似てる気がする。そう言えばこの曲を、ベストテン番組に中谷美紀と坂本龍一が出演して演奏しているのを観た覚えがある。長い髪をポニーテールにして白い服をまとい、マイクを水平に保ちつつほんの少し上を見上げるようにして歌っていた。美しい人だな、と思いながら眺めていたのを覚えている。

 さて今回の話のまとめとしては、1996年に坂本龍一が中谷美紀のプロデュースを始める際に、冒頭の「 T’en va pas 」という曲の持つ世界観があったのではないだろうか。その9年前に同曲の邦訳をしたのは坂本龍一と近しい大貫妙子であるし、その辺りからいつかやろうと温めていたのかも知れない。僕の想像でしかないが、そんな気がする。

 調べている時に、中谷美紀の全曲レビューをやってるサイトを見つけた。参考までに。

 次に第二条件として、自分の描きたいものや表現したい世界を、客観的に見る事が必要です。自分が置かれている時代や社会、歴史や文化の背景と、自分が描きたいものをすり合わせ、自分自身を批評できる能力がなければ、残念ながら、本人にとってよい絵は、本人にとってだけよい絵で終わります。
 例えばいろいろとギャラリーを見て、このギャラリーだったら自分の作品を並べたい、見せたいと判断できることも大切です。
 僕のギャラリーに来たこともなければ、どういう人がやっているのかも知らないで、もちろん、作品が展示されている空間を知りもしないで、資料だけを送ってくるアーティスト志願者もいます。そういう人は、自分の位置が見えていないのだと思います。自分が制作することだけに没頭するのではなくて、一歩退いて見てみる。作品に対してある程度の距離感が持てないと、作品を社会化することはできません。

小山登美夫著『現代アートビジネス』アスキー新書 2008年 pp.86-87

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