DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: February 2017

 アウトサイダー・アートには、美術界に所属していない素人の作品も含まれるが、一般には「精神病患者の作品」を指すことが多い。一九二二年、ドイツの精神科医プリンツホルンが各地の精神病院を回って蒐集した患者の作品を著書『精神病者の造形(Bildnereider Geisteskranken)』で紹介して以来、アウトサイダーすなわち精神病者の絵画や造形が広く関心を集めるようになった。

 (中略)

 ダーガーの紹介者であるジョン・M・マクレガー氏は、アウトサイダー・アートを次のように定義する。「広大で百科事典的に内容が豊富で、詳細な別の世界(現実社会に適合できない人が選んだ、奇妙な遠い世界)を、アートとしてではなく、人生を営む場所として作り上げていること」。そう、彼らはみずからの狂気が作り出した世界の地図を作り、彼自身の神のイコンを描く。絵の中で自分の発見した万能治療薬を解説し、自分の見聞してきた火星の風景を描写し、あるいは迫害者が遠隔操作で自分を苦しめるために用いる装置のしくみを詳しく説明する。自分だけの王国で、貨幣を発行し、自分でつくりあげた新しい宗教を図解する。それはすでに「描かれた虚構」などではない。それは作者にとって、現実の等価物にほかならないのだ。
 アウトサイダー・アーティストたちは、作品を展示したり売ったりすることにあまり関心がない。彼らの作品は他人を楽しませる虚構ではなく、現実すら変えてしまうことの出来る道具であり手段なのだ。そんなにも大切で個人的なものを、いったい誰が他人に見せたり譲ったりできるだろうか。

斎藤環著『戦闘美少女の精神分析』ちくま文庫 2006年 pp.125-126

 ここでジョバンコ氏は、アメリカでのタブーの意識を知る上で、貴重な資料を提供してくれている。セーラー服自体が水夫の仕事着を女子学生の制服に転用したものであるという経緯は、たしかに注目に値する。近年わが国で異常なほど注目されている「女子高生」への関心は、たんに若い女性への欲望ということだけでは語りきれない要素をはらんでいるからだ。そこには少なくとも服装倒錯的な嗜好が紛れ込んでいる可能性がある。さらに極論すれば、セーラー服と若い女性の組み合わせを愛好するという行為については、小児愛に服装倒錯、さらには同性愛的な嗜好などといった他形倒錯の傾向として分析することも不可能ではない。
 氏はまた「変身」にちても、次のように述べている。
「(戦闘美少女が変身することについて)たぶんそれは、幼く可愛い少女から成熟したタフな女性への変化だ。この二重人格性は、成人男性のオタクが少女に望むすべてをもたらす。それは彼女たちを完璧な存在にするのだ」。
「変身」が加速された成熟の隠喩である点は、私もまったく同意見である。

斎藤環著『戦闘美少女の精神分析』ちくま文庫 2006年 p.115

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