DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

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砂漠の夢

 もうずっと以前に、深夜のテレビ番組で放映されていた(と思しき)アニメの話。その時僕は既に眠気で朦朧としていたのだが、何気なしに点けたテレビでアニメーションが流れていた。特に絵が気に入った訳でもなく、そのストーリーだけが記憶にいつまでも残っている。

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 或る雄の子犬が主人公の話で、彼がいつもの散歩の途中でスケートボードを見つける。彼は興味津々で、恐る恐るそのボードに飛び乗る。ボードを坂道を下り始め、段々スピードを増していく。彼はそのスピード感に有頂天になった。こんなにも素晴らしい気分になれる事に喜びを感じていた。

 そこでとんでも無い事が起きる。彼が予てから思いを寄せていた雌犬が、横道から飛び出してきたのだ。坂道はまだまだ続き、このまま行けばスピードは更に上がって、大好きな彼女に衝突してしまう。しかし彼にはボードを止める方法が判らない。
 彼は必死で祈った。自分が消えてしまう事を。大好きな彼女に怪我をさせるくらいなら、いっその事消えてしまいたいと。
 ボードが更にスピードを上げ、彼女にもう少しでぶつかるというその瞬間、彼は怖くて目を閉じた。

 再び目を開けた彼は、熾烈な太陽の光が降り注ぐ砂漠に居た。そして自分が、亀の背中に乗っている事に気付いた。

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 僕が覚えているのはここまで。恐らく眠ってしまったのだろう。後から幾ら考えても、それがどの放送局で、どの番組であったのか思い出せない。記憶も酷く曖昧だ。冒頭に「思しき」と書いたのは、もしかしたら自分が見た夢かも知れないと思っているからだ。
 あれは一体どういう話だったのだろう。大好きな雌犬を自分自身から守る為に、自分を消してしまった雄犬は、あれからどう生きたのだろう。今でも気になって仕方がない。

涅槃

 今朝見た夢。

 其処は、廃業した古いホテルを改装して造られたギャラリーだった。ホテル自体はとても小さな建物で、5フロアしかない。でもギャラリーにしては大き過ぎる程であろう。壁には真っ白な漆喰が塗り込められ、玄関のガラスを格子柄にはめ込まれた扉からは、暖かそうな光が洩れている。僕は招待状を手に玄関に足を踏み入れた。

 エントランスロビーには多くの人々で溢れていた。老若男女、様々な様相の人達が居た。タキシードやナイトドレスで正装している老いた男女。学校帰りにでも立ち寄った感じの全く普段着の少年や少女。そしてそれらを両極としたグラデーションのような格好の人々。それらの人々は、これから展示作品を観るのか、それとも見終わったところなのか、グラスで酒を飲んでいたり、煙草を吸ったりしていた。
 右側にフロントの受付。正面には二階へと続く階段。その階段を上ると展示室に行けるようだ。階段の右側の凝った彫刻を施した手摺りの前に、一人の女性が立って客達に挨拶をしていた。赤いドレスを来て、白いハーフコートを羽織っていた。誰に訊かずともその人が作家である事が判った。それより何より、その人が先日海辺で、波間に消えた人である事を唐突に思い出した。良かった。生きてたんだ。以前の髪型とは違い、前髪を額の中程で切り揃えていた。そのせいか、表情がとても明るく見える。以前は、少し離れて見ると、顔に差す影が実際以上に濃く見えて、僕はそれがずっと気になっていたのだった。

 そしてその人は、僕が以前から見慣れているように、客が近付いて来る度に、ぎこちない態度で微笑みかけたり、お辞儀をしたりしていた。運営のスタッフから独り離れて、あたかもそれが自分に課せられた使命であるかのように、誰にでも平等に、精一杯の気持ちを込めて。僕は暫くその姿を眺めていた。出来ればそのままそうしていたかったのだが、そんな訳にも行かず、意を決して僕はその人に向かって歩いた。その人は、他の客と変わりない笑顔を浮かべて僕にお辞儀をした。その人は僕が僕であると気付いてはいないようだ。見えていないのか。忘れているのか。そう考えた瞬間ある事を思いついた。この人はきっと、生まれ変わりたかったのだ。どういう理由なのかは解らないが、きっとそうなのだ。だからあの時、僕の目の前から居なくなったのだ。そうであるのなら、それを受け容れる以外に僕に出来る事などあるまい。
 僕は声もかけぬまま、その人の前を通り過ぎ、階段を登った。

 部屋に入ると、10号のキャンバス・サイズの絵が並べてあった。どの絵も地色は赤で、それに青や黄色や黒や金色で、どうにか具象として認識できる何かが描かれている。下塗りは油であるようだが、それ以外は何を使って描いているのか全然判らない。エナメルや金属を塗り込めているようにも見える。形態としてはホアン・ミロに似てる気もしたが、色彩が全然違う。
 次の部屋は、サイズと色彩が違うが、描かれている物は同じであるようだ。
 その次の部屋に行くまでの間、渡り廊下があって、其処は照明が落とされモニターにヴィデオ作品が展示されていた。モニターへ近付こうと三方枠を抜けた途端に自分の身体に像が浮かぶ。廊下の両側から投写してホログラフィーを投影しているようだ。自分の身体に浮かんだ像とは、人間の筋肉である。その筋肉が過剰な輝きと形態を持って自分の身体を覆い尽くす。それに自分が動く毎に、真っ赤な筋肉は蠢き変容する。目の前のモニターには、仄かに明るく浮かぶ人間の頭部が映し出されている。その頭部は夜の街で、排水溝のステンレスの蓋を食べている。口元を緑色に光らせ、ガリガリと金属を食べ尽くそうとしている。

 そこで目が覚めた。朝の6時頃の話。続きを見たくて二度寝したが、見る事は出来なかった。

海辺へ続く道

 波打ち際で一緒に遊んでいた誰かが、僕の忠告に耳を貸さずに、段々と岸から離れて海へ入っていく。風も強くなってきて、波も高くなり始めた。僕が大声で呼んでも、その人は聞こえていない振りをしてずんずんと前へ進んでいく。とても心配だったが、僕は何故か海へ入って行く事が出来なかった。風に煽られた海水が僕の目を打つ。次に目を開けた時、その人の姿は何処にもなかった。僕はそこでようやく海の中へ走り込んだ。その人がそこら辺に沈んでるのではないかと、海水の中を何時間も歩き回った。怖くて堪らなかった。そして歩き疲れた頃、もう見つからないであろう事を確信した。悲しくてやるせなくて、それでも泣く事は出来なかった。潮風が白く目を掠める。横に流れる白と波の音が感覚を占め、やがて視界の全てが白く霞んだ。
 というところで目が覚めた。こんな夢は初めて見たが、物凄く堪える。居なくなってしまった人が一体誰であったのか、全然思い出せない。

石との呼吸法

 晴れた休日の午後。僕は友人二人に誘われ、北青山に在る貸しスペースで飲む事になった。その場所は個室で区切られている訳ではなく、扉の無い続き部屋を、スペース単位で貸し出すシステムだ。スタッフに案内され、我々は10mほどの大きな一枚岩の低いテーブルの一角に陣取った。既に二組のグループが同じテーブルを使用して寛いでいた。この店は飲食は提供しない。飲食は客が自分で持ち込む。無論食器も無いから、それも客が持参する。店側が提供するのは空間だけである。
 この店舗は外装は勿論の事、内装も石に覆われている。前述の低いテーブルを始め、床・壁・天井に至るまで天然石だ。磨きなどの仕上は施してはあるが、着色はしていない。ただ、どちらかと言えば温かみのある色や質感の石を選んではいるようだ。窓は一つも無い。空間が縦にも横にも広いので閉塞感は少ないが、何とも不思議な気分になる。室内は天井に埋め込まれた照明に照らされ、結構明るい。美術館で使われているような質感の光だ。音楽は流れておらず、室内に反響する客の話し声や笑い声が聞こえてくるのみ。

 我々は、持ち込んだ韓国料理のデリを平らげながらビールをしこたまに飲んでいた。何を話していたのかさっぱり思い出せないが、適当な話をしながら適当な時間を過ごしていた。他の客を見ていても、だいたい同じように過ごしていたように思う。因みに此処には椅子は無いので、みな石の床に直に座るか、座布団ようなモノを持ち込んでそれに胡座をかいて座っていた。

 僕は次第にその場に飽きてきて、話し込んでいる他の二人を残して店の外に出た。

 店は公園に隣接していたので、僕は其処へ足を踏み入れた。舗道というようなモノがなく、雑木林と僅かな丘陵が在るだけの公園。人気も殆ど無い。僕にとってはその方が好都合で、気分良く散策に没頭出来た。すると、公園の端にコンクリート打ちっ放しの低い建物が現れた。人気はないが、中央に玄関らしきガラスの両扉と、左側にこれもガラスの片扉があった。玄関の奥は薄暗く廊下が続いているだけで何も無さそうだったが、左側の扉の奥には太陽光に近い色の照明に照らされた、棺くらいの大きさの石で出来た箱が何十も並んでいた。恐る恐る僕は中に入ってみた。
 四方の壁は白く、突き当たりにはオレンジ色のフィルムが貼られたガラスのパーテーションが立ち、向こう側へ廊下が続いているようだった。人の気配は無い。外からも見えた石の棺は、上面を分厚い擦りガラスでシールドしてあった。朧気に人間の顔の輪郭が見える。隅の方に僅かに結露しているのを見る限り、中に居る人間は呼吸をしているようだ。その時、表で人の気配がしたので、僕は慌てて外に出た。

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 実はこの話、僕が先々週の土曜日の朝見た夢である。夢など滅多に見ないし、細部が妙にリアルで不思議な映像だったので、今になっても未だ覚えている。暫く前に読んだ小川洋子の「六角形の小部屋」という短編を思い出した。その小説の中では、公園の中に在る今は使われていない社宅の一室に設置された、木製の六角形の小部屋に、自らが望み小部屋を探し当てた客達が僅かな賃金を払って、一人だけ小部屋に入り語って帰って行くという話だった。僕が夢の中で見た石製の棺に横たわる人々に、小部屋で語る人々と同じような印象を持った。語るのとは違い、封印された空間の中で眠り、呼吸するだけではあるが。昔、友人が屋久島に渡り、屋久杉の原生林に分け入った時の話を聞いた事がある。五人がかりでないと腕を回せない程に太い杉の幹に抱き付いていると、とても心が落ち着くのだそうだ。いつまでもそうしていたいとさえ思ったらしい。もしかしたら、石にも同じような力というか作用があるのではないだろうか。あくまで想像に過ぎないが。

 この夢には少しだけ続きがある。外へ出ると作業服を着込んだ数人の男女が、建物の前に無造作に積み上げられた様々な石を運んだり、石鑿を使って加工したりしていた。その光景をぼーっと眺めていた僕に、一人の青年がチラシを手渡した。綺麗にカラープリントされたそのチラシには「石との親和性を高める研究会」とタイトルが記してあった。

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