DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Tag: museum (page 3 of 3)

 現代アート作品は古い街並みと相性が良い。時間は層のように重なった古い建物と現代の先端的な表現を含む作品との対照が観客の感覚を覚醒させる。

(中略)

 これまで文化的な遺産に乏しかった場所に世界中からアーティスト達が招かれ、彼らが地元・十和田の歴史に触れることによって新しい街並みを創出するーーー最も喜んだのは地元の人々であり、特に若い世代である。若い世代にとって、他の地域からの訪問者が増えることは大きな自信になる。駅前商店街のシャッター通りは日本中で大きな問題になっているが、ここ、十和田も例外ではない。しかし、十和田市は現代アートによって変化し始めた。すでに大きな箱モノ美術館がある都市でも、中身のコレクションを変え、企画を変えて美術館自体を大改革すれば、私はこの十和田現代美術館のように美術館が街を再生するプラットフォームになることは可能だと思っている。

山口裕美著『観光アート』光文社新書 2010年 pp.87-88

 全国的に見ると、日本は美術館の数だけは本当に多い。2002年のデータでは、博物館法に則った施設と博物館類似施設を合わせると約5600館もある。それらの多くは70年代以降にできたもの。純然たる美術館はどのうちの3割程度だが、それでも1200以上もある。

(中略)

 欧米では、住民がその土地の芸術や文化、歴史を保存・継承していこうとする熱意が強く、そこに美術館・博物館が中心となって役割・機能を果たしている。日本はこれがまだできていない。
 美術館は、もともと美術作品を中心とした文化遺産や現代の文化的な所産を収集、保存、展示し、それらを元にして教育、普及、研究を行う施設である。だが、日本の場合は博物館法に基づいて博物館の一部を美術館としてしまったため、博物館の機能の中の、過去コレクションを定義、位置づけし、保管するという方向が色濃く出ているのが現状である。
 また、新しいコレクションは美術館とは別組織の収蔵委員会によって決定される。新しいコレクションのための推薦リストが学芸員や美術評論家などから挙がってくると、委員会が多数決でそれらを決めるため、その時代においての評価や適正な予算運営を行いにくい。

(中略)

 また、地方の美術館の多くは自主企画をする予算も気力も薄く、新聞社やテレビ局が企画する展覧会を巡回させることで入場者数を稼ぎ出したいというのが本音になってしまっている。

山口裕美著『観光アート』光文社新書 2010年 pp.58-60

パウル・クレー展 / 東京大丸百貨店

 先日、東京大丸百貨店で開催されたパウル・クレー展に行って来た。結果、全体的な事を言えばいま一つ。気に入った物も数枚在ったのだが、それだけ。数年前に倉敷美術館で偶然にも見かけた一枚(記憶は曖昧。今調べても所蔵しているという記述は見つからない。記憶違いかも知れない。)には非常に感動したのだが、今回はクレーだけを集めた展覧会という事で、その数倍・数十倍のものを期待していたからなのか、感動は薄かった。展示されていた殆どの絵は観た事のない絵ばかりで、その点で言えば良かったのだろうけど、やはり期待していたものに比べると、流して観てしまうのである。
 思うに、良い絵は画集に載るものではないだろうか。何処ぞに所蔵されている絵を借り出す手間暇の問題もあるのだろうけど。クレーの画集は何冊も買ったが、どれもこれも同じ絵ばかりを載せてあって、しかも画集に拠って、同じ絵でも全然色合いが違うのにウンザリして、それ以上に他の画集を探さなくなった。しかし、もっとたくさん良いクレーの絵は在ると思う。是非とも、いつの日にか観たいものだ。やはりスイスまで行かねばならないのか。

日本パウル・クレー協会

追記 : 2006.03.05 上記のサイトの中で、クレーの全作品を載せた「カタログ・レゾネ」という画集(英・独)が何年も前に企画され発売されている事を知る。残念ながら第一巻は売り切れという事で、悔しいのでヤフオクで検索したところ、同じ「カタログ・レゾネ」で色んな画家の画集が発売されているようだ。とんでも無い水脈を見つけてしまった気がする。とんでも無いとは、高価だという意味で。

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