DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: October 2007 (page 1 of 2)

ハイヒール

 季節はとうに過ぎ去ってしまっているが、女性が素足に履くミュールはとても好きだ。個人的な好みを言えば、白い素足に黒や紺などの濃い色のミュールを履いてるのを見るのが大好きである。ところが、である。ミュールを履いた女性の足音はどうにも美しくない。踵をホールドしていないせいで、ヒールは恥も外聞もなく地面を打ち叩きパカンパカンと遠慮の無い音をたてる。これは下品である。見た目はあんなにも麗しいだけに、非常に残念な事だ。

 話は少し変わるが、僕が住んでいる部屋の表通りは人の往来が少ない。ましてや夜半を過ぎれば人通りは無いに等しい。そんな中、時折闇に紛れて靴音が聞こえてくる。駅からの帰り道になっているのであろう、靴音のする方角がいつも同じである。そして何故か、聞こえてくるのはハイヒールがアスファルトを打つ音ばかりなのだ。まあ考えてみれば、最近の男性用の靴は柔らかい靴底のものが多いので、恐らく僕がその靴音に気付いていないだけなのだろう。
 それはともかく、そのハイヒールのたてる音が美しい事と言ったら! 僅かに抑制された靴音は、音のくぐもりを突き破るかのように闇に響き渡り、残された余韻は幾層にも重なって耳にまとわりつく。誰がどう考えても実用以外の目的で創られたこの装身具。それが日常で用いられているという事実をどう捉えるのか。それを考えると空恐ろしい気分にならなくもない。

 余談だが、知識としてだけ知っていた纏足。先日テレビで一瞬だけその足を見る機会があった。それはもう、何というか本当に驚愕に値する。

詠歌

花冷やし秋の終わりを告げる雨 猫と並んで溜め息ひとつ

絵初め

 父方の祖母の葬儀の時に、伯母の一人から少し面白い話を聞いた。僕がまだ幼い頃の話だ。だいたいこういう時というのは、自分の子供の頃のロクでもない話を聞かされるのが常であるが、その時もやはり御多分に漏れず、しっかりとその口を閉じたまま早い内に墓場に直行して貰いたいと思ってしまうような話を聞かされた。ま、そんな話の中の一つ。
 ある時、伯母に抱き抱えられていた僕は彼女に向かってこう言ったそうだ。「おばちゃん、ゾウの絵を描いてそれを僕にちょーだい。」・・・どういう事だろうか。普通ならば「ゾウが欲しいから買って。」などと無茶を言うのが無邪気な子供の在るべき姿であろう。なのになぜ「絵」が欲しいのか。その「絵」を自分で描かずに人に描かせようとするところがやはり子供であるが、僕は実物のゾウよりも「絵に描かれたゾウ」の方が好きだったのだろうか。その話は感慨深いようで、それでいて己の恥を露呈してしまうような、複雑な心境に陥る話であった。

浪曲

 昨日の午後、たまたまテレビを点けてみたら、NHKで「東西浪曲特選」という番組をやっていて、具合が良さそうなので寝転んで観ていた。これまでの人生で、僕は浪曲という芸能をまともに観た事も聴いた事もなかったのであるが、これがなかなか格好良い。まず舞台上に置かれた、布で覆われた三つの台の配置が美しく、弁士(というのかどうかは知らないのだが)は其処に絶妙に収まる感じで立つ。そしてその語り口たるや、己の口一つで時間をコントロールする事に長け、盛り上げ方が非常に巧い。僕が全く知らなかった世界であるが、これは知っておいた方が良いのではないだろうか。そう思う日曜の午後であった。
 浪曲に於いても、伴奏というか囃すのは三味線の音。僕はそちらにも耳を奪われていた。唄を伴わない三味線の楽曲はないのだろうか。かつて吉原遊郭で、郭の営業開始と共に掻き鳴らされたという「清掻」に非常に興味を覚える。何度となく、新宿紀伊国屋本店で「清掻」で探してみたが、それらしいCDは見つからなかった。あの手の音は一日中聴いていても飽きないような気がするのだけれど、さて、何処かに無いものだろうか。

たぬき丼

 確か先々月の事。未だ夏であった。銀座での仕事が昼を跨ぐので、昼食を摂ろうと入った老舗風の蕎麦屋。当初は盛り蕎麦を食べようと考えていたのに、お品書きに見慣れない「たぬき丼」という品目を見つけた。その文字を見た傍からどういう料理だか想像ついてしまうほどの判りやすさ。しかしながらこれまでの人生ではお目に掛かった事のない食べ物であったので、ついつい注文してしまう。
 結果。旨くない。注文する前から判り切っていたはずだし、実際に目の前にしてみて、何処をどう見ても想像通りの食べ物でしかない。でも旨くない。たぬき饂飩やたぬき蕎麦はあんなに旨いのに、たぬき丼は旨くない。それに何だか騙されたというか手を抜かれた気持ちになる。饂飩や蕎麦に乗せた場合には、それは立派なトッピングとして存在を主張しえる物が、丼物に乗せてしまうと突如として残りカスになる。不思議だ。
 此処まで書いておいて何だが「たぬき」に乗っているのは「揚げ玉」若しくは「天かす」の事である。

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