昨日の午後、たまたまテレビを点けてみたら、NHKで「東西浪曲特選」という番組をやっていて、具合が良さそうなので寝転んで観ていた。これまでの人生で、僕は浪曲という芸能をまともに観た事も聴いた事もなかったのであるが、これがなかなか格好良い。まず舞台上に置かれた、布で覆われた三つの台の配置が美しく、弁士(というのかどうかは知らないのだが)は其処に絶妙に収まる感じで立つ。そしてその語り口たるや、己の口一つで時間をコントロールする事に長け、盛り上げ方が非常に巧い。僕が全く知らなかった世界であるが、これは知っておいた方が良いのではないだろうか。そう思う日曜の午後であった。
 浪曲に於いても、伴奏というか囃すのは三味線の音。僕はそちらにも耳を奪われていた。唄を伴わない三味線の楽曲はないのだろうか。かつて吉原遊郭で、郭の営業開始と共に掻き鳴らされたという「清掻」に非常に興味を覚える。何度となく、新宿紀伊国屋本店で「清掻」で探してみたが、それらしいCDは見つからなかった。あの手の音は一日中聴いていても飽きないような気がするのだけれど、さて、何処かに無いものだろうか。