ちょっと前まで、ギャラリーとか美術館というのは聖域として守られていたわけですが、そこもほとんど公開されてしまった今、いちばん密室性が高い職種はアドバイザーです。みなさん聞いたことがないかもしれませんが、アドバイザーという職業がこの一〇年くらいの間に突然出てきました。結構な数がいるわけですが、その中で優れているという人は一〇人弱です。
 彼らが作っている密室がブラックボックスになって、ぼくらはそれに踊らされているといっても言い過ぎではありません。しかし、アドバイザーというのはアートの世界のジョーカーなのですべてのA級アーティストが密室に関わっているというわけでもありません。ここではアドバイザーというものが存在しているということだけ憶えておいてください。

村上隆著『芸術闘争論』幻冬舎 2010年 p.256