DOG ON THE BEACH

A season passes. A castle can be seen. Where is a soul without a wound ?

Month: June 2004 (page 1 of 2)

花と甲羅

 帰り道。線路沿いの屋台の赤提灯の下に、同じマンションに住む女が座って酒を飲んでいるのを見かけた。屋台のオヤジは嬉しそうに相手をしている。週に一度、この光景を目にする。時折、この屋台の常連らしき老いた男が同席している事もあるが、何れにしても彼女は何くれとなく男達の世話を焼いている。老男が帰ると言い出せば「そんな事言って、帰る家あんのー?」などと引き留めたり、屋台のオヤジにタオルや灰皿を手渡しながら話かけたりしている。そのうちに彼女が屋台を手伝ったりするのではないか、と内心思っている。そんな光景を見遣りながら、僕は横を通り過ぎているのだが、たまにふと、彼等の中に割り込んでみたくなる。しかし、だ。彼等の間には既に完成された何かがあるような気がしてならない。例えば赤と緑の補色の関係のような。僕がそこに割り込んでしまえば、補色でバランスを取った画面構成の中に不躾な色を混ぜるようなものだ。捨て色になるつもりもないし。僕は黙って通り過ぎるべきである。

長崎乱楽坂 / 吉田 修一

 あれから ” パーク・ライフ ” をそれなりに読み、次に読んだのがコレ。長崎弁、というか九州全域で通じるであろう言葉で綴られている。そういう僕の身体にも染みついた言語で語られているせいか、描写が非常に生々しく感じる。例えば、下履き一枚姿の男達の酒宴の描写があるが、その場所ではどんな匂いがしてどんな音が聞こえてどんな温度を持っているのか、僕はまざまざと感じる事が出来る。子供の頃に見た、父や祖父や叔父やその友人達の姿が重なる。彼等の表情や肌の色、子供だった私には窺い知れない秘密めいた痴話。酒が飲めなければ一人前だと認めないと言っては、子供の僕に半ば強制的に酒を勧める大人達。挙げ句には煙草まで吸わされる。しかし僕はそれを喜んで受け入れていたような気がする。今でも嫌な思い出としては残っていない。僕はとうの昔に、今度はそれらを子供らに見せつける立場になっている訳だけれども、何だか遠い話のように感じている。僕は未だに彼等には追いついていない。それが少し悔しい。

Billy the bop smokers

 ハロゲンのスポットなんか点けてると熱くて仕方がない。夜になって酒を呑み始めると元気になって来るというのは、よくない兆候のような気がする。そもそも殆ど何も食べずに酒と煙草だけで過ごしているのがマズい。蕎麦でも食べようかな。あ、でもさっき歯を磨いてしまったし。というか、さっきまで今日は27日だと思い込んでいた。・・・さて、これから何をしようか。扇風機の風に煽られ、煙草の煙は漂う暇も無く吹き消される。

In Concert / The Doors

 The Doors の音って、基本的に自分が在る程度イッちゃってないと怖いと感じるんですが、このライヴアルバムなんて更に怖いです。4人のメンバーも観客も有り得ないくらいにテンションが高いです。どう考えてもこいつら、素面じゃありません。どうにかコンサートスタッフだけは冷静さを保っている訳です。「 アーユー フィール オーライ?」「イ”エ”ー!」たったそれだけの MC の後、淡々とライヴは始まりますが、演奏が半端ないです。ギターリフが脳味噌を掻き回してくれます。Jim の絶叫が夜を切り裂きます。何処かで読んだ記事には、The Doors のライヴはさながら宗教的体験だと。観てみたい気もしますが、観たくない気もします。因みにこのアルバムは一つのライヴを収録したものではなく、ブックレットを読む限りでは 1968〜1970年 に Los Angeles, New York, Boston, Philadelphia, Detroit, Copenhagen で収録した音源の寄せ集めみたいですね。

パレード / 吉田 修一

 この小説、マンションの2LDKの部屋に同居する5人の男女の物語です。各章、それぞれの視点で語られていく訳ですが、よくあるパラレルな構成ではありません。話は順番に、数珠繋ぎに進んでいきます。珍しい構成だなあ、と思いつつも今朝電車の中で読んでいる時までは、文体や会話が大変面白くて、それを楽しむように読んでいました。しかし、がしかし、それだけではなかったのです。丁度帰りの電車の中で読み終えるタイミングで、各登場人物がそれぞれの内情を吐露しつつ、何事も無かったようにこの小説は終わるんだろうなぐらいに思っていましたが、それは私の軽率な考えに過ぎませんでした。最終章の終わりに、もの凄いテンションまで持ち上げられ唐突に終わりを告げられます。そういう事だったのか! 私は最後の最後まで気付く事が出来ませんでした。良く出来た小説です。レイモンド・チャンドラーの ” 長いお別れ ” よりも、それまでがほのぼのとしていただけにショックが大きい。やられました。

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