祖母の時もそうだったが、知っている人間が死ぬと、自分の中の何かしらの器官が塞がれてしまうような気がする。寂しいとか哀しいとかではなく、現実感は希薄であるのに暗い影だけが差す。そういう器官は幾つも在って、一つが塞がったからと言って劇的な変化はないが、確実に何かしらが欠落する。その器官から流れ出るべき何かが出なくなり、流れ入るべき何かが入らなくなってしまう。無感覚になると言っても良い。そしてそれは、時間が経てば元に戻るものでもないらしい。忘れる事が出来れば、無関係だと思える事が出来れば、それもいつしか無くなるのかも知れない。