例えば、活きがよいアーティストといった場合、ロンドンではロック的やパンク的な少々行儀の悪いツッパリアーティストも選ぶが、ニューヨークの場合は話題性がある、というニュアンスになってくる。また、偏った展覧会というのはロンドンではキュレーターの個性という意味になるが、ニューヨークでは政治的な事柄が問題になり実現は難しくなる。三つめの巨匠と評価が定まらない人をニューヨークでは逆に差別化して、アメリカンドリームを強調し若いアーティストを叱咤激励する構図を好む。ニューヨークは新しいことをどこよりも先に認めてくれそうな気がするが、実はロンドンの方がアーティストの新しい挑戦を評価してくれる傾向がある。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.50