表現主義的な絵とインダストリアル・ミニマルの彫刻が好きなドイツ、オーガニックで官能的で、それが洗練された中庸の域を出ていないことが肝要なフランス、その間をとっているのが、奇妙さとかわいらしさ、グロテスクが混在するスイスである。そして《絵画》と《彫刻》が好きで、美術館での《学習》が趣味となっているアメリカ、音楽やダンス的な要素、トロピカルバロックが好きなブラジル、同じ傾向にありながら、浪花節的感情表現が入ってくるのがトルコ。記憶や物語、そしてミュータント的な人工生命の好きな韓国、とにかく巨大で壮大なテーマの作品と人間の身体モティーフが好きな中国。かわいくて感覚的、清々しいかグロテスクかのどちらかで、テクニカルに精巧にできている作品が好きな日本。

長谷川祐子著『キュレーションー知と感性を揺さぶる力』集英社新書 2013年 p.60