「もの派」は、作品を見ていると一見簡単そうに見える。ところがその背景たるアーティストの作品説明を読むと、難解で、理解するのに読解力、理解力と時間を要する。ちょっと引き抜こうとした野の花の根が意外に複雑で長く、力んでも抜けないような感じだ。
 難しいから悪いとは言わないけれども、「もの派」の登場が一般的な「現代アートって難しい」のイメージを確立してしまったのではないかと思う。作品は非常に魅力的なのだが、解説とその作品のコンセプトに大量の意味を入れ込んだために、当たり前の作品の面白さが、観客の手から遠くに行ってしまったように感じる。

山口裕美著『現代アートの入門の入門』光文社新書 2002年 p.95