さらに昼夜逆転には心理的な理由もあります。のちに詳しくふれるように、社会的ひきこもり状態にある人たちは、自分の置かれている状況に深い劣等感を持っています。世の中が活発に動いている昼間の時間帯は、こうした強い劣等感やひけめを意識せずにはいられません。つまり彼らは、昼間起きて無為に過ごすことの苦痛に耐えられないのです。このため、自然に夜更かしをするようになり、またさきにもふれた生理的な理由からも不眠の傾向が強まっていますから、生活時間は次第にずれ込んで、ついにはすっかり逆転してしまうのです。午後二〜三時に起き出して、明け方に眠るという生活が平均的な彼らの生活時間となります。

斎藤環著『社会的ひきこもり〜終わらない思春期〜』PHP新書 1998年 p.47